BY EMI ARITA
幼い頃に見た旅番組に憧れて、20代の頃から世界中を巡り、訪れた国は50カ国以上。20代後半から3年間はパリ暮らしも経験した古牧さんの部屋には、趣あるヴィンテージの家具、センスのいい器、おしゃれなファブリックなど、さまざまな国のテイストが混然一体となって素敵なムードを醸している 。
その部屋をぐるりと眺めていると、たくさんの“動物”たちの存在に気づく。壁の絵画やキャビネットの上のオブジェと、動物をモチーフにしたたくさんの作品が飾られており、楽しげに部屋を彩っている。
中でもまず目を惹くのが、リビングのキャビネットの上に飾られた動物たちのオブジェ。ペンギンやライオン、ひつじと、リサ・ラーソンの作品を中心に、動物たちが並べられており、まるでおとぎ話のワンシーンを眺めているかのよう。
「大きなトナカイは友人が誕生日に贈ってくれたものですが、あとはほとんどが自分で購入したものです。どれもみんな、お店で出会った時に“うちに来る?”って誘ったら、来てくれた動物たちです」
どの作品も出会った瞬間のインスピレーションで迎え入れていると言うが、「鳥が好きで、よく見ると鳥モチーフのものがいちばん多いかも」と古牧さん。
「昔からアンデルセンとかグリム童話が好きで、特に飛び出す絵本が大好き。今も洋書店で絵本を買うこともしばしば。幻想的な森やそこで出会う動物たち…そういうファンタジーな世界観が好きなので、絵本や動物モチーフに惹かれるのかもしれないですね」
「ある意味、少女趣味なのかも(笑)」と笑う古牧さん。でもファンシーなものでは好みではないそうで「オブジェに関しては、どちらかというと民藝的なものが好き。リアルでもなく、かわいすぎもせず、牧歌的なものに惹かれます」
鳥の次に好きだとうロバモチーフのオブジェには、旅の思い出も詰まっているという。「壁掛けのロバは、以前スペインで出会ったものなんですが、田舎町のため、シエスタが長く購入することができなくて。そしたら帰国後、青山の「GRANPIE(グランピエ)」で再び出会うことができて購入しました。あと、荷物を背負った小さなドンキーもお気に入り。この“子”を見ると、いつもモロッコで出会った白馬を思い出させてくれるんです」
黒いロバや蜂は、たくさんの色が散りばめられた古牧さんの部屋で、凛と佇み存在感を放つ。「黒い服もあまり好きではないし、黒で統一されたようなモダンな空間も好みではないのですが、ポイントで黒を使うのは結構好き。60年代風のアイアンとラタンの組み合わせも好きなので、ラタンのスツールとアイアンのオブジェを組み合わせたりしてコーディネートを楽しんでいます」
どの動物のオブジェも職人の手仕事を感じさせるような温かみがある作品ばかりだが、何より、今にも動き出しそうな生き生きとした表情をしているのが印象的だ。
「ぬいぐるみが好きな方もいると思うんですが、私は子どもの頃からぬいぐるみにはシンパシーをあまり感じなくて。ぬいぐるみを抱きしめてぎゅーっとするというよりは、空間を楽しげに彩る存在として、一緒にいてくれるのが心地いいんです。みんなが私の暮らしの“おとも”です」
古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
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