TEXT AND PHOTOGRAPHS BY NAMI IKUMA
医療に基づいたヘアケアをラグジュアリーな雰囲気で
私の髪は結構くせが強い。エイジングによってますますうねりはますます加速中だが、現時点での髪は元の状態を忘れてしまうほどに艶やかでするんとまっすぐにまとまっている。というのも、髪の駆け込み寺「サロン・ド・リジュー」でトリートメントをしたからなのだが…驚くべきは、それが2週間以上も前の話ということだ。
SNSでの「#髪質改善」というハッシュタグの広まりとともに、ここ数年は次々に新たな薬剤や技術による進化したトリートメントメニューがお目見えしている。スカルプ&ヘアケア専門サロンとしては老舗ともいえる「サロン・ド・リジュー」における「髪質改善」は、美容院でのそれとは少し視点が違う。創業時から現在まで一貫してメディカルヘアケア、つまり医療の領域で、髪を生み出す頭皮とすでに生えている髪の両方を本質的に健康にする場所だからだ。
女性専用のヘア&スキャルプケアサロンの先駆け
「サロン・ド・リジュー」のオープンは2002年。カリスマ美容師ブームはひと段落していたものの、世の中はヘアデザインを楽しむことに夢中でケアは二の次というような風潮だった実感がある。もちろん頭皮ケアもヘッドスパという言葉も一般的ではなく、女性のための育毛や髪のケアを専門に行うサロンというのはほとんどなかった。
ここをスタートさせたのは当時40歳だったオーナーの永本羚映子さん。若い頃から人一倍エイジングケアの意識が高く、“どんなに肌が美しくてもスタイルがよくても髪がパサついていると印象は台無し”と考えていて、肌より髪のケアに注力していたという。そんな彼女が女性用の育毛と美髪のサロンを開業したのは、彼女がアメリカで毛穴のディープクレンジングをするバキュームマシンを見出したことに端を発する。
「髪は頭皮から生まれるものです。当時はスカルプとヘアの因果関係に関する十分な理論がなかったのですが、毛穴へのアプローチは絶対に不可欠だと確信していました。このマシンは発毛と美髪において信頼のおける確かなエビデンスがあり、これなら本物のケアを提供できると思ったんです」(永本さん)
今回はサロンの看板ともいえるこのマシンによるディープクレンジングと、現代の再生医療を取り入れた最新のスカルプケアメニューを紹介していく。
見つけてしまった…毛穴にそびえ立つ「角栓柱」
具体的なメニューを決める前にまずは私の頭皮の状態をチェック。実はここのところ慌ただしく、ストレス満載&ケア不足が続いていたため、予想通り皮脂と乾燥が入り乱れてかなり状態が悪い。ちょっとさぼるとすぐにこうなってしまうのが頭皮というものだ。皮脂分泌がさかんな生え際のところでは、「角栓柱」がそびえ立っている毛穴まで発見…よく頭皮の教科書で見るような写真を、まさか我が頭皮のものとして見るとは思わなかった…。こんなふうに出口が塞がれてしまえば、出てくる毛だって出てこられないというのもうなずける話である。
毛穴の詰まりだけでなく頭皮自体もキメが流れて乾燥しているのがよくわかる。さらによ〜く見ると、毛穴の周辺が酸化によって黄ばみがあるという指摘も! この現象は年配者に多いとのことである。ああ…見えないところで老化は進んでいるのですね…。
「大人の場合は大量の皮脂で詰まるのではなく、乾燥して水分が足りないために根元に硬くこびりついてしまうことが多いんです。そういう場合は毛穴以外の部分はカサついているんですよ」というのは店長の関口陽子さん。定期的なケアをすることでこれらは解消できるというのが救いだ。
今ある髪は美しく、未来の髪は強くたくましく
すすめられたのは「ネオ・メディカルヘアグロー」という、スタートしたばかりの最新メニュー。毛穴に詰まった汚れや皮脂を根こそぎ取り除くディープクレンジングの後、サロンオリジナルの発毛カクテルをエレクトロポレーションという方法で導入し、エイジング頭皮の発毛・育毛を促す、現代の再生医療に基づいたケアだ。
顧問医もいるこのサロンでは、安心感を伴いながら美容医療レベルの頭皮ケアが可能だ。今回紹介するのは頭皮のためのメニューだが、もし今生えている髪をケアしたいのなら、ここにオリジナルの極上トリートメントを追加することだってできる。巷では頭皮は皮膚科、髪は美容院の専門分野だが、こちらでは医療の知見に基づいて今の髪と未来の髪、両方をひっくるめた髪のケアができる。これ自体が稀少なことだろう。
美容医療レベルの育毛メニューを大公開!
