古いものと新しいもの、世界各国の趣向と英国らしさを情熱的に組み合わせ、部屋にありったけの色と模様を詰め込む――。英国を代表するインテリア・デザイナーたちは今、この国ならではの奇抜さを前人未踏のレベルまで極めようとしている

BY NANCY HASS, PORTRAIT BY DANIEL STIER, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 こうしたクレイジーなまでの多様性重視が、現代の英国デザイナーにはしっくりはまっているのである。それは、自国が培った文化が今また混乱にさらされていることの反映でもあるかもしれない。かつてないほどユーモアが効いた英国の現在のインテリアは、部屋というより、まるで発掘現場のようだ。

ケンジントン宮殿にあるケンブリッジ公ウィリアム王子夫妻の部屋のデザインを担当したデザイナーのベン・ペントレアスは、ブルームズベリーにある「ペントレアス&ホール」という家具とアクセサリーの店を営んでいる。顧客がハイゲートにもっているジョージ王朝風の小さな家の内装を手がけた彼は、ケリー社製の緑色のキッチン・キャビネットとオレンジ色のオーブン、それにウィリアム・モリスの伝統的な細かい模様入りの壁紙を組み合わせた。もうひとつの部屋はナス色に塗られ、黄緑と鮮やかなオレンジ色のイカット(インドネシアの絣布)を使ったランプシェードや、金色の額縁に納まったジョン・ファレイラブの1903年の絵画のレプリカと絶妙なコントラストを成している。とてもまねができないほど独特で、まぎれもなく英国的だとわかるスタイルだ。

画像: 6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。 1940年代末にドロシー・ドレーパーが手がけた「グリーンブリア・ホテル」の客室の花模様と鮮やかな色彩 COURTESY OF THE GREENBRIER

6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。
1940年代末にドロシー・ドレーパーが手がけた「グリーンブリア・ホテル」の客室の花模様と鮮やかな色彩
COURTESY OF THE GREENBRIER

「ファイブ・ハートフォード・ストリート」を作ったリファット・オズベックにとって、多様な文化を交ぜ合わせることは、現代のインターナショナリズムを提唱することだ。それはおそらく、彼ら英国のデザイナーたちが、実際には世界中から集まってきた才能だからだろう。自らを室内装飾家と呼ぶのに、上流階級の出身である必要はもうない。だが、英国のデザインは長いあいだ、大英帝国が植民地化したいろんな土地の文化の影響を受けてきた。

英国人はほかのヨーロッパ諸国よりも長く植民地を所有し、アジアやアフリカ地域からことごとく搾取し、その中にはナイジェリア、スリランカ、インドなどといった、特に豊かな装飾の歴史で知られる国々も含まれていた。1600年代に東インド会社が設立されるとすぐに、交易商たちは、キラキラと光り輝く顔料や木版印刷などの装飾用の技術、刺繡入りの絹や、金糸や銀糸が織り込まれた錦の布などを持ち帰るようになった。英国人はその他の植民地もくまなく探索し、掘り出しものを略奪した。

リタ・コーニグ

画像: リタ・コーニグがデザインしたカリフォルニア州ミル・ヴァレーの家。フェミニンな色彩と、壁に下げた画調がバラバラな絵画でサロン・スタイルを演出 ERIC PIASECKI/OTTO/AFLO.

リタ・コーニグがデザインしたカリフォルニア州ミル・ヴァレーの家。フェミニンな色彩と、壁に下げた画調がバラバラな絵画でサロン・スタイルを演出
ERIC PIASECKI/OTTO/AFLO.

「ファイブ・ハートフォード・ストリート」の建物内に2012年にオープンしたバー「ルールーズのマダガスカル・ルーム」では、キリンの剝製が来客を迎え、その影が黄色とオレンジの縞模様を描くアールデコ風の壁に映し出される。また、改装されたディスコ&サパークラブ「アナベルズ」の地下室はアニマル柄で埋め尽くされ、ジャングルバーと呼ばれている。だが、52歳になるブルドゥニズキは、自分のデザインをジョン・ミルトン著の『失楽園』(1667年)と比較するのを好む。「過去を尊び、他国の文化から美しいものを取り込みながらも、われわれは敏感でなければならない」と彼は言う。

フランスの室内装飾家フランシス・スパールが1959年に著し、後世に大きな影響を与えた装飾についての書物『Le Style Anglais(英国のスタイル)1750-1850』は、現在活躍しているデザイナーたちにとってバイブル的な一冊だ。そこにはさまざまな色や形、模様が描かれ、モロッコの金属のすかし細工や、東南アジアの特徴的な緑や青色も紹介されている。今となっては、かつて「はるか彼方の土地」と呼ばれた場所の文化に根ざすものと、純粋に英国ゆかりのものとを判別することは不可能だろう。英国のスタイルと、大英帝国が征服した国の文化はあまりにも複雑に絡み合ってしまっているからだ。

画像: 6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。 ピーター・ヒンウッドのロンドンの自宅。アンティーク・タイルのコレクションとタンジールの市場で買ったアームチェア MIGUEL FLORES-VIANNA, “HAUTE BOHEMIANS,” VENDOME PRESS

6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。
ピーター・ヒンウッドのロンドンの自宅。アンティーク・タイルのコレクションとタンジールの市場で買ったアームチェア
MIGUEL FLORES-VIANNA, “HAUTE BOHEMIANS,” VENDOME PRESS

 

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