ルールやスタイルに捉われず、ただ好きなものを愛し、花や緑を愛でる。“自分らしさ”を貫いた素敵な生き方が息づくスタイリスト古牧ゆかりさんの部屋。古牧さんの部屋を数回に分けてレポートし、自分のいる場所を心地よい空気で満たすコツを伺う。第8回は、部屋を彩る“動物”たちにフォーカス

BY EMI ARITA

 幼い頃に見た旅番組に憧れて、20代の頃から世界中を巡り、訪れた国は50カ国以上。20代後半から3年間はパリ暮らしも経験した古牧さんの部屋には、趣あるヴィンテージの家具、センスのいい器、おしゃれなファブリックなど、さまざまな国のテイストが混然一体となって素敵なムードを醸している 。
 その部屋をぐるりと眺めていると、たくさんの“動物”たちの存在に気づく。壁の絵画やキャビネットの上のオブジェと、動物をモチーフにしたたくさんの作品が飾られており、楽しげに部屋を彩っている。

画像: 今にも動き出しそうな“動物”たち

今にも動き出しそうな“動物”たち

 中でもまず目を惹くのが、リビングのキャビネットの上に飾られた動物たちのオブジェ。ペンギンやライオン、ひつじと、リサ・ラーソンの作品を中心に、動物たちが並べられており、まるでおとぎ話のワンシーンを眺めているかのよう。
「大きなトナカイは友人が誕生日に贈ってくれたものですが、あとはほとんどが自分で購入したものです。どれもみんな、お店で出会った時に“うちに来る?”って誘ったら、来てくれた動物たちです」

 どの作品も出会った瞬間のインスピレーションで迎え入れていると言うが、「鳥が好きで、よく見ると鳥モチーフのものがいちばん多いかも」と古牧さん。

画像: ギャラリーのようにドローイングや写真が飾られた壁にも、アラスカにオーロラを観に行った際に購入したという鹿の角や、動物モチーフの絵画が並び、たくさんの動物たちの姿が。右上の額の中はジョルジュ・ブラックの貴重なリトグラフ。シロクマの後ろ姿が愛らしい中央下の作品はデンマークの蚤の市で手に入れたものだそう

ギャラリーのようにドローイングや写真が飾られた壁にも、アラスカにオーロラを観に行った際に購入したという鹿の角や、動物モチーフの絵画が並び、たくさんの動物たちの姿が。右上の額の中はジョルジュ・ブラックの貴重なリトグラフ。シロクマの後ろ姿が愛らしい中央下の作品はデンマークの蚤の市で手に入れたものだそう

画像: 壁のドローイング、鋳物のハトや木彫りのフクロウと、鳥たちがあちこちに

壁のドローイング、鋳物のハトや木彫りのフクロウと、鳥たちがあちこちに

画像: KEITA MARUYAMAの陶器市で購入したという、土偶作家の三浦宏基さんの作品。一輪挿しの花器にもなる。愛嬌のある表情もお気に入り

KEITA MARUYAMAの陶器市で購入したという、土偶作家の三浦宏基さんの作品。一輪挿しの花器にもなる。愛嬌のある表情もお気に入り

「昔からアンデルセンとかグリム童話が好きで、特に飛び出す絵本が大好き。今も洋書店で絵本を買うこともしばしば。幻想的な森やそこで出会う動物たち…そういうファンタジーな世界観が好きなので、絵本や動物モチーフに惹かれるのかもしれないですね」

画像: 『不思議の国アリス』や『星の王子様』ほか洋書の絵本をたくさん集めているという古牧さん。特に好きなのがこちらのようなポップアップ絵本だそう

『不思議の国アリス』や『星の王子様』ほか洋書の絵本をたくさん集めているという古牧さん。特に好きなのがこちらのようなポップアップ絵本だそう

「ある意味、少女趣味なのかも(笑)」と笑う古牧さん。でもファンシーなものでは好みではないそうで「オブジェに関しては、どちらかというと民藝的なものが好き。リアルでもなく、かわいすぎもせず、牧歌的なものに惹かれます」