それではさっそく「ネオ・メディカルヘアグロー」の内容を紹介する。所要時間2時間30分ほどの本格的なメニューだ。
① 溜まった汚れを浮かせるオゾンスチーム
オイルを頭皮になじませたら、オゾンスチームで10分間ほど浸透させてふやかし、汚れを浮き上がらせる。ナノ化させたオゾンはリラックス効果だけでなく、キューティクルを整える効果もある。
② 毛髪診断士による念入りなシャンプー
手洗いとブラシで15〜20分ほどかけて、念入りにシャンプー。毛穴にちらほら角栓詰まりがあった私は、酸化した皮脂を落として頭皮のコンディションを整えるオリジナルのスキャルプシャンプーを使用。この時点で頭がすっきり。頭皮のもやもやが払拭されたような気分。
③ 30分をかけ、マッサージサロン級のもみほぐし
一般的なヘアサロンではマッサージはシャンプーの後のサービスとして行われることが多いものだが、こちらでは血流をよくしてケアの効果を上げるため施術前に行われる。しかも約30分もかけた本格的なマッサージだ。肩甲骨、首、肩、そして硬くこわばった頭皮までやわらかくほぐしてくれるのだが、正直、これだけで整体のもみほぐしで行われるような丁寧さ。
「頭皮だけ動かしてもなかなか血流はよくなりません。薄毛でお悩みのかたは頭頂部の温度がほかの部分の皮膚温に比べて2℃ほど低いのですが、これこそ血流が悪い証拠。必要な栄養や酸素を毛細血管に運んでもらうためにも、この段階での丁寧なマッサージは絶対欠かせないプロセスなんです」(永本さん)さらにその後は頭皮をしっかりあたため、血流を促進。
④ ディープクレンジングと毛細血管活性化を同時に行う
ここにきて特許取得の医療用バキュームマシンが登場。カップの内側を真空状態にすることで単に酸化した皮脂を取り除くだけでなく、毛細血管を拡張して活性化することができる特殊なもの。だから発毛を目指して頭皮の奥深くまでアプローチできるのだ。装着すると頭部全体をきゅっと締めるような感覚があるが、その後はぽかぽかして血流がよくなったことが自分でもよくわかる。「特に産後の方や閉経前後は、女性ホルモンの影響を受けやすいフェイスラインの髪から細くなっていきます。その部分は集中してしっかりケアします」(関口さん)
マシンで吸引をした後は、表面に少し残った汚れをマイナスイオンで吸着させて取り除いていく。これによりこの後につける発毛カクテルをよりしっかりと浸透させられる。とにかく施術の徹底ぶりには舌を巻くほどだ。
⑤ エレクトロポレーションで育毛カクテルを導入
すっかりきれいになった頭皮に、エクソソーム(細胞活性因子)を高濃度に含むオリジナルの育毛剤カクテルを導入する。エレクトロポレーションによる導入は、頭皮にピリピリ感を感じることが多いようだが、私はほとんど刺激を感じなかった。
⑥ 炭酸泉で流して仕上げ
最後に炭酸ガスが1000ppm溶け込んだ高濃度炭酸泉で洗浄。軽くトリートメントも追加してもらう。
頭皮も髪もピカピカに生まれ変わりました!
施術終了後にはアフターチェックを行う。そそり立っていた角栓柱が消え、ピカピカになった私の頭皮がこちら。このように毛穴詰まりのないふっくらとした頭皮をキープするには、やはり定期的なお手入れが大切なのだと実感する。
そして施術後の髪。最後に軽くトリートメントもしてくれたことで、頭頂部分は驚くほどツヤが出た。髪自体が素に戻り、エネルギーチャージされたような感覚すらある。プライスは一見高額に感じるが、行っているケアは美容医療そのもの。髪は肌と同等以上の比率でその人の印象を決めるものであり、決して高すぎることはないと感じる。
髪のケアと併せ歯のメンテナンスまで可能に!
また、2024年1月より、サロン内に審美歯科が開設された。一見、なんの関連もなさそうに感じるが、実は歯と髪には驚くほど共通点が多い。失えばQOL的にも美容的観点からもかなり大きなダメージを背負うことになるというところ、そしてどちらも正しいケアをすることで従来よりずっと長く健やかに保つことが可能になることだ。
今後はヘアケアと同じような感覚で、歯のメンテナンス意識がますます高まるだろう。20年以上前から頭皮ケアの時代がくると確信していた永本さんにはそれが明確に見えるのだ。近い将来、治療するだけではない審美歯科や予防歯科がこの国の美容シーンを変えていくのが大いに楽しみである。
■今回体験したヘッドスパメニュー
ネオ・メディカルヘアグロー(シャンプー&ブロー込み) ¥39,600
サロン・ド・リジュー
住所:東京都港区南麻布5-15-9 バルビゾン70番館2階
時間:火~金10:00~21:00、土10:00~20:00、日・月・祝 10:00~19:00
定休日:第1月曜日・年末年始
TEL. 03-5793-3359 ※完全予約制
公式サイトはこちら
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