BY JUNKO ASAKA
このなかなかに哲学的なテーマのもと、シェフたちは個々に「漆の器に盛る料理」のプランを練り、赤木さんは門下総出で新作を含めおよそ500点の器を準備してこの日を迎えた。ランチ、ディナーとも1回50席。地元北陸はもちろん、国内外から3日間で計200人のゲストが集まった。
デザートまでの計7品、シェフたちによる料理には、荒々しくも豊饒な能登の自然に育まれた食材に対する愛情とリスペクトが満ち満ちていた。最初のひと皿は、3人のシェフが「生地をこねて、火を入れ、手渡す」という共通テーマでつくったアミューズの盛り合わせ、「結(ゆい)」。能登の里山に根づく、人々の互助関係“結”への敬意を込めたネーミングだ。以降、各シェフが持ち回りで手がけた前菜3品、魚、肉料理、デザートと続く。
「親密な風景」と名づけられた平田シェフの前菜はイタリアらしい焼きリゾット――なのだが、漆の椀に盛られ、七尾の老舗昆布店「しら井」の海苔を使い、ハマグリの出汁で炊いた風味豊かな「海苔の焼きリゾット」は、国境を軽やかに超えた“能登の味”だ。添えられたのは、全国でも能登を含め3カ所だけで飼育されているという七面鳥。地元門前町のコシヒカリを飼料に育てられた七面鳥は、なめらかな肉質で香ばしいほどの旨みをたたえている。