第一次大戦下のフランスで、出征した男たちに代わり農場を守り続けた女性たち。三世代にわたるその過酷な戦いを描いた『田園の守り人たち』で女あるじを演じたナタリー・バイが語る、作品に込められたメッセージとは

BY REIKO KUBO

 およそ100年前、第一次世界大戦に従軍したフランス人教師エルネスト・ペロションは、未曾有の塹壕戦を生き延び帰還し、戦場の悪夢を見ながら小説『Les Gardiennes(守り人たち)』を書いた。人と人が殺し合う不条理、純粋な心に戦意を植えつける戦時教育を目の当たりにしたペロションが、その対極に見たのが、夫や子どもの無事を祈りながら黙々と働いて銃後を守った女たちの生きざまだった。

 そんな女性たちを描いた原作を、フランス人監督グザヴィエ・ボーヴォワが映画化。アルジェリアでカトリック修道士がテロの犠牲となった実話を描いた『神々と男たち』で、2010年にカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した名匠だ。新作『田園の守り人たち』では、ミレーの絵画を思わせる美しい風景の中、三世代それぞれの女性たちの魅力を際立たせ、戦争に疲弊してゆく男たちと、母なる大地を守る女たちの闘いを力強く描いた。

画像: フランスが誇る女性名カメラマンが捉える美しい光の中、牛や馬を使っての過酷な農作業の日々を耐え、明日への種を蒔く女たちの姿が映し出される

フランスが誇る女性名カメラマンが捉える美しい光の中、牛や馬を使っての過酷な農作業の日々を耐え、明日への種を蒔く女たちの姿が映し出される

 主人公のオルタンスは、二人の息子を戦場に送り出し、夫亡き後、農園を切り盛りする女あるじ。隣家に嫁いだ娘ソランジュとともに過酷な農作業に追われている。刈り入れを前に、オルタンスは働き手として孤児院育ちのフランシーヌを雇い、働き者の娘は家族のように迎え入れられる。休暇で戦地から戻ってきたオルタンスの息子ジョルジュもまた、控えめで優しいフランシーヌに惹かれてゆくのだが……。

画像: 休暇を認められ、ひととき家に戻ってきたオルタンスの息子ジョルジュは、戦場の業火を忘れさせてくれるフランシーヌの控えめな笑顔に惹かれてゆく

休暇を認められ、ひととき家に戻ってきたオルタンスの息子ジョルジュは、戦場の業火を忘れさせてくれるフランシーヌの控えめな笑顔に惹かれてゆく

 オルタンスを演じるのは、フランワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダール作品で知られ、近年は『たかが世界の終わり』(2016年)など、人気のグザヴィエ・ドランのミューズとして活躍する名女優ナタリー・バイ。ふだんは1948年生まれとは信じられないほど若々しくチャーミングな彼女が、白髪をシニヨンに結った喪服姿の農園主役に惚れ込んだ理由を語ってくれた。

画像: ナタリー・バイ(NATHALIE BAYE) 1948年、フランス・ノルマンディー北東部生まれ。1972年に映画デビューし、トリュフォーの『恋愛日記』(1977年)、『緑色の部屋』(1978年)、セザール賞助演女優賞を受賞したゴダールの『勝手の逃げろ/人生』(1979年)等で人気を獲得。90年代に入り『ポルノグラフィックな関係』(1999年)やハリウット映画『キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン』(2002年)でも活躍。変わらぬ美貌で、グザヴィエ・ドランら若い気鋭監督たちからも愛される人気女優 PHOTOGRAPH: © MITSUHIRO YOSHIDA/COLOR FIELD

ナタリー・バイ(NATHALIE BAYE)
1948年、フランス・ノルマンディー北東部生まれ。1972年に映画デビューし、トリュフォーの『恋愛日記』(1977年)、『緑色の部屋』(1978年)、セザール賞助演女優賞を受賞したゴダールの『勝手の逃げろ/人生』(1979年)等で人気を獲得。90年代に入り『ポルノグラフィックな関係』(1999年)やハリウット映画『キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン』(2002年)でも活躍。変わらぬ美貌で、グザヴィエ・ドランら若い気鋭監督たちからも愛される人気女優
PHOTOGRAPH: © MITSUHIRO YOSHIDA/COLOR FIELD

「この作品の特異性はたくさんあるけれど、なんといっても戦争のさなか、残された女性たちがどう生きたかということが衝撃的に描かれているころ。例えば戦時、都市に住む女性なら工場に動員され、労働者として機械を操っていた。フランス全体が女性で回っていた時代です。農村もまたしかりで、女性が自分たちの領地のすべてを維持していた。それがどんなに大変だったかということを、この映画は描いている。

 

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