BY KAORU SAITO, PHOTOGRAPHS BY TOSHIMASA OHARA
いろいろな意味で「エポックメイキングな年だった」と齋藤さんが語る2017年。本物のバラの花びらをローズォーターに浮かべたランコムの「アプソリュ プレシャルセル ローズ ローション」など、効果がドラマティックなまでに目に見える化粧品の“ビジュアル化”。まるで素肌のようにとことん薄いヌーディ膜を生むイヴ・サンローラン・ボーテの「アンクル ド ポー コンパクト」など、ファンデーション市場では新形状が続々誕生。肌の欠点を一掃し、光と影を駆使して骨格まで美しく整えていく“修正パレット”は女性の必携アイテムに。そして「まわりの誰かを幸せにし、元気づける」という新しいメッセージを打ち出したポーラの高級クリーム「Vリゾネイティッククリーム」は、化粧品の未来の扉を開いた。
齋藤 薫セレクトによるベスト・ビューティニュースとベストコスメ。最終回となる第3弾は……。
8. “異業種”が異業種ゆえの力を見せつけた
「塗る再生医療」
スキンケアも医療と同じく、未来を握るのは再生医療という段階に入ってきたが、そうなると強いのが、医療と関係が深い異業種コスメ。ロート製薬のような製薬系はもちろん、富士フイルムのように再生医療の細胞増殖シートなどを開発している先端企業も、再生医療研究でやはり群を抜く。ロート製薬は、美容医療に欠かせない“培養上清”を世界で初めて低分子化して化粧品に配合。脂肪幹細胞の働きを加えたことでも、コスメ界で明らかに頭ひとつリードした。一方の富士フイルムは、幹細胞は動き続けることで新しい細胞を生む仕組みであることを発見、幹細胞を動かす美容液をつくって、これまた大きな話題となった。
9. 新しい透明感の形を提言してくれた
クールでウォームな香り
すべての香りがロングセラー。“香水界の奇跡”ともいわれる、シャネルの香りづくり。いまだ「香りの女王」とされる最初の作品N°5から、ある種シャネル自身を女性像とし、絶対の普遍性を描いているからにほかならない。ココしかり、ココマドモアゼルもしかり。そして最新作ガブリエルシャネルは、アーティスト、ココシャネルを世に送り出した“素顔のシャネル”といってもいい位置づけ。だからまだ何色にも染まっていない白いキャンバスにさまざまな夢や希望や不安が自由に描かれた、そんな香りになっている。白い花だけを使った透明感の中に果てしない奥行きを宿す、クールでありながらウォームな美しい矛盾。そういう意味では、過去のどんな香りよりも、普遍的な永遠を描いた香りともいえるのかもしれない。
10. ポイントメイクはすでにアートの域!
美人顔づくりのひと技を競う
テクノロジーの進化は、カラーコスメにも“誰がどうつけようとまったく失敗なく、ひと塗りで完璧に仕上がる約束”をもたらした。でもだから、逆に遊びの部分が加わり、アートな表現力を身につけてきたのだ。ディオールのデュオリップのように、色も極端な濃淡、質感も違う2色をロール状に1本にした口紅は、はっとするほどドラマティックな立体唇ができあがる。また一方、アイブロウも相当に手が込んできて、一度に何本もの眉毛を再現するクシ状のリキッドが登場し、プロ技をただ塗るだけでかなえてくれる。もちろん単にメイクを遊ぶのではなく、あくまでも美人顔に仕上げていく技アリ。