ニューヨークのトップデザイナーの対談が実現した。もともと大の仲よしのアナ・スイとマーク・ジェイコブスだからこその、本音炸裂トークが繰り広げられた

BY TERUYO MORI, PHOTOGRAPH BY STEVEN MEISEL, MAKEUP BY AYAKO FOR ANNA SUI

AS 昔のNYのレストランシーンもエキサイティングだったわね。みな着飾って、とびきりおしゃれな場所だったじゃない? デヴィッド・ボウイが付き人を何人も引き連れてやってきたりすると、みんなが彼のメイクやファッションを必死でチェックしてた。

MJ 今でも人気レストランには時々行くけれど、エキサイティングな人との出会いは少なくなっちゃったな。

画像: 2017年、NYを訪れた山本寛斎を囲んでのディナー。レストラン「Augustine(オーガスティン)」にて。モデルのナオミ・キャンベルも加わった。アナもマークも、山本寛斎の世界を取り入れたコラボレーションを行っている COURTESY OF ANNA SUI

2017年、NYを訪れた山本寛斎を囲んでのディナー。レストラン「Augustine(オーガスティン)」にて。モデルのナオミ・キャンベルも加わった。アナもマークも、山本寛斎の世界を取り入れたコラボレーションを行っている
COURTESY OF ANNA SUI

AS 私は昔のようなアンダーグラウンドのシーンが懐かしいわ。そこに行けばいわゆる“right people(ふさわしい人々)”が集まっていて、NYの今が生まれていたところ。

MJ 磁石のように人々が惹きつけられていくところでしょ? 昔はマッドクラブのようなアンダーグラウンドのクラブでのパーティの写真が一枚、新聞や雑誌に載っただけで、人々はその写真の世界に誘われてやってきたものだよね。今はどうなのかな?

AS 今の時代は情報収集はSNSよ。人とのコネクションの仕方がずいぶん変わってしまったから。

MJ 本音を言えば、僕にとってのソーシャルとは、たとえばブティックに自ら出向いて試着をしたり、人と出会って話をしたり、真新しいファッションでレストランに行って、その後クラブで楽しんだりっていうことであって、家でテレビの前に陣取って、携帯やタブレットで連絡し合うというのではないんだ。それでは人間同士のつながりを感じないから。

AS バーチャルな関係は嫌なの?

MJ バーチャルというのは自分が封印された感じがするんだよね。SNSは自分にフィルターをかけて発信している。だって今の僕の写真を19歳の頃の写真と加工してポストすると、出会ったことのない人から“Oh Cool!”とか言われたりする(笑)。

AS 私は日常生活を機能的にするために、テクノロジーは使うべきだと思うわ。インスタグラムから影響されることはあるし、リサーチにも役立つから。

MJ SNSにもよいところはあるよね。無名でも才能のあるアーティストを見つけることができたり、とびきりおしゃれな子やメイクの技術が抜群な子を見つけたりできること。そういう子たちはすごくクリエイティブに自分を表現していて恐れを知らないのがいい。

AS テクノロジーは道具として使えばいいのよ。私たちデザイナーも時代に合わせていかなければならないから。

MJ 雑誌の世界も変わったよね。撮影といってもインスタグラム用だったり、取材する店もオンラインストアだったり。僕たちデザイナーは3つのことを大切にしてきた。自分の考えた美しい世界を発信する。店ではそれをワードローブに落とし込んで売る。そしてなによりもファッションを通して、人が集まったり、思いを共有したりできる「場」のようなものを作ることが重要なんだ。

AS 私もその気持ちはよくわかる。ただ、みんながオンラインで服を買うのは、買うのが簡単という部分も大きいと思うわよ。最初は、私のオンラインショップもブティックと同じ世界観になるように凝った作りにしていたけれど、人々はストレートに服だけが買えるほうがうれしいみたい。ところで、今の時代はテクノロジーやリサイクル、サスティナブルといろいろなことを考えて服作りをしなければならないでしょう?それについて、マークはどう思う?

MJ ファッションに求められるファンタジーや、ロマンスを考えながら、サスティナブルのビジョンをもって服作りをするのは本当に大変だと思うし、正直なところ、まだ正解は見いだせないな。

AS それでも私たちは服を作るのが本当に好きだから作り続けている。

MJ ファッションウィークにモデルにフィッティングしていると、服を着せつけて、待ち針を打ってサイズを調整して、スタイリングまでひとりで行うデザイナーはアナと僕だけだって、若いモデルたちから、よく言われるけど、本来デザイナーって、そういうものだよね。

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