BY YUKI SATO
近年は世界の名だたるバレエ・コンクールでもコンスタントに日本人ダンサーが入賞するようになったが、伝説の名花マーゴ・フォンティンをはじめとする数々のスターを生んだ英国ロイヤル・バレエ団で、ダンサーたちの頂点に立つプリンシパルの座をはるのは並大抵のことではない。6月の同バレエ団の来日公演で、そのほとばしる才能を披露する高田 茜に話を聞いた。
―― バレエ・ダンサーにとって、国や舞台が違っても踊るということに違いはないと思いますが、今回の来日公演、とくに『ドン・キホーテ』で主役のキトリを踊ることには、どんな思いを抱いていますか?
どの国で踊る時も、もちろん毎回お客様に楽しんでいただけるよう努めていますが、今回日本で初めて全幕ものの作品を踊れることは、私にとってとても特別なことです。今回上演する『ドン・キホーテ』は、元英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、カルロス・アコスタの振付ですが、全幕通して感じられるのはスペインの空気です。まず幕が開いた瞬間に目に入るセット。そして多彩でヴィヴィッドな衣装を纏ったダンサー達が、とても個性的なキャラクターをコミカルに、そして情熱的に、時には声を発しながら、ロイヤルらしい演劇性を取り入れつつ踊ります。最後まで純粋に楽しんでいただける作品になっていますので、日本のお客様にもそんな楽しい時間を過ごしていただけるよう頑張ります。
―― バレエを始めた少女時代と、現在と。この作品に対する思いは変わりましたか?
実は生まれて初めて踊ったソロが、3幕のキトリのバリエーションでした。その時はストーリーや役の感じが分からないままに踊るのが嫌だったので、たくさんのバレエ団の『ドン・キホーテ』をビデオで観ました。その後、初めて全幕もののバレエを生で観たのも『ドン・キホーテ』でした。自分がそれを踊るようになると、テクニックにこだわり過ぎてしまう事もありますが、作品としての『ドン・キホーテ』は本当にシンプルで、純粋にバレエのダイナミックな踊りやコミカルなストーリーを楽しめる。だからこそ、子供の時に観たあのワクワクした感じを忘れずに踊るようにしています。
―― 相手役のバジルを踊るスティーヴン・マックレーは、『不思議の国のアリス』ではマッド・ハッター役でタップを踏むなど多才な人ですが、高田さんはバレエ以外で得意なことはありますか?
特に得意としている事はありませんが、ロンドンの美味しいレストランをよく知っている方だと思います。