これからの時代、自分の食べるものは自分の手で心地よく調えられるほうがよい。料理はあなたの身のため、そして誰かのためにも。たんぱく質も野菜もたっぷりのスープは、身体と心と日々の暮らしを無理なく楽しく整える

RECEPI BY TOMOKO NAGAO, PHOTOGRAPHS BY TAKAKO HIROSE, TEXT BY MIKA KITAMURA

Vol.1 ガルビュール

画像: フランス南西部から、フランスとスペインにまたがるバスク地方の郷土料理「ガルビュール」。透明なスープを白濁するまで煮込み、素材同士が渾然一体となった味を楽しむ

フランス南西部から、フランスとスペインにまたがるバスク地方の郷土料理「ガルビュール」。透明なスープを白濁するまで煮込み、素材同士が渾然一体となった味を楽しむ

「スープさえあればーー」
「ご飯と味噌汁、スープとパン。どんなスタイルにしろ、主食と汁ものさえあれば、日々を生きぬいていける気がします。」と長尾さんは言う。
 材料を入れて、煮込む。難しい技は必要ないが、おいしくて滋養があり、食べるとほっとする。そんなスープ作りはあなたの身のため、そして“生き抜く”ための助けになるはず。「そうそう、“息を抜く”ための助っ人にもなりますよ」と長尾さん。生き抜くために、息抜きはとても大切なこと。

バスク地方の郷土料理「ガルビュール」
 「バスクに魅せられて通っていたころ、土地の料理でいちばん惹かれたのがこのスープでした。大鍋にたっぷり作り、朝ごはんに、お昼にと、煮込んでいくうちに味が変化していく。『子供の頃はうんざりしていたけれど、大人になってそのおいしさがしみじみわかるようになったんだ』とお会いした現地の方が話してくれたのを覚えています」と長尾さん。

 本場のガルビュール作りに欠かせないのは、白いんげん豆とピマン・デスペレットと呼ばれる赤唐辛子粉、生ハムのすねの端っこ。これに季節の野菜を加える。どれもその土地の産物だ。「私たちは、白いんげん豆の水煮と粗挽き唐辛子粉、パンチェッタやベーコンを使って作りましょう」

 作り方のポイントは、ひたすら煮込むこと。煮込み方が足りないと物足りなさが残るので、全体がしっかりとまとまるまで火を通すことが肝心。「白濁したら食べどきです。冬はかぶや大根で、春はグリーンピースや菜の花、そら豆、夏はパプリカやズッキーニを加えれば、季節ごとの味を楽しめます」(長尾さん)

<材料4〜5人分>

キャベツ 約1/3個…芯は薄切り、葉は2cm角
じゃがいも(メイクイン)4個…約2cm幅に切り分けたものを約4等分
玉ねぎ 大1/2個…1cm角
A にんじん 小1本…縦に4等分し、1cm幅に切る
 かぶ 2個…くし形に切り、横半分に切る
 白いんげん豆(水煮) 約150g…水気を切っておく
 タイム 2本
 にんにく 1片…縦2等分して芯を外し、横に薄切り
 パンチェッタ(またはベーコン) 約120g…拍子木切り
塩 少々
植物油 大さじ2

画像: 大きめの鍋に油とにんにくを入れて弱火にかける。キャベツとかぶ、白いんげん豆以外のAの材料を入れ、タイムはちぎって散らす。軽く塩を振り、木べらなどで混ぜながら炒める

大きめの鍋に油とにんにくを入れて弱火にかける。キャベツとかぶ、白いんげん豆以外のAの材料を入れ、タイムはちぎって散らす。軽く塩を振り、木べらなどで混ぜながら炒める

画像: 全ての材料が馴染んできたら、キャベツを加えて軽く炒め合わせる。材料がかぶるまで水を加え、火を強めて軽く煮立つくらいの火加減で20分ほど煮込む。この時点でスープは透明

全ての材料が馴染んできたら、キャベツを加えて軽く炒め合わせる。材料がかぶるまで水を加え、火を強めて軽く煮立つくらいの火加減で20分ほど煮込む。この時点でスープは透明

