今回のリストは、江戸時代の春画と現代写真のコラボレーション展、ファッションデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンが選出した現代アーティストによる“解釈作品”展、そして奈良美智が“僕の大好きなせんせい”と敬愛する画家、櫃田伸也の個展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『ピエール セルネ & 春画』
シャネル・ネクサス・ホール

 2013年にイギリス・大英博物館で『春画:日本美術における性とたのしみ』が開かれ、世界的に注目を集めている春画。この写実的で生々しく、誇張された江戸時代のエロティック・アートに新しい光を当てた展覧会が行われている。選りすぐりの春画と、現代アーティスト、ピエール・セルネの作品を対比的に並べた『ピエール セルネ & 春画』だ。

画像: 展示風景。会場には春画とピエール・セルネによる作品が交互に並ぶ © CHANEL NEXUS HALL

展示風景。会場には春画とピエール・セルネによる作品が交互に並ぶ
© CHANEL NEXUS HALL

 セルネはフランス出身のパフォーマー兼写真家。今回は、文化的あるいは民族的に異なる背景を持つ人たちのヌードを“障子越し”に撮影した写真作品を披露している。シルエットのみを抽出した、このコンセプチュアルな作品は、人の愛情表現の普遍性を示したものだという。同じく“性”をテーマにした作品でありながら、色鮮やかで奔放的な春画とは対極的な表現だ。

 こうしたセルネの写真作品と春画を交互に展示することで、本展は時代と国の異なる2つの表現の“コントラスト”を鑑賞者に体験させる。その一方で、春画の作家たちにぐっと注目してみるのも面白いだろう。展示作品には鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿や葛飾北斎など、歴史的な絵師たちが名を連ねている。

画像: 展示風景。セルネの作品は、19世紀の日本の掛け軸に触発されたもの。また春画への“応答 "でもあるという © CHANEL NEXUS HALL

展示風景。セルネの作品は、19世紀の日本の掛け軸に触発されたもの。また春画への“応答 "でもあるという
© CHANEL NEXUS HALL

 じつは春画専門の絵師はおらず、当時は、あらゆる絵師たちが作家活動の一環として春画を描いた。結果、春画にはそれぞれの絵師たちの作家性もおおいに見受けられる。たとえば、和漢の古典や故事を当時風に見立てた作風で知られる鈴木春信は、春画においても古典文学を題材に選択。喜多川歌麿の春画には、彼の真骨頂である美人画のエッセンスも見てとれる。日本のものでありながら一般にはなじみの薄い春画。その意外な表現性を発見できるのも、本展の醍醐味である。

画像: 鳥文斎栄之《源氏物語春画巻》(下巻)部分 PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO

鳥文斎栄之《源氏物語春画巻》(下巻)部分
PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO

『ピエール・セルネ & 春画』
会期:前期/〜3月27日(水)、後期/3月29日(金)〜4月7日(日)
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
開館時間:12:00〜19:30
入館料:無料
電話:03(3779)4001
公式サイト

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