デザインのインスピレーションは“考古学”のようなものーー。ピエール・アルディがクリエーションの哲学を語る

BY JUN ISHIDA

 2年に一度発表されるエルメスのハイジュエリー・コレクション「オート・ビジュトリー」。その新作コレクションが、10月27日より東京・銀座メゾンエルメスで開催される。デザインを手がけるのは、ピエール・アルディだ。シューズ・デザイナーとして知られるアルディだが、エルメスのシューズ部門に加え、2001年よりジュエリー部門のクリエイティブ・ディレクターも担っている。アルディがジュエリーをデザインしたのはエルメスが初めてだ。当時のエルメス社の社長であったジャン=ルイ・デュマが彼を抜擢した。「ジャン=ルイ・デュマに、ジュエリーに興味があるかと聞かれたときは、思いもしないことだったので即答できず、24時間くださいと答えました」とアルディは振り返る。「でも彼が私にできると思って声をかけたのだから、きっとできるのだろうと思いました。彼からもらった素晴らしいギフトです」

画像: Pierre Hardy(ピエール・アルディ) 1990年、エルメスのメンズおよびレディスシューズのクリエイティブ・ディレクターに就任。2001年、エルメスジュエリー部門のクリエイティブ・ディレクターに就任する PHOTOGRAPH: ©ALEXIS ARMANET

Pierre Hardy(ピエール・アルディ)
1990年、エルメスのメンズおよびレディスシューズのクリエイティブ・ディレクターに就任。2001年、エルメスジュエリー部門のクリエイティブ・ディレクターに就任する
PHOTOGRAPH: ©ALEXIS ARMANET

  2010年からは、「オート・ビジュトリー」コレクションを発表。「ケリー」や「バーキン」といったバッグをジュエリーにしたり、スカーフの柄から着想を得たりと、エルメスのアイコニックなモチーフを採り入れたデザインは、毎回話題を集めている。4回目となる今回は、「時」をテーマとしたコレクションを発表。「時」は、エルメスというメゾンが探求しつづけるテーマのひとつであり、アルディは「エルメスの“時”とは、ほかにはないもの」と位置づける。「エルメスの時間は、モードの世界で考えられている時間とは対極的なものです。エルメスは、時間を忘れるような物づくりを考えています。今という一瞬のためにではなく、大きな時の流れの中で創られているのです。そして我々のお客さまもまた、そうしたエルメスの時間の概念を求めているのだと思います」

 こうしたエルメスの「時」を、アルディは「日時計」「光のプリズム」「砂時計」として表現した。この3種のモチーフには、それぞれに異なるストーリーがある。

画像: 「フ・ドゥ・シエル」のブレスレット <ホワイトゴールド、トルマリン、ガーネット、アイオライト、インペリアルトパーズ、ダイヤモンド>

「フ・ドゥ・シエル」のブレスレット
<ホワイトゴールド、トルマリン、ガーネット、アイオライト、インペリアルトパーズ、ダイヤモンド>

画像: (写真左から) 「アトラージュ・セレスト」のネックレス <イエローゴールド、オパール、インペリアルトパーズ、サファイア、ダイヤモンド> 「オンブル・エ・リュミエール」のネックレス <ピンクゴールド、タヒチパール、アコヤパール、南洋パール、ダイヤモンド> PHOTOGRAPHS: ©HERMÈS

(写真左から)
「アトラージュ・セレスト」のネックレス
<イエローゴールド、オパール、インペリアルトパーズ、サファイア、ダイヤモンド>
「オンブル・エ・リュミエール」のネックレス
<ピンクゴールド、タヒチパール、アコヤパール、南洋パール、ダイヤモンド>
PHOTOGRAPHS: ©HERMÈS

「アトラージュ・セレスト(日時計)」は、世界最古の時計である日時計をモチーフとしたものだ。太陽の動きによって変わる影を利用したこの時計を、アルディは「太陽が刻む時のリズム」として捉えた。そして男性的で力強い太陽のモチーフを、ピンクのトパーズで表現し、やわらかく軽やかなジュエリーに昇華させている。

「フ・ドゥ・シエル(光のプリズム)」のアイデアは、偶然知ったという探検家の写真から生まれた。探検家は世界一周をしながら各地の日の出、日の入りを撮るという試みを行なった。「日の出、日の入りは、すべて同じようであり、同じではありません。反復するもののどれひとつとして同じでない美しさがそこにはあります」とアルディは述べる。そして光が現れ、いちばん強い光を放ち、すぐまた影が訪れるその変化を、ダイヤモンドなどの5種類の貴石のグラデーションで表現した。

最後の「オンブル・エ・リュミエール(砂時計)」は、3種のパールのグラデーションにより、砂のように流れ落ちてゆく時間を可視化した。「数珠やロザリオは、手にしていると時がたつのを忘れます」とアルディ。「ジュエリーには、スピリチュアルなものの象徴的側面もあるのです」。ジュエリーデザインのインスピレーションはどこから得るのか? と尋ねると、「考古学のようなもの」と微笑む。

「記憶のない幼い頃から、ずっと自分の中で積み重なっているものがあって、それが層になっている。考古学者が地層の断面を取り出してその重なりを見るように、日常的なものや、ずっと前に好きだったもの、学んだことなどが重なり合い、混じり合ったものが私のインスピレーションソースです」

 時という抽象的な概念を、ジュエリーで具現化したピエール・アルディ。そのアイデアもまた、時の中で育まれている。

画像: ディディエ・フォスティノによるインスタレーション。『HB-IV CONTINUUM』というタイトルのもと、シルバーとゴールドの新作ジュエリーも展示される PHOTOGRAPH: ©FREDERIK VERCRUYSSE

ディディエ・フォスティノによるインスタレーション。『HB-IV CONTINUUM』というタイトルのもと、シルバーとゴールドの新作ジュエリーも展示される
PHOTOGRAPH: ©FREDERIK VERCRUYSSE

HB-IV CONTINUUM
会期:2017年10月27日(金)〜11月6日(月)
時間:11:00~20:00 (日曜日は19:00まで)
会場:銀座メゾンエルメス 10階
住所:東京都中央区銀座5-4-1

問い合わせ先
エルメスジャポン
TEL. 03(3569)3300
公式サイト

 

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