画像: 材料がやわらかくなり、煮汁が少し濁ってきたら、かぶと白いんげん豆を加えて軽く混ぜ、さらにことこと20分ほど煮込む。野菜がやわらかくなり、スープが白濁してきたら出来上がり。素材の一体感がこのスープの魅力

材料がやわらかくなり、煮汁が少し濁ってきたら、かぶと白いんげん豆を加えて軽く混ぜ、さらにことこと20分ほど煮込む。野菜がやわらかくなり、スープが白濁してきたら出来上がり。素材の一体感がこのスープの魅力

画像: スープを器に盛り、好みで赤唐辛子粉を振る。無塩バター(写真は約100g)に、レモンの皮を1/3個分すりおろして塩を少々振る。レモンの皮の爽やかさとほのかな苦味を添えたバターをパンにたっぷりのせて、スープと一緒に召し上がれ

スープを器に盛り、好みで赤唐辛子粉を振る。無塩バター(写真は約100g)に、レモンの皮を1/3個分すりおろして塩を少々振る。レモンの皮の爽やかさとほのかな苦味を添えたバターをパンにたっぷりのせて、スープと一緒に召し上がれ

「家庭の味は物足りないくらいでいい」と、長尾さんは言う。味を決めすぎず、足りなければお好きに加えてね、というくらいがいい。無理なく作れて気軽に楽しめ、じんわりと滋味深い、そんな旬のスープをぜひ自分の味方に。

Vol.2 長ねぎと牡蠣のスープ

画像: 長ねぎの甘みが生きた冬のスープ。調味料は塩と生姜、オリーブオイル。スパイシーな牡蠣を添えれば、贅沢な一品に

長ねぎの甘みが生きた冬のスープ。調味料は塩と生姜、オリーブオイル。スパイシーな牡蠣を添えれば、贅沢な一品に

「長ねぎを丸ごと1本、無駄なく使う」
 長ねぎと牡蠣のおいしい季節に作ってほしいスープ。長ねぎの青い部分も使い、1本丸ごと食べ切りましょう。

 スープをおいしく仕上げるコツは、白い部分と青い部分を時間差で投入すること。長ねぎをぶつ切りにすることで食べ応えのある一品に。

「シンプルな仕立てだから三段活用も」
 牡蠣を添えればメインディッシュに。さらにキヌアなどの雑穀を添えればボリュームのあるひと皿料理に。雑穀はもちきび、押し麦、大麦などお好みで。スープ、主菜、ひと皿料理とTPOに合わせて活用できる。
 
 ターメリック、クミン、コリアンダー。お持ちではないかもしれない。「スパイスは何種類も持つ必要はないのですが、この3種類に赤唐辛子粉を足せば、カレーの基本の味になります。単独でもさまざまな料理に使えるので、この3種は揃えておくと重宝しますよ」

<材料4人分>

長ねぎ 2本 2.5cmのぶつ切り
牡蠣 12個 塩をもみ込み、流水で洗う
ターメリックパウダー 小さじ1/2 
クミンシード 小さじ1/2
コリアンダーパウダー 小さじ1/2
生姜(すりおろし) 小さじ山盛り1
キヌア 約50g お湯に塩少々を加えて13分ほどゆでて水気を切る
オリーブオイル 約大さじ2
ローリエ 2枚
薄力粉 約大さじ2
塩 少々

画像: 長ねぎは、濃い緑の部分を残し、残りを鍋に入れる。ローリエ、塩少々を入れ、ひたひたに水を注ぎ、中火にかける。煮立ったら火を弱めて蓋をし、20~25分煮る

長ねぎは、濃い緑の部分を残し、残りを鍋に入れる。ローリエ、塩少々を入れ、ひたひたに水を注ぎ、中火にかける。煮立ったら火を弱めて蓋をし、20~25分煮る

画像: すり鉢にスパイス類を入れ、クミンが粗く砕けるくらいまでする。牡蠣はキッチンペーパーで水気をしっかりふいて薄力粉をまぶす。小振りなら個数を増やしても

すり鉢にスパイス類を入れ、クミンが粗く砕けるくらいまでする。牡蠣はキッチンペーパーで水気をしっかりふいて薄力粉をまぶす。小振りなら個数を増やしても

画像: 長ねぎがやわらかく煮えたら、残しておいた青い部分と生姜、オリーブオイル小さじ1を入れ、長ねぎがかぶるくらいの水を足す。蓋をして静かに煮込む。途中、水分が減ったら適宜足し、味を見て塩を足す

