時間とは何か――。古今東西、“時”の不思議に端を発して生まれた本は数多い。時計も、しかり。時をめぐる名品と名作の出合いをご覧あれ

TEXT BY NORIO TAKAGI, EDITED BY AKANE WATANUKI PHOTOGRAPHS BY MASANORI AKAO, STYLED BY YUKARI KOMAKI, HAIR & MAKEUP BY MOMIJI SAITO(EEK), MANICURE BY NAOKO MATSUO(UKA), MODEL BY YU KAINO

時と対峙した哲学と機械

画像: シャツ/スタイリスト私物

シャツ/スタイリスト私物

 はるか昔より哲学者は存在を思索し、時間を考察してきた。20世紀を代表する哲学者マルティン・ハイデッガーも、またしかり。代表作『有と時』では存在(有)について問い、時間(時)にその答えを求めようと試みる。目に見えないがゆえに哲学のテーゼとなった時の流れを、視覚化するために時計は生まれた。今ある男性用腕時計の始祖の誕生は、1904年。創造主は、3代目ルイ・カルティエである。彼は飛行家である友人のサントス=デュモンのために、操縦中でも時間が見られる腕につける時計を開発したのだ。その意匠を「サントス ドゥ カルティエ クロノグラフ」は、今に受け継ぐ。1904年から変わらぬ四角いフォルムが、ストラップと融和する。ビス留めベゼルも変わらぬドレスコードで、印象を力強くする。さらにこのモデルはクロノグラフを搭載。ハイデッガーが「あの時」「その時」と思考した過ぎ去った時の長さが計れる。

サントス ドゥ カ ルティエ クロノグラフ
<51.3×43.3mm/K18PG、自動巻きムーブメント、アリゲーターストラップ、ラバーストラップ付属>
¥2,690,000
カルティエ カスタマー サービスセンター(カルティエ)
フリーダイヤル:0120-301-757

画像: 『有と時』(ハイデッガー全集)/創文社 M.ハイデッガー著、辻村公一、ハルトムート・ブッナー訳

『有と時』(ハイデッガー全集)/創文社
M.ハイデッガー著、辻村公一、ハルトムート・ブッナー訳

物理学的時間、哲学的時間

画像: 眼鏡¥36,000/アイヴァンPR(アイヴァン) TEL. 03(6450)5300

眼鏡¥36,000/アイヴァンPR(アイヴァン)
TEL. 03(6450)5300

 時間とは、計測が可能な物理量である。そして時計は、一定の速さで過ぎ去る物理学的時間を示す。しかし人は、同じ量の時間を長く感じたり、短く感じたりする。物理学者でもあるSF作家、橋元淳一郎は『時間はどこで生まれるのか』で、物理学的時間と人間的時間との統合を試みた。人間的時間とは、哲学的時間と言い換えることもできよう。天才時計師フランク・ミュラーは、この哲学的時間を自身の時計で表したいと考えた。そして思索を重ね、生まれたのが「クレイジー アワーズ」である。カラフルに色分けされた数字は、よく見ると順番に並んではいない。毎正時、時針は大きくジャンプして次の時刻の数字を指し示す仕掛け。針の位置で時を知るという、時計の概念を打ち破る。むろんムーブメントは正確に時をカウントし、物理学的時間を計っている。物理と哲学、ふたつの時間をこの時計は統合する。

トノウ カーベックス クレイジー ア ワーズ カラードリーム
<45×32mm/K18PG、自動巻きムーブメント、クロコダイルストラップ>
¥3,300,000
フランク ミュラ ー ウォッチランド東京
(フランク ミュラー)
TEL. 03(3549)1949

画像: 『時間はどこで生まれるのか』/集英社新書 橋元淳一郎著

『時間はどこで生まれるのか』/集英社新書
橋元淳一郎著

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