BY LIGAYA MISHAN, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
アメリカのアーティスト、デイヴィッド・バーンズとオースティン・ヤングは、ロサンゼルスを拠点に活動する「フォールン・フルート」を主宰している(彼らとマティアス・ヴァーグナーの3人によって2004年に設立された)。彼らにとっては、食べ物は社会的なつながりを作り出す機会になる。「果物はとても民主的な材料なのです」とバーンズは言う。48歳のバーンズと52歳のヤングは、各地を歩き回って、公共の場所に実った果物や、果物のなる木を地図に記し、それらを共有資源と見なしている。
彼らは同時に果樹を植えることもしている。その資金繰りのために、木々はたまたま生命をもった立体アート作品なのだと主張せねばならないこともある。他に、果物を探す遠征旅行の企画もしている。彼らの公園には行動規則がある。それは、「歩いて立ち入り、見知らぬ人には挨拶し、必要な分だけ取ってあとは残しておくこと」だとバーンズは言う。果物をプリントした壁紙や出版物、インスタレーションを含む彼らの作品においては、その美意識は市民社会と分かち難く結びついている。「公共スペースのほとんどは、他人への疑いの気持ちをもとにして設計されています」とヤングは言う、「人々を信頼しているからこそ、われわれはこの活動をしているのです」
食べ物は、そもそも生きる上での必需品であり、他者に食べ物を与えることは社会契約となる。41歳のアメリカのアーティスト、ダナ・シャーウッドは、2010年以来、手の込んだ段重ねのケーキを動物たちに与えるという手段でこのアイディアを追究している。彼女のアートの対象となるのは、ニューヨーク証券取引所を模して丹念に作った菓子を食い散らかすネズミたちや、フロリダの家の裏庭に設置したテーブルセットに深夜たまたまやってきたアライグマ、ポッサム(フクロネズミ)、ノラネコなど。彼らが食べている姿は、赤外線カメラによってビデオ録画される。
基本的なレシピは、種、ブドウの実、鶏の心臓といった昔からある動物たちの餌の材料を掲載した1970年代の料理本から得たものだ。だが、そういった食べ物より、砂糖がけの菓子の方が動物たちに好まれるようだと彼女は気づいた(「今までにケールを食べた動物はいないのです」と彼女は言う)。彼女の作品は、動物たちの予測不可能性によって成り立っている。「結果をコントロールしようとするのはやめました。その方がうまくいくとわかったから」と彼女はつけ加える。そして、動物たちの本能によっても成り立っている。彼らは見た目がきれいだからという理由ではなく、腹が減っているからそれを食べるのだ。
こうして飢えを満たすとともに、食べ物は本来の機能を取り戻す。シャーウッドの真夜中の饗宴の後には、ゴミになるものはひとつもない。朝になると、砂糖でベトベトになったテーブルクロスの上に、鳥たちが残りカスをついばみに降りてくるのだ。