長ねぎがやわらかく煮えたら、残しておいた青い部分と生姜、オリーブオイル小さじ1を入れ、長ねぎがかぶるくらいの水を足す。蓋をして静かに煮込む。途中、水分が減ったら適宜足し、味を見て塩を足す

画像: フライパンに残りのオリーブオイルを入れて弱火で温め、牡蠣を並べ入れる。中火にして蓋をする。下の面に軽く焼き色がついたら上下を返し、スパイス類を振る。さらに上下を返して全体にからめて火を止める。スパイスは焦げやすいので、仕上げにからめるように仕上げる

フライパンに残りのオリーブオイルを入れて弱火で温め、牡蠣を並べ入れる。中火にして蓋をする。下の面に軽く焼き色がついたら上下を返し、スパイス類を振る。さらに上下を返して全体にからめて火を止める。スパイスは焦げやすいので、仕上げにからめるように仕上げる

画像: 牡蠣とキヌアをそれぞれ器に盛る。スープを器に盛り、キヌアと牡蠣を添える

牡蠣とキヌアをそれぞれ器に盛る。スープを器に盛り、キヌアと牡蠣を添える

「主食とスープさえあれば安心ですね。まずは自分のために作るのが大切なんだと思います」。自分のための料理は、自らの身体と心を支えてくれる。長ねぎ1本あれば、大満足のスープ。冬の寒い日の拠りどころになりそう。

Vol.3 にんじんのポトフ

画像: 器に煮込んだ具材を盛り、スープは別のボウルに盛ってこしょうを挽きかける。マスタードは2種類を同量ずつ混ぜ合わせて、切り分けたパンと共にテーブルへ

器に煮込んだ具材を盛り、スープは別のボウルに盛ってこしょうを挽きかける。マスタードは2種類を同量ずつ混ぜ合わせて、切り分けたパンと共にテーブルへ

「にんじんは、やわらかく煮てから皮をむく」
 丸のまま煮込まれたにんじんが主役。春先のやわらかいにんじんでまず作ってみよう。煮込んでから、まだ温かさが残るうちに皮をむくのがポイント。にんじんの皮がこんなに薄く、スルッとむけることに驚くはず。薄皮をむいただけで、にんじんはつるんと、ツヤツヤ。鮮やかなオレンジ色に輝く。

「具材とスープは別々に盛って楽しむ」
 ポトフといえば、数種類もの肉や野菜を煮込むことが多いが、今回、にんじんの存在感を際立たせるために、鶏肉、セロリだけのミニマルな材料で作っている。「だしがよく出るよう、鶏肉は骨付きを選ぶとよいでしょう。今回は手羽元と骨付きもも肉を使いましたが、手羽元の代わりに手羽先でも」と長尾さん。
 
 にんじんの煮汁も無駄なく全て利用して作ったスープも美味。皮ごと煮たにんにくは、皮をはずし、具材と一緒に食べても。「スープはたっぷり作って、翌日、残った野菜を小さく切って朝やお昼のスープにしてもいいでしょう」。

<材料4人分>

にんじん 大小合わせて6~7本 たわしでよく洗う
鶏骨つきぶつ切り肉 約500g 塩を全体にまぶす
鶏手羽元 4〜5本 塩を全体にまぶす
鶏用の塩 鶏肉の重量の3%
セロリ 大1本  葉を摘み、茎は筋を取り、約4cm長さに切る
ローリエ 2枚
にんにく 1片
塩、こしょう 各少々
粒マスタード 約大さじ1~11/2
練りマスタード 約大さじ1~11/2
好みのパン 適量

