TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
ステキな店に出会うと、みんなに教えてあげたいような、本当は内緒にしたいような気分になる。今回紹介する店は、まさにそんな店。昼夜通して人で賑わう祇園の路地奥のさらに履き物ショップの奥という秘密めいたロケーションにも惹かれます。
祇園「ハーモニカ」
「タルトがおいしい店が祇園にできてるよ」と、友人に教えてもらい、「ハーモニカ」を初めて訪れたのが数ヶ月前。電柱には”この先行き止まり”の注意書きが貼られ、地元の人も入ったことないような路地を進む。”焼き菓子とデザート”と書かれた立て看板はあるものの、紋入りの暖簾がかけられた入口で靴を脱ぐというスタイルに、一瞬たじろいでしまうが、恐る恐る店に入ると、そこには色とりどりのサンダルが並んでいた。
元々こちらは老舗の履物匠「祇園 ない藤」の工房だった場所。昨年5月、「祇園 ない藤」のオリジナルサンダルJOJOのショップを含む複合空間「Gion Naito 123 market」に生まれ変わり、焼き菓子とデザートの店「ハーモニカ」はJOJOショップの奥で営業されている。
メニューには、季節のフルーツを使ったタルトが6種類ほど並ぶほか、趣向を凝らしたパーツを美しく盛りつけたアシェットデセールも10種類近くラインアップ。
店主・松本泰さんは、元フランス料理のシェフであり、菓子も素材ありきな料理人視点から作られている。
例えばタルトは、通常1人用は直径5、6cmのタルト型で作られることが多いが、「ハーモニカ」では直径12cmのものを使用。あくまでもフルーツとタルトが主役で、カスタードクリームはそのつなぎ役と捉え、カスタードクリームはタルト生地の上に薄くのばす程度に控えめに使われている。「小さい型だとクリームをこんもりと高く盛りつけることになるので、口に運んだ時にフルーツのみずみずしさが際立たず、味のバランスが崩れてしまうのもイヤなんです」。フルーツによってはフレッシュだったり、焼き込んだり、柑橘のタルトは、バーナーで炙ってみずみずしさはそのままに、苦みを和らげることも。カスタードクリームの濃さやクリームに使うリキュール、上にのせるハーブなどもフルーツによって巧みに変えられている。
「直径が大きいとフルーツの個性を生かして盛りつけられるのも魅力」と、松本シェフが言うように、フルーツ本来の形や色を生かしたデコレーションは、まるで大輪の花のような美しさ。直径12cmと聞くと1人では大きいかと思うが、甘ったるさがなく、軽やかで、気づけばペロリ。遠方から来るファンは、アシェットデセールを交え1人3、4皿食べる人もいるとか。
タルト類は持ち帰るほか、カヌレやフィナンシェなどの焼き菓子もあり。京都通のなかには、”お土産は京都らしさよりおいしさ重視で選ぶ”派が増えているが、そんな方にもお勧めの一軒だ。
ハーモニカ
住所:京都市東山区亀井町43-2 Gion Naito 123 market内
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:火曜
TEL. 050(3551)8625
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