 鳥の次に好きだとうロバモチーフのオブジェには、旅の思い出も詰まっているという。「壁掛けのロバは、以前スペインで出会ったものなんですが、田舎町のため、シエスタが長く購入することができなくて。そしたら帰国後、青山の「GRANPIE(グランピエ)」で再び出会うことができて購入しました。あと、荷物を背負った小さなドンキーもお気に入り。この“子”を見ると、いつもモロッコで出会った白馬を思い出させてくれるんです」

画像: 現地で出会い、日本で再会できたロバの壁掛け。手前のモビールは「CIBONE(シボネ)で購入したモビール。「本当はゴールドで、酸化して黒くなってしまったんですけど、それも素敵で、あえてそのままにして楽しんでいます」(古牧さん)

現地で出会い、日本で再会できたロバの壁掛け。手前のモビールは「CIBONE(シボネ)で購入したモビール。「本当はゴールドで、酸化して黒くなってしまったんですけど、それも素敵で、あえてそのままにして楽しんでいます」(古牧さん)

画像: 『ミロ展』で購入したというスペインのドンキーのオブジェ

『ミロ展』で購入したというスペインのドンキーのオブジェ

 黒いロバや蜂は、たくさんの色が散りばめられた古牧さんの部屋で、凛と佇み存在感を放つ。「黒い服もあまり好きではないし、黒で統一されたようなモダンな空間も好みではないのですが、ポイントで黒を使うのは結構好き。60年代風のアイアンとラタンの組み合わせも好きなので、ラタンのスツールとアイアンのオブジェを組み合わせたりしてコーディネートを楽しんでいます」

画像: 以前青山にあったインテリアショップ「QUICO(キコ)」で購入した黒いロバのオブジェ。手のひらに乗るような小ぶりなサイズも愛らしい

以前青山にあったインテリアショップ「QUICO(キコ)」で購入した黒いロバのオブジェ。手のひらに乗るような小ぶりなサイズも愛らしい

画像: 家具屋の倉庫に眠っていたのを譲ってもらったいうアイアンの蜂のオブジェ。もとは北欧のハチミツ屋の看板だったそう。蜂の後ろにあるのは、デンマークの作家、アクセル・サルトのリトグラフ。森の中を走る馬の後ろ姿が描かれている

家具屋の倉庫に眠っていたのを譲ってもらったいうアイアンの蜂のオブジェ。もとは北欧のハチミツ屋の看板だったそう。蜂の後ろにあるのは、デンマークの作家、アクセル・サルトのリトグラフ。森の中を走る馬の後ろ姿が描かれている

画像: パリ時代に蚤の市で購入したバンビのオブジェは、花瓶を飾れるだけでなく、手前はブックスタンドになっている。「バンビも大好きで、一時、たくさんバンビのアイテムも集めていました」(古牧さん)

パリ時代に蚤の市で購入したバンビのオブジェは、花瓶を飾れるだけでなく、手前はブックスタンドになっている。「バンビも大好きで、一時、たくさんバンビのアイテムも集めていました」(古牧さん)

 どの動物のオブジェも職人の手仕事を感じさせるような温かみがある作品ばかりだが、何より、今にも動き出しそうな生き生きとした表情をしているのが印象的だ。

画像: 最近迎え入れたカラスくん。つぶらな瞳に愛嬌ある表情と、思わず話しかけてなってしまう PHOTOGRAPHS : COURTESY OF YUKARI KOMAKI

最近迎え入れたカラスくん。つぶらな瞳に愛嬌ある表情と、思わず話しかけてなってしまう

PHOTOGRAPHS : COURTESY OF YUKARI KOMAKI

「ぬいぐるみが好きな方もいると思うんですが、私は子どもの頃からぬいぐるみにはシンパシーをあまり感じなくて。ぬいぐるみを抱きしめてぎゅーっとするというよりは、空間を楽しげに彩る存在として、一緒にいてくれるのが心地いいんです。みんなが私の暮らしの“おとも”です」

古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
公式サイトはこちら

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