画像: 鶏肉は塩気をキッチンペーパーなどでふき取り、にんにく(皮付きのままでOK)とともに鍋に入れ、水をひたひたに注いで中火にかける

鶏肉は塩気をキッチンペーパーなどでふき取り、にんにく(皮付きのままでOK)とともに鍋に入れ、水をひたひたに注いで中火にかける

画像: 沸騰してきたら火を弱め、煮立たせないように火加減する。ひたひたの水分量をキープするために水を足しつつ、30分ほど煮込む。煮立たせないようにしながら途中、アクと脂を丁寧に取り除いて、写真のように澄んだ状態にするとおいしいスープに

沸騰してきたら火を弱め、煮立たせないように火加減する。ひたひたの水分量をキープするために水を足しつつ、30分ほど煮込む。煮立たせないようにしながら途中、アクと脂を丁寧に取り除いて、写真のように澄んだ状態にするとおいしいスープに

画像: にんじんを別の鍋に入れてローリエを加え、ひたひたの水を注いで中火にかける。大きさが違う場合は、大きめのものを下にして鍋に入れる。少しずらして蓋をし、煮立ってきたら火を弱め、軽く煮立つ程度の火加減で、にんじんがやわらかくなるまで煮る(大きさや状態によって違うが、火入れ時間は30分くらい)。煮汁は取っておく

にんじんを別の鍋に入れてローリエを加え、ひたひたの水を注いで中火にかける。大きさが違う場合は、大きめのものを下にして鍋に入れる。少しずらして蓋をし、煮立ってきたら火を弱め、軽く煮立つ程度の火加減で、にんじんがやわらかくなるまで煮る(大きさや状態によって違うが、火入れ時間は30分くらい)。煮汁は取っておく

画像: やわらかく煮えたにんじんをお皿などに取り出して粗熱を取り、薄皮を丁寧にはがす

やわらかく煮えたにんじんをお皿などに取り出して粗熱を取り、薄皮を丁寧にはがす

画像: 鶏肉がやわらかく煮えたら、にんじんの煮汁を漉しながら加える

鶏肉がやわらかく煮えたら、にんじんの煮汁を漉しながら加える

画像: 鶏肉の上ににんじんをのせ、弱火にかける。セロリの茎をのせ、蓋をしてセロリに火が通るまで15分ほど静かに煮たら、セロリの葉を加え、再び蓋をして7〜8分煮る。味を見て足りなければ塩を足して、火を止める

鶏肉の上ににんじんをのせ、弱火にかける。セロリの茎をのせ、蓋をしてセロリに火が通るまで15分ほど静かに煮たら、セロリの葉を加え、再び蓋をして7〜8分煮る。味を見て足りなければ塩を足して、火を止める

 ポトフにはマスタードを添えるのが定番。長尾さんは、粒入りのものとフレンチマスタードの2種類をミックス。複雑な風味になり、存在感のある味わいになるのだとか。
 ポトフのような煮込み料理は多めに作って、2〜3回に分けて食べ切るのがいい。「2度目のポトフは、カレー粉やトマトピュレを加えて風味を変えれば、飽きずに食べられます」。

Vol.4 新ごぼうのポタージュ

画像: ベーコンのクミンシード炒めは小さい器に入れて食卓に。それぞれがポタージュにのせていただく

ベーコンのクミンシード炒めは小さい器に入れて食卓に。それぞれがポタージュにのせていただく

新ごぼうは粗めに仕上げて、食べ応えのある一品に
 春は新ものが出回る季節。新ごぼう、新玉ねぎ、新じゃがなどの春野菜には寒い時期、体内に溜まった余分な脂肪や毒素を排出する効果があり、大いに食べたいもの。
「新ごぼうはアクが強くなく、軽やかな印象ですが、味に存在感がありますから、じゃがいもと牛乳、生クリームを加えるだけで、充分おいしいポタージュになります」と長尾さん。

「フードプロセッサーでごぼうをピュレ状にするとき、少し粗目に仕上げれば食べ応えのある一品になります」。ポタージュがとてもシンプルな味わいなので、仕上げにベーコンとクミンシードを炒めて加える。スパイシーな香ばしさとのコントラストで重層的な味わいに。

