毎春恒例のNY・メトロポリタン美術館のファッション展。その今年のテーマが物議を醸している。ファッションエディターのバネッサ・フリードマンが関係者に取材した

BY VANESSA FRIEDMAN, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 いずれにせよ、ボルトンはこれまでもコスチューム・インスティテュートで展覧会を担当してきた。2015年に彼が担当した『China Through the Looking Glass(鏡の中の中国)』展は、問題の表面をなぞっているだけだと非難された一方で、歴代5位の入場者数を記録した。この展覧会によって、彼はより幅広い対話の重要性を痛感した。続いてボルトンは『Manus x Machina(手作業と機械技術-テクノロジー時代のファッション)』展で、ファッションにおけるテクノロジーの役割を分析した(こちらはメット歴代7位の入場者数を記録)。そして最新の『Rei Kawakubo/Comme des Garçons: Art of the In-Between(川久保玲・コム デ ギャルソン-間の技)』展。コスチューム・インスティテュートが存命中のデザイナーの回顧展をおこなったのは、1983年以来だ。この展覧会は広く称賛されたが、川久保玲がそもそもバズを起こしにくい選択なのは明らかで、展覧会自体も動員者数も、過去に比べて小規模だった。

 なぜメットがこの展覧会に賭けることにしたのか、ある程度は説明がつくだろう。これほど多くのローマ教皇庁の服飾品がヴァチカンから海を渡ってやってくるのは、1983年の『The Vatican Collections(ヴァチカン・コレクション-ローマ教皇とアート)』展のとき以来だ。この展覧会には89万6743人の来場者が訪れた。メットで歴代3位の記録だ。

『ヘヴンリー・ボディーズ』展のスポンサーはヴェルサーチだ。同ブランドはカトリックの図像をウエアの柄として用いているため、その結びつきを考えれば納得がいく。クリスティンとステファンのシュワルツマン夫妻も(そして、いつもどおりコンデナスト社も)スポンサーに名を連ねている。ステファン・A・シュワルツマンは投資ファンドであるブラックストーン社の会長で、彼の会社は2014年にヴェルサーチ株の20%を取得している。

 2年前、シュワルツマン夫妻は、恵まれない子供たちがカトリックの学校へ通えるよう金銭的サポートをするNY大司教区の取り組みのひとつ「インナーシティ奨学金制度」に、4千万ドル(約45億円)を寄付した。JPモルガンの副会長だったジミー・リー氏は、かつて『ニューヨーカー』誌に「シュワルツマン氏はカトリックのNY大司教区に、ほかのどのユダヤ人よりも多額の寄付をしてきた」と語った

 シュワルツマン夫妻は5月7日に行われたオープニング・ナイト・ガラ(いわゆるメットガラ)で名誉ホスト役に就任。ほかにも、コンデナスト社アーティスティック・ディレクターであり同美術館の理事であるアナ・ウィンター、ヴェルサーチのデザイナーであるドナテッラ・ヴェルサーチ、ジョージ・クルーニーの妻で弁護士のアマル・クルーニー、リアーナらが共同ホストをつとめた。ちなみに、アマルとリアーナの宗教的傾向は正確には知られていない。2人はともにファッション・インフルエンサーとして知られているが、レディ・ガガやマドンナといったポップスターたちのようにカトリックへの信仰心を活動や外見に色濃く匂わせているわけではない(ついでながら、リアーナが出演している2018年6月アメリカ公開予定の映画『オーシャンズ8』で、強盗事件の舞台となるのはメットガラだ)。

 招待状はNY大司教のドーラン枢機卿にも送られた。そしてこの5月7日に開かれたメットガラで、皆が心待ちにしていたとおり枢機卿の臨席がかなえられた。

 

「Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination」
会期:5月10日(木)~10月8日(月)
会場:The Met Fifth Avenue and The Met Cloisters
公式サイト

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