「おいしいものは身体にいいのよ」。有元葉子さんはしばしばこの言葉を口にする。「野菜が身体にいいのはもちろんです。ただ、運動したら、肉や揚げものをたっぷり食べたいし、疲れたときには甘いものが欲しくなります。食べることについて、自分の身体の声を頼りにしてはいかがでしょう」。有元葉子さん直伝の、真っ当においしく、身体にやさしい、理にかなった調理法と食べ方をお届けします。第15回は新米の季節、炊き立てごはんのおいしい食べ方を伝授

RECIPE BY YOKO ARIMOTO, PHOTOGRAPHS BY YUKI SUGIURA, TEXT BY MIKA KITAMURA

画像: 一晩、卵の黄身を醤油に漬けるだけで、ねっとりとろりとした口当たりに

一晩、卵の黄身を醤油に漬けるだけで、ねっとりとろりとした口当たりに

「炊き立てをおひつに移すだけで、ふっくらつやつやごはんに」

 つややかな炊き立てごはんにうっとりする新米の季節。新米をおいしくいただく方法を有元さんに教えてもらった。
「炊き立てのごはんの味わいや香りは格別ですね。雑穀入りや玄米も大好きですが、この季節は新米を炊くのが楽しみです。家では土鍋や羽釜などを愛用していますが、スタジオでは電気釜を使っています。長年、さまざまな道具で炊いてきて、それぞれの炊き上がりに違いはありますが、おいしさに差があるわけではないことに気づきました。ごはんをおいしくいただくには、おひつを使うのが大事です」

 土鍋ではふっくら、羽釜はシャキッと、電気釜はその中間の食感に炊き上がるのだとか。どの道具を使って炊いてもいいが、必ずおひつに移すのがポイントだ。木製のおひつは、吸放湿性に優れ、ごはんの水分をほどよく調整。炊き立てをそのまま食べるより、一粒一粒が立って、お米の甘みもしっかり感じられる。冷めてもおいしさをキープしてくれるし、食卓に置けば、おかわりのたびに立つ手間もない。
 「炊き上がったばかりのごはんをいただくと、何よりほっとします。おひつのごはんのおいしさは格別。ご家庭でも取り入れてほしい道具です」

炊き立てごはんに「うに玉子」の組み合わせは、有元家の定番。「卵の黄身を醤油に一晩ほど漬けておくだけのものですが、ねっとりとした口当たりがうにみたい、と名付けたもの。このようなシンプルなおかずこそが、ごはんの味わいを引き立ててくれます」

<材料 1人分>
ご飯 1膳
卵の黄身 1個
醤油 大さじ2/3

<作り方>

画像: 1 あらかじめ「うに玉子」を作っておく。卵の黄身を小さなカップに移し、醤油を加え、ラップをして一晩おく。

あらかじめ「うに玉子」を作っておく。卵の黄身を小さなカップに移し、醤油を加え、ラップをして一晩おく。

画像: 2 お米を炊いている間に、おひつを充分にぬらし、余分な水分を拭いておく。ボウルに水を張り、しゃもじとさらしのふきんを用意。

お米を炊いている間に、おひつを充分にぬらし、余分な水分を拭いておく。ボウルに水を張り、しゃもじとさらしのふきんを用意。

画像: 3 ごはんが炊き上がったら5分ほど蒸らす。しゃもじを水につけて、釜からそっとごはんをすくい、おひつに移す。ごはんを移すたびにしゃもじを水につける。ごはんを決して混ぜないこと、おひつに移す段階でごはんをひっくり返すのがコツ。全部移したら、しゃもじでそっとごはんを切る。

3 ごはんが炊き上がったら5分ほど蒸らす。しゃもじを水につけて、釜からそっとごはんをすくい、おひつに移す。ごはんを移すたびにしゃもじを水につける。ごはんを決して混ぜないこと、おひつに移す段階でごはんをひっくり返すのがコツ。全部移したら、しゃもじでそっとごはんを切る。

画像: 4 移し終えたら、さらしのふきんをはさんで蓋をする。しゃもじと水を入れた器を添えておく。杉の香りがごはんに合うと、杉の木製のおひつを使用。

4 移し終えたら、さらしのふきんをはさんで蓋をする。しゃもじと水を入れた器を添えておく。杉の香りがごはんに合うと、杉の木製のおひつを使用。

画像: 5 ごはんを器に盛り、「うに玉子」をそっとすくってのせる。

5 ごはんを器に盛り、「うに玉子」をそっとすくってのせる。

画像: 有元葉子(ありもとようこ) 料理家。素材を生かしたシンプルで力強い料理と、環境にも配慮した心地よい暮らし方に多くの共感が集まり、著書は100冊を超える。使いやすく美しい調理道具「ラバーゼ」シリーズを提案し、東京でセレクトショップ「SHOP281」を経営。イタリア・ウンブリアと信州にも家を持ち、東京と信州、イタリアでの生活を楽しむ。 公式サイトはこちら

有元葉子(ありもとようこ)
料理家。素材を生かしたシンプルで力強い料理と、環境にも配慮した心地よい暮らし方に多くの共感が集まり、著書は100冊を超える。使いやすく美しい調理道具「ラバーゼ」シリーズを提案し、東京でセレクトショップ「SHOP281」を経営。イタリア・ウンブリアと信州にも家を持ち、東京と信州、イタリアでの生活を楽しむ。
公式サイトはこちら

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