 旬の野菜を食べれば、身体が整う。「ピュレを冷凍しておけば、それをお鍋に入れて牛乳などでのばしてすぐに食べられます。多めに作って常備すれば、忙しいときの助けになるはずです」。余分なものが入っていない野菜だけのポタージュは、お年寄りにも赤ちゃんの離乳食にもおすすめ。その場合は、ピュレをなめらかになるまで攪拌してもいい。

 このポタージュにパンを添えれば、満足な食に一食に。今回は、シンプルなクイックブレッドの作り方を紹介。ごぼうを煮る間に生地を仕込み、焼きたてのアツアツをスープと一緒に召し上がれ。

<材料3〜4人分>

新ごぼう 2本 包丁の背で皮をこそげ、1cm長さに切る
じゃがいも(男爵)2個 皮をむき、8等分に切る
牛乳 150ml
生クリーム 200ml
塩 少々
ベーコン スライス4枚 細切りにする
クミンシード 小さじ2
オリーブオイル 小さじ1

画像: ごぼうは水に浸け、さらに水でさっと洗って水気を切り、鍋に入れる。じゃがいもは軽く水にさらし、水気を切って鍋に入れる。水をひたひたに注ぎ、オリーブオイルを加え、塩を軽く振り、中火にかける。煮立ってきたらアクをすくい、少し火を弱めて蓋をして約20分煮込む。

ごぼうは水に浸け、さらに水でさっと洗って水気を切り、鍋に入れる。じゃがいもは軽く水にさらし、水気を切って鍋に入れる。水をひたひたに注ぎ、オリーブオイルを加え、塩を軽く振り、中火にかける。煮立ってきたらアクをすくい、少し火を弱めて蓋をして約20分煮込む。

画像: ごぼうがやわらかくなったら、全てをフードプロセッサーに移し、粗いピュレ状になるまで、攪拌する。

ごぼうがやわらかくなったら、全てをフードプロセッサーに移し、粗いピュレ状になるまで、攪拌する。

画像: ピュレを鍋に移し、水約150cc(材料外)を加えて弱火にかける。木べらで混ぜながら温める。牛乳と生クリームを混ぜ合わせてから鍋に加えて混ぜ、2〜3分煮る。濃すぎるようであれば水を適宜加え、とろりとしたポタージュに仕上げる。味を見て足りなければ塩を加え、火を止める。

ピュレを鍋に移し、水約150cc(材料外)を加えて弱火にかける。木べらで混ぜながら温める。牛乳と生クリームを混ぜ合わせてから鍋に加えて混ぜ、2〜3分煮る。濃すぎるようであれば水を適宜加え、とろりとしたポタージュに仕上げる。味を見て足りなければ塩を加え、火を止める。

画像: ベーコンはフライパンに入れ、弱火でじっくり炒める。香りが立ってきたらクミンシードを加え、焦げないよう混ぜながら炒め、カリッとしたら小さな器に移す。

ベーコンはフライパンに入れ、弱火でじっくり炒める。香りが立ってきたらクミンシードを加え、焦げないよう混ぜながら炒め、カリッとしたら小さな器に移す。

画像: ごぼうのポタージュを器に盛り、ベーコンと、好みで焼き立てのクイックブレッド(下記参照)を添える。

ごぼうのポタージュを器に盛り、ベーコンと、好みで焼き立てのクイックブレッド(下記参照)を添える。

焼き立てを味わうクイックブレッドにトライ

 余力があるなら、焼き立てのクイックブレッドを添えてみてほしい。「パンづくりは難しい印象がありますが、生地の扱いに慣れるととても楽しいです。イーストではなく、ベーキングパウダーで作るので、発酵する手間が不要。思い立ったらすぐに作れます」。

 生地は、室温で少し時間をかけて休ませると、扱いやすく伸びのいい生地になる。「ごぼうを煮る間に生地を仕込み始め、ポタージュを仕上げている間に生地を休ませればスムーズに出来上がります」。焼きたてにチーズをのせてもおいしい。

 ベーキングパウダーで作るパンは時間をおくと固くなるので、食べる分だけ焼くのがおすすめ。残ったらトーストしてクルトンにしたり、クラッカーのような食べ方をするとよい。

<材料 6枚分>
薄力粉 200g
強力粉 100g
ベーキングパウダー 5g
プレーンヨーグルト 150ml
水 約70ml
塩 5g
てん菜糖 小さじ1
打ち粉 適量

