歌舞伎ワールドへようこそ。劇場の扉、時空の扉、そして心の扉を開いて、絢爛たる異世界へと誘う連載。第十二回は、5カ月ぶりに幕が開いた歌舞伎座に2カ月連続出演中の、松本幸四郎さん

BY MARI SHIMIZU, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 再開した歌舞伎座は四部制の公演となり、それぞれの部ごとに出演者もスタッフもすべて入れ替え制とし、その都度消毒を行っている。楽屋内の往来も制限され共演者とは舞台で会うのみだという。「前の部の人がすべて出てからでないと楽屋には入れませんし、大道具さんが仕事を終えたら小道具さんが所定の場所に必要なものを置き、小道具さんがいなくなったら役者が入るという徹底ぶりです」。売店は必要最小限の水やお茶の販売に限られ、場内の換気など専門家の指導に基づく感染防止対策は観客にとってはかなりの安心感がある。

画像: 『色彩間苅豆 かさね』与右衛門=松本幸四郎(令和元年7月巡業) © SHOCHIKU

『色彩間苅豆 かさね』与右衛門=松本幸四郎(令和元年7月巡業)
© SHOCHIKU

 そんな体制のもと幸四郎さんは引き続き9月も歌舞伎座に出演する。第二部で上演される『色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)かさね』だ。昨年の全国巡業公演で好評を博した市川猿之助さんとの共演による舞踊劇である。幸四郎さんが演じるのは悪の魅力たっぷりの与右衛門という浪人、猿之助さん演じる腰元のかさねとは恋人関係にある。

「恋人とはいっても破綻したカップルです。かさねのことがいやでいやでたまらない。いろいろなやり方がありますが、自分はそういう解釈です。清元の名曲が素晴らしい舞踊作品である一方、人間らしい人間ドラマでもある。傑作を傑作としてお見せする、ということを第一につとめます」。与右衛門が過去に犯した罪が怪奇味を帯びた現実となってかさねの身に降りかかる展開で、ある出来事をきっかけに破綻したカップルの色模様は凄惨な悲劇へと向かってゆく。

画像1: 「歌舞伎への扉」Vol.12
400年、生き抜いた力を信じてーー
‟ニューノーマル時代”に
松本幸四郎が届けたい歌舞伎とは

 8月に続き、9月も公演が実現したことに喜び感謝しつつ、幸四郎さんが目指しているのは完全再開。「食堂や売店、筋書、イヤホンガイド。劇場で過ごす日常が戻ってこそ真の再開です。また歌舞伎座の周辺にはいくつものさまざまな店があり、観劇前後に過ごす時間も含めて歌舞伎を楽しんでもらえる日が再びやって来ることを願っています。400年を超える歌舞伎の歴史を振り返れば危機は何度もありました。でもここまで生き抜いて来た実績があります。それを信じてできることをひとつひとつ実現させていきたいと思います」

歌舞伎座『九月大歌舞伎』
第一部『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