才能と狂気、圧倒的な知識と批評眼をもつ、ファッション界の唯一無二の存在、カール・ラガーフェルド。作家のアンドリュー・オヘイガンがその素顔に迫る

BY ANDREW O'HAGAN, PORTRAIT BY JEAN-BAPTISTE MONDINO, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 ラガーフェルドの外見は、何かそれ自体で完結しているものという感じだ。白いシャツの堅苦しい襟、指の部分がない手袋。暗い色のジャケットとパンツ。数々の指輪、濃い色の眼鏡とポニーテールに結った髪の毛。私が彼に会ったときは、彼の顔には明るい色のファンデーションがまるでマスクのように塗られており、髪の毛にはパウダーがかかっていた。彼の唇は肉感的で、まるでオスカー・ワイルドのような唇だ。彼の瞳の輝きを見ることができるのは、話し手の繰り出すジョークが彼の明晰な頭脳に迎え入れられ、彼がサングラスをちょっと下げて、彼の目を見る許可を与えてくれたときだけだ。

 ラガーフェルドはラグジュアリーの小宇宙のようだ。彼は、書籍を除いて、自分の周りのものにあまりこだわらない。だが、彼自身については気を配り、手入れをする。彼はできうる限り最高の世界観を表現し、常に自己改良を目指すという自身の哲学を自らに課したいのだ。

「アメリカの詩人、ウォレス・スティーブンスは以前に『金銭は詩の一種だ』と書いています。これに賛成しますか?」
「イエスでもありノーでもある」と彼は言った。
「君はどう思う?」
「何とも言えないですね」

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