画像: 小麦粉とベーキングパウダーを混ぜ、ボウルにふるい入れる。プレーンヨーグルトと水、塩、てん菜糖を混ぜ合わせ、粉の真ん中に注ぎ、ゴムベラで内側に粉を集めるようにしながら生地をまとめる。粉気がなくなったらまな板などに取り、手につくようなら打ち粉をしながら軽くこね、丸くまとめてボウルに戻し、ラップをかけて約15分休ませる。オーブンを180℃に予熱する。天板にオーブンシートを敷く。生地を6等分し、丸めてからそっと引っ張るように直径14〜15cmの円形に伸ばし、オーブンシートにのせる。

小麦粉とベーキングパウダーを混ぜ、ボウルにふるい入れる。プレーンヨーグルトと水、塩、てん菜糖を混ぜ合わせ、粉の真ん中に注ぎ、ゴムベラで内側に粉を集めるようにしながら生地をまとめる。粉気がなくなったらまな板などに取り、手につくようなら打ち粉をしながら軽くこね、丸くまとめてボウルに戻し、ラップをかけて約15分休ませる。オーブンを180℃に予熱する。天板にオーブンシートを敷く。生地を6等分し、丸めてからそっと引っ張るように直径14〜15cmの円形に伸ばし、オーブンシートにのせる。

画像: 180℃のオーブンで10分間焼き、上下を返して焼き色がつくまで6~8分焼く。焼きたてをポタージュに添える。

180℃のオーブンで10分間焼き、上下を返して焼き色がつくまで6~8分焼く。焼きたてをポタージュに添える。

Vol.5 夏のココナッツスープ

画像: 夏に合う味わいだが、あくまで滋味深く優しいスープ。器に盛る際は、具材を盛ってから香菜を散らし、スープを注ぐとよい

夏に合う味わいだが、あくまで滋味深く優しいスープ。器に盛る際は、具材を盛ってから香菜を散らし、スープを注ぐとよい

「ナムプラーとココナッツミルクでアジア風の味わい」

 これからの季節に食べたい、アジアンテイストな魚介のスープをご紹介。「ナムプラーをひと振りするだけ、さらにココナッツミルクを加えれば、アジアの雰囲気が漂い、夏らしい味になります。魚介のかわりに鶏や豚肉でも」と長尾さん。ココナッツミルクは疲労回復に、赤唐辛子は食欲増進効果も。「いつもの料理の目先が変わるので。夏の食材として魅力的です。ココナッツミルクをスープに加えたら、分離しないよう、煮立たせずに弱めの火加減で温めてくださいね」

 ふだんは捨ててしまう玉ねぎの皮と香菜の根元の部分も、だしとして活用する。あさりとえび、ナムプラーの旨みも加わり、自然な味わいに。「赤唐辛子は丸ごと、玉ねぎの皮や香菜の根元と一緒に煮込んで辛味をスープに移し、引き上げてしまってもいいでしょう。今回はもう少し辛みが欲しかったので、刻んで鍋に戻しました。赤唐辛子の辛みは、ココナッツミルクの甘みと相性がいいんです」

 優しいスープの味は、エスニックテイストに抵抗がある方にも食べやすい。スープ作りと同時進行で炊いたおこわをむすんで添えれば、夏を乗り切るパワースープになるはずだ。

<材料4人分>

えび 12尾/殻をむき、背に沿って浅く切り込みを入れて背わたを除き、ボウルに入れて塩をもみ込んでから水洗いしてぬめりを取る
あさり 約300g/塩水に浸けて砂抜きする
もやし 1袋/ひげ根を取る
玉ねぎ 1個/皮をむき、薄切りに。皮は洗ってとっておく
筍の水煮 小1本/縦半分に切り、5〜6mm幅に切る
香菜 2〜3株/根元を切り、2cm長さに切る。根元は太い部分は縦半分に切り、適当な長さに切る
赤唐辛子(生または乾燥) 1本/ヘタを切り、種を出す 
ココナッツミルク 200ml 
ナムプラー 約大さじ2
塩 ひとつまみ    

