ジャマイカ人初のブッカー賞受賞作家、マーロン・ジェームスがブラッド・ピットと語り合った政治、映画、国際支援

BY MARLON JAMES, PHOTOGRAPHS BY CRAIG McDEAN, STYLED BY JASON RIDER, TRANSLATED BY MIHO NAGANO OCTOBER 29, 2016

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ジャマイカ人として、僕はピットに言った。発展途上国の人間は、外国から来た支援者たちの行動にしばしば大笑いせざるをえないと。
「以前、自分がその立場になったことがあるからわかるよ」と彼は認めた。「でも、誰もが最初は初心者だ。行動しないと何も始まらない」

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2. ブラッド・ピットは、金で幸福は買えないことを知っている。

『ウォー・マシーン(原題)』はこの秋公開されるピットのふたつの作品のうちのひとつで、ジャーナリストのマイケル・ヘイスティングスが米国軍司令部を痛烈に描いたノンフィクション『ザ・オペレーターズ』が原作だ。ときに危険を顧みない米軍の秘密工作任務の実態と、ピット演じる高名な将軍がふと気を許したことによって招いた、とんでもない政治的結末の話だ(彼のもう1本の映画は、ロバート・ゼメキス監督のロマンティックな暗殺スリラー『マリアンヌ』で、これも実話に基づいている)。
「この『ウォー・マシーン』は、若い男女を戦場に送り出す判断を下した人間たちを風刺しているんだ」とピットは言う。「上層部の意志決定のプロセスや組織構造の理不尽さ、そして、そこに私利私欲が加わるとバカげたジョークみたいになり、それがいつか取り返しのつかないことにつながっていく――ということを描いた作品だよ」

 悲劇と喜劇のきわどい境界線について語り合ううちに、話題は悲しみや幸福という普遍的なトピックへ、そしてピットが世界の国々を頻繁に旅し、その目で見てきたことへとつながっていった。旅の中で彼が出会った多くの人々は、幸福にアクセスする手段があるようにはとても見えなかった。だが、最も悲惨な状況に置かれていながら、彼らはなぜか、その生活にすっかり満足しているように振る舞っていた。だからこそ、彼のような人間―つまり金と時間に余裕のある人々は、そんな現状をなんとか変えなければという使命感に駆り立てられるのだ、とピットは言う。それはいいことずくめではないし、その点は彼も承知のうえだ。

「第三世界のいろんな国に行ったけれど、人々はとてつもなく苦しんでいた。でも、彼らはいつも、誰よりもいちばんよく笑っているように見えたよ」と彼は言う。ジャマイカ人として、また発展途上国支援をする団体の仕事ぶりを何度も見てきた身として、僕は彼に言った。僕らがいちばん笑ってしまうのは、現地の人間が抱えている問題の解決法を、外国人の支援者たちが何ひとつわかってないってことだと。「以前、自分がその立場になったことがあるからわかるよ」と彼は認めた。「でも、誰もが最初は初心者だ。最善を尽くしてとっかかりを見つけ、支援しながら世界を理解していくしかない。現地に入ってはじめて、想像以上に状況は複雑だと気づくんだ。米国の外交政策の失敗は、自分たちの考えをほかの文化にそのままあてはめればいいと思ってきたことにある。他国の文化を真に理解することなしにね」

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