日本のみならずアメリカ、EUでも有機認証を取得した純米酒が「福光屋」から発売された。上質な酒米の契約栽培に取り組みはじめてからおよそ60年。老舗酒蔵が世に送り出す自信作には、酒米農家と二人三脚の長い歴史があった

BY MIKA KITAMURA

 そして2001年、福光屋は純米酒だけを造る蔵となった。13代目当主・福光松太郎社長は「戦後、日本酒造りにおいて、材料と製法がずいぶん変わってきてしまいました。そろそろ酒造りの原点に立ち返らなければ、日本酒は未来へ続かない。そこで、米と水だけで造る純米蔵にシフトしました。生産高1万石以上の酒蔵では日本初のことです」と語る。

画像: 有機栽培は農家にとって手間の増える仕事だ。「最初の数年は雑草との闘い。ここまで来られたのは、田んぼの神様が応援してくれたと思っています」と社長は語る

有機栽培は農家にとって手間の増える仕事だ。「最初の数年は雑草との闘い。ここまで来られたのは、田んぼの神様が応援してくれたと思っています」と社長は語る

 60年にわたって酒蔵と農家が二人三脚で歩んできた努力――。その積み重ねた時間の結晶が、今回の新商品「禱と稔」だ。有機栽培で育てられた「山田錦」「金紋錦」「フクノハナ」を原料とした、3種類の有機純米酒。それぞれの土地の気候風土を体現した酒米を、福光屋ならではの味に仕上げるのが「百年水」と呼ばれる仕込み水と、金沢の土地で育った麹と酵母だ。仕込み水は、霊峰・白山を源流とし、100年の時をかけてミネラルを溶け込ませながら酒蔵の直下150mに辿り着いたもの。この水があるために、福光屋は1625年から同じ場所で酒を造り続けてきたのだという。

「有機米には田んぼの中の菌が生きていて、さまざまな作用をもたらします。今回の酒造りでも、この力に大きな影響を受けました。これが天然というものか、こういうことなのか、と驚きの連続でした」と福光社長。造りたての酒は、それぞれの米の個性が際立ち過ぎていたため、時間をかけて熟成させてからリリースすることにしたという。そうして3年半の年月を経た今、どの酒も包容力のあるやわらかな味となって発売の日を迎えた。

画像: 「禱と稔」(酒造年度2015年)<化粧箱入 720ml>各¥3,800(参考小売価格) 3種類それぞれにラベルのデザインが異なる。「金紋錦」はシャープさとボディを感じる洗練の味。「フクノハナ」はやわらかな口当たりと豊かに広がるコクが魅力。「山田錦」は、酒米の王者らしい力強さとふくらみを備え、軽やかで心地いい余韻が続く PHOTOGRAPHS: COURTESY OF FUKUMITSUYA

「禱と稔」(酒造年度2015年)<化粧箱入 720ml>各¥3,800(参考小売価格)
3種類それぞれにラベルのデザインが異なる。「金紋錦」はシャープさとボディを感じる洗練の味。「フクノハナ」はやわらかな口当たりと豊かに広がるコクが魅力。「山田錦」は、酒米の王者らしい力強さとふくらみを備え、軽やかで心地いい余韻が続く
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF FUKUMITSUYA

 これら三種類の酒は社長にとって、まさに娘のように愛おしいのだろう。それぞれの特徴を3姉妹に例えて説明してくれた。「骨格のしっかりとした山田錦は長女です。次女は金紋錦で、スマートな味わい。フクノハナは末っ子らしい、お茶目で愛嬌のある風味です」。宝物のような娘たちの服(ラベル)のデザインは、世界的デザイナーである「ミナ ペルホネン」の皆川明にオーダー。皆川は、米ひと粒に宿る心を顔に見立て、版画、ドローイング、切り絵でそれぞれを表現した。「禱と稔」の酒がこれから出合っていくであろう料理や人、文化に思いを馳せ、「face to face」になるようにとの想いを込めたのだという。

 どの酒も、米の芳醇な風味を感じるやさしい味わい。古来の日本人同様に「祈り」を込めて育てられた米で醸された、酒という豊かな「稔り」を、存分に味わってみてほしい。

問い合わせ先
福光屋
フリーダイヤル:0120-293-285
公式サイト

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