画像: 鍋に1.5ℓほどの水を入れ、火にかける。煮立ったら、玉ねぎの皮と香菜の根元、赤唐辛子、塩を入れて、軽く煮立つくらいの火加減で15分ほど煮込む。

鍋に1.5ℓほどの水を入れ、火にかける。煮立ったら、玉ねぎの皮と香菜の根元、赤唐辛子、塩を入れて、軽く煮立つくらいの火加減で15分ほど煮込む。

画像: ボウルの上にざるを置き、玉ねぎの皮などを濾し、赤唐辛子を取り出して小口切りにし、スープとともに鍋に戻す。

ボウルの上にざるを置き、玉ねぎの皮などを濾し、赤唐辛子を取り出して小口切りにし、スープとともに鍋に戻す。

画像: 筍と玉ねぎを加え、ナムプラーの半量を加える。静かに10分ほど煮る。

筍と玉ねぎを加え、ナムプラーの半量を加える。静かに10分ほど煮る。

画像: あさりを加え、火を少し強める。あさりの口が開いたら、えびを加え、もやしをのせる。

あさりを加え、火を少し強める。あさりの口が開いたら、えびを加え、もやしをのせる。

画像: ココナッツミルクを加えて、具材が浸かるくらいに水(材料外)も加える。味を見て、残りのナムプラーを少しずつ加え(塩味が足りていれば全部使わなくてもいい)、煮立てないように軽く煮る。

ココナッツミルクを加えて、具材が浸かるくらいに水(材料外)も加える。味を見て、残りのナムプラーを少しずつ加え(塩味が足りていれば全部使わなくてもいい)、煮立てないように軽く煮る。

「もち米、うるち米半々のおこわでおむすびを」

スープを作り始める前にお米を炊く準備を。もち米は1時間ほど水に浸けるとよい。炊いている間にスープを作れば、作り立て、むすび立てを楽しめる。
 もち米とうるち米半々のおこわは、シンプルで重すぎず、ココナッツスープとバランスがいい。味のアクセントに、炒りごまをたっぷりつけてどうぞ

<材料4人分>

うるち米 1カップ
もち米 1カップ
炒り白ごま 約大さじ2
塩 少々

画像: 米2種類は合わせて研ぎ、同分量の水を加えて1時間くらいおく。炊飯器かまたは鍋で炊いておく(鍋の場合は沸騰したら弱火で15分ほど炊いて蒸らす)。ご飯が炊けたら、手に塩をつけ、丸くむすび、炒りごまをつけて盛り合わせる。

米2種類は合わせて研ぎ、同分量の水を加えて1時間くらいおく。炊飯器かまたは鍋で炊いておく(鍋の場合は沸騰したら弱火で15分ほど炊いて蒸らす)。ご飯が炊けたら、手に塩をつけ、丸くむすび、炒りごまをつけて盛り合わせる。

画像: お昼ごはんにぴったりなエスニック味のスープとおむすび。夜ならこれに1品添えるので充分。

お昼ごはんにぴったりなエスニック味のスープとおむすび。夜ならこれに1品添えるので充分。

Vol.6 トマトの味噌スープ

画像: Vol.6 トマトの味噌スープ

トマトは湯むきし、つるんとした口当たりに

 身体が重だるくなったり、食欲が落ちたりする梅雨の時期。すっきり味の温かいスープで元気をチャージしてほしい。今回は和の食材を重ねて、旨みマシマシのトマトの味噌スープをご紹介。旨みはまず昆布水で。水に約20分浸けておくだけなので、帰宅後でも着替えたり、料理の下ごしらえをしている間で充分。

 旨み成分たっぷりのトマトと味噌、昆布、かつお節、干し椎茸の「旨み五重奏」。すっきりときれいな味に仕立てるには、だしに味噌を溶き入れてから、網で濾すのがポイントだ。

「トマトは湯むきすると、優しい口当たりになるので、小さいお子さんやお年寄りにもいいですね。お湯に投入したら、すぐに引き揚げて。そのほうがするっときれいに皮がむけます」と長尾さん。ちょっとしたひと手間でぐんとおいしくなるので、トマトの皮の湯むきはぜひ。ただ、朝の慌ただしい時間には大変なので、朝食べるなら、前日にたっぷり作って用意しておこう。「翌朝、弱火で静かに温めて召し上がってくださいね」

