古いものと新しいもの、世界各国の趣向と英国らしさを情熱的に組み合わせ、部屋にありったけの色と模様を詰め込む――。英国を代表するインテリア・デザイナーたちは今、この国ならではの奇抜さを前人未踏のレベルまで極めようとしている

BY NANCY HASS, PORTRAIT BY DANIEL STIER, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 だが、制約と闘ううえでは、色彩は最初の一斉射撃にすぎない。確かな技術によって重ねられた模様――ポピーの花咲く草原の横に大胆なストライプがあり、チェックと絣のあいだには情熱あふれる壁画が描かれる――が、この新たな英国のデザイナー・グループにとっての共通言語だ。英国人はこれまで、代表的な模様と抽象的な模様とを決して区別してこなかった。植物や動物の模様を愛しながら、大胆な柄も称賛してきたのである。

たとえば室内装飾家のデイビッド・ヒックスが、彼ならではの濃い色の幾何学模様で1960年代から70年代のロンドンのインテリアを定義づけたように。だが今、そうした組み合わせはさらに究極の形にまで進化したように見える。たとえばオズベックは、「ファイブ・ハートフォード・ストリート」の内装に50種類近くの布地を使っている。すべての壁をキャンバスにみなそうとする衝動は、結果、壁画の復活をもたらしたのだ。また、ルーク・エドワード・ホールは南仏のサント・ソスピール荘を訪れたとき、まるで己が変身してしまうような天啓に打たれた。それは20世紀半ばに活躍したフランス・ファッション社交界の重鎮、フランシーヌ・ヴェズヴェレールが所有していたサン=ジャン=カップ=フェラにある邸宅だ。

画像: 6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。 トルコのブルサにある14世紀末のグランド・モスク LAURA DI BIASE / ALAMY STOCK PHOTO

6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。
トルコのブルサにある14世紀末のグランド・モスク
LAURA DI BIASE / ALAMY STOCK PHOTO

1950年、一週間ほど滞在しようとこの家を訪れたジャン・コクトーは、その後10年近くそこに住み着いてしまった。コクトーは壁に蜘蛛のような線画をたくさん描き、それを「タトゥー」と呼んだ。ギリシャ神話からインスピレーションを得て、牛乳を混ぜた自家製の顔料で描いた絵だ。この邸宅にあるディオニュソスとアポロの巨大な壁画に刺激を受けて、ホールは昨年、イタリアのポジターノにあるホテル「レ・シレヌーセ」のための食器を作り、2016年のバーバリーのキャンペーン広告のための幻想的な絵も描いた。35歳のフラン・ヒックマンは、チェスクラブのラウンジの壁に熱帯の花々を大胆に描いた。ネイビーブルーの背景の中、生い茂る葉を縫うように蛇と昆虫をあしらった絵だ。そしてブルドゥニズキが手がけた「アナベルズ」のローズ・ルームには、キジが大理石の噴水の中で跳びはねている風景がロマン主義風に描かれている。

 色と模様は、部屋をどこからどう見ても英国らしく感じさせる要素のひとつではある。だが、実際に新進気鋭のデザイナーたちを旬な存在に押し上げたのは、異質な家具をうまく組み合わせて対比させるその手法かもしれない。現代の正統的マキシマリストであるためには、ある「モノ」が必要なのだ。だが単に高級店で買えばいいというものではない。もの珍しさや時代性とも関係なく、持ち主が愛着を覚えるようなものでなくてはならない。「この国では、アメリカ人がやるようなやり方はまずしません」とリタ・コーニグは言う。

「私たちは、室内装飾家に電話して、今持っているものをすべて捨ててしまって、ピンタレストで何かを見つけて、一晩でガラッとインテリアを換えてしまうようなことはしない。祖母からもらったような古いものもとっておき、それを素敵に活用するんです」

画像: 6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。 アーティストのピエール・ル=タンが集めた日本の絹織物とルネサンス期のイタリアの布 MIGUEL FLORES-VIANNA, “HAUTE BOHEMIANS,” VENDOME PRESS

6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。
アーティストのピエール・ル=タンが集めた日本の絹織物とルネサンス期のイタリアの布
MIGUEL FLORES-VIANNA, “HAUTE BOHEMIANS,” VENDOME PRESS

 願わくばいろんな時代の歴史を秘めていてほしいそういう品物が、力強く、時代を超えたかたちでアレンジされる。伝統的で威厳を感じさせるものもあるだろうし、アンティークの良品もあるだろうが、必要以上にかしこまったものや、大事すぎて使えないようなものではないはずだ。そして理想を言えば、19世紀末から20世紀初頭のものがたくさんあるといい。ホールが言うように、モダニズムが最高潮だったのは、美術的な柔軟性と流用性が分野の垣根を越えて存在していた頃だ。コクトーとビートンのように博覧強記な者たちが、言葉とイメージ、アートとクラフトという領域を軽々と行き来していた輝かしい時代には、人間の本質が鏡に映し出されるように明らかになるのだ。

 もし今活躍中のロンドンのデザイナーたちに精神的なホームがあるとすれば、それは「チャールストン」だ。かつて画家のヴァネッサ・ベルとダンカン・グラントのサセックスの自宅だった建物で、自分たちを“ブルームズベリー・グループ”と呼んだ20世紀の作家や知識人たちは、しばしば静養のためにここに集まった。少なくとも17世紀までさかのぼることのできる歴史あるその農家の壁面は、ほぼすべて、滞在したり訪れたりしたアーティストたちの作品で色鮮やかに飾られている。それらの作品の明るい色彩や細かな模様、珍しい布地は、今もそのまま残っている。

画像: 6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。 ダンカン・グラントが絵を描き、ヴァネッサ・ベルがタイルをデザインした「チャールストン」の暖炉 GAVIN KINGCOME

6人のデザイナーの着想源となったインテリアから。
ダンカン・グラントが絵を描き、ヴァネッサ・ベルがタイルをデザインした「チャールストン」の暖炉
GAVIN KINGCOME

手作りされた地中海風の唐草文様、中国風のもの、古めかしい英国のキャビネット。そういった品々が、「オメガ・ワークショップ」(英国人の美術批評家で画家のロジャー・フライが創設したスタジオ)で作られた、印象派後期の絵画から影響を受けた陶器や、新古典主義デザインの本棚にぎっしり詰まった初版本の黄色く変色した縁と不思議な調和を醸し出している。そこには、同じようなテイストのものや、予定調和のもので揃えようなどという試みはいっさいない。どの壁にも作品が飾られており、綴られるべき物語を待っている空白はどこにもない。

グラントの愛人でもあった小説家のデイヴィッド・ガーネットがかつて「チャールストン」について語った言葉は、過去を慈しみながらも未来に希望を見いだす現代の英国のデザイナーたちの思いにそのままあてはまる。古く頑丈な骨組みをもったこの家は「装飾され修理を施されて、元の古びた家とは見違えるほどだった」と、ガーネットは1956年に出版した自伝で記している。「それはまるで、神を信じることによって救われた者の体が、天国で美しくよみがえるという言い伝えのようだった」と。

 

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