BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY MIDORI YAMASHITA
“至高のシャンパーニュ”として、ワインファンの熱い視線を集める「クリュッグ」。1843年の創業以来、ヨーロッパの王侯貴族や世界のセレブに愛されてきた。その理由は、創業者ヨーゼフ・クリュッグの「天候の違いに左右されることのない、豊かな表現をもった最高品質のシャンパーニュを造りたい」という哲学が生かされた唯一無二の味わいにある。それを体現するのがメゾンのフラッグシップ「クリュッグ グランド・キュヴェ」だ。120種以上のキュヴェ(一番搾り果汁)をアサンブラージュ、芳醇な味わいだが、その複雑性とスケール感の大きさからオーケストラのシンフォニーに例えられる。
この伝統を継承しつつ、さらにメゾンの“進化”に取り組んでいるのが、6代目当主のオリヴィエ・クリュッグ氏だ。彼がメゾンを継承してからというもの、数々の新しい取り組みに着手してきた。そのひとつが「クリュッグ アプリ」だ。これは、ボトルの裏ラベルに印字されている6桁の“クリュッグID”をクリュッグアプリに入力すると、ブレンドされているヴィンテージやデゴルジュマン(澱引き)時期など、ボトルの情報をつぶさに知ることができるというもの。また、「ミュージックペアリング」が楽しめるなど、斬新なアプリも搭載し、新しいクリュッグの楽しみ方を提案している。
去る9月、修善寺の名旅館「あさば」において、「Krug Encounters」と銘打ったイベントが行われた。クリュッグと音楽、食材を融合させることで、クリュッグの深い楽しみ方を追求するという意欲的な試みだ。クリュッグの世界観をイマジネーション豊かに体験できる。フランス、韓国、イタリア、スイス、イギリスなど世界各地で開催されており、日本は6か国目の訪問国だという。興味深いのが、“Food”として毎年選ばれる単一食材だ。今年選ばれた食材は「Fish」。これをテーマに、“クリュッグ アンバサダー”のひとり「鮨処 多田」の多田幸義氏と「あさば」による料理が用意された。