 トマトを湯むきした後の皮は、だしに加えて利用する。レシピでは紹介していないが、だしをとった後のトマトの皮とかつお節は、低温のオーブンで乾かすように焼いてパリパリに。状態にもよるが、140℃のオーブンで30分が目安。「途中、焦げるようなら取り出して冷ましつつ、パリパリになるまで焼いてください。これに、ごまや焼き海苔を加えてふりかけに。ご飯が進みます」

<材料4人分>

小さめのフルーツトマト 8個/ヘタを取る
ミニトマト 8個/ヘタを取る
味噌 約大さじ2
昆布水 昆布約8cm角1枚+水1ℓ/20分おく
干し椎茸 第1枚/ひたひたのぬるま湯で戻す
鰹節 軽くひとつかみ
大葉 3〜4枚/縦半分に切り、細切りにする
スナップエンドウ 1袋/筋を取る
塩、こしょう 各少々 
ごま油 約小さじ2

画像: 鍋に昆布水を作っておく。トマトの湯むきをする。鍋にたっぷりのお湯を沸かし、トマトを入れ、3〜4秒で引き揚げ、皮をむく。皮は取り置く。

鍋に昆布水を作っておく。トマトの湯むきをする。鍋にたっぷりのお湯を沸かし、トマトを入れ、3〜4秒で引き揚げ、皮をむく。皮は取り置く。

画像: 昆布水の鍋に、戻し汁ごと干し椎茸を加え、弱火にかける。煮立ってきたら鰹節を加え、味噌を溶かし入れる。トマトの皮も加え、弱火で2分ほど煮て火を止める。

昆布水の鍋に、戻し汁ごと干し椎茸を加え、弱火にかける。煮立ってきたら鰹節を加え、味噌を溶かし入れる。トマトの皮も加え、弱火で2分ほど煮て火を止める。

画像: だしを細かい目のざるで濾す。干し椎茸を取り出して軸を除き、薄切りにする。

だしを細かい目のざるで濾す。干し椎茸を取り出して軸を除き、薄切りにする。

画像: だしに湯むきしたトマトと干し椎茸を加える。

だしに湯むきしたトマトと干し椎茸を加える。

画像: 煮立たせないように弱火で温め、器に盛り、大葉を散らす。

煮立たせないように弱火で温め、器に盛り、大葉を散らす。

野菜をもう一品加えるなら、みずみずしいエンドウを

 今回、このスープに合わせるのは、緑色がみずみずしいスナップエンドウ。さっとゆでて、熱いうちにごま油を回しかけ、塩と黒こしょうを振るだけ。スナップエンドウの甘みとほのかな青くささが引き立つ。

「スナップエンドウはスープに加えてもいいのですが、トマト、エンドウそれぞれの味わいを存分に楽しんでほしいので、別々に。これに焼いただけの肉や魚を添えれば、充実の献立になります」

画像: 鍋にお湯を沸かし、塩ひとつまみを加える。スナップエンドウを入れ、火が全体に通り、しんなりするまでゆで、ざるにあげる。水気をよく切って、ボウルに移し、ごま油をまわしかけてよく混ぜ、塩を振り、ざっと混ぜる。器に盛ってこしょうを挽きかける。

鍋にお湯を沸かし、塩ひとつまみを加える。スナップエンドウを入れ、火が全体に通り、しんなりするまでゆで、ざるにあげる。水気をよく切って、ボウルに移し、ごま油をまわしかけてよく混ぜ、塩を振り、ざっと混ぜる。器に盛ってこしょうを挽きかける。

画像: 長尾智子 フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/)も好評。 公式サイトはこちら 公式インスタグラムはこちら

長尾智子
フードコーディネーター。書籍や雑誌の執筆、食品や器の企画やディレクションほか、食にまつわる提案を手がける。『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ』(柴田書店)ほか、著書多数。自らの目で選ぶオンラインストアSOUP(https://soup-s.shop/)も好評。

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