BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY HARUKO TOMIOKA

職人たちのノート
展示の最後の部屋となる「EPHEMERA」にはアクセサリーやオブジェ、資料を展示。手前右に写るのは、グッチのアトリエの職人が製品作りの過程をまとめたノート。左は、70年代に作られたバッグを作るための仕様書
これまでファッション界はもちろん、グッチというブランドそのものも変えたと思われたアレッサンドロ。しかし、『グッチ・ガーデン』のギャラリーに展示されたアーカイブ作品とアレッサンドロの作品は、グッチというひとつの線の上に違和感なくつながっているように見える。実はアレッサンドロは、グッチで働き始めてから今年で16年目というベテランデザイナーだ。トム・フォード、フリーダ・ジャンニーニというかつてのクリエイティブ・ディレクターたちを支え、グッチのアトリエがフィレンツェにあった時代は、この地に住んでいたこともある。マリア=ルイサは次のように評価する。「彼はものすごい勉強家。モードの世界における従来の男らしさ、女らしさとは違う中性的なファッションを作り出し、ジェンダーの概念を変えた人物ですが、グッチのこれまでの歴史を受け継ぐクリエイティブ・ディレクターでもあります。過去をすべて学び、それを今の文脈で表現することができるのです」
“勉強家”という言葉はアレッサンドロを特徴づけるもののひとつかもしれない。

ブランドの歴史の宝庫
グッチの歴代のバッグが集まる「COSMORAMA」の部屋。手前は1958年に作られた「Rinascimento」モチーフのスーツケース。下の段は60年代初頭に作られた同モチーフのピクニックセット

「EPHEMERA」の部屋には過去の招待状やカタログからオブジェまでアーカイブに納められた品が幅広く展示。グッチのアイコニックな「フローラ」プリントのイラストレーターであるヴィットリオ・アッコルネロによる書物もある(手前右と左)
実際、アレッサンドロも「学ぶことが好き」と自己分析する。「モードは、文化などクリエイティブなものからできていると思う。言葉が好きで、本もよく読む。新しいものを新しい言葉で表現するのではなく、古い言葉で表現したいんだ。そうしたあらゆる文化的要素をミックスして僕のクリエーションは生まれます」
「デザイナーは夢見る人」というアレッサンドロ。「デザインすることを仕事だとは思っていない。情熱があるからやっています。情熱が続く限り、新しいものが作り続けられると思う」。アレッサンドロによるグッチは、これからも“新しい風”をファッション界に吹き込みそうだ。

グッチ・ガーデン
(左)オープニング時のアレッサンドロ・ミケーレとマリア=ルイサ・フリーサ。
(右)ギャラリーのあるメルカンツィア宮殿に「グッチ・アイ」のネオンアートが光る
COURTESY OF GETTY IMAGES FOR GUCCI
『グッチ・ガーデン』
住所:Piazza della Signoria, 10, Firenze
開館時間:10:00~19:30
レストラン12:00~20:00 ※要予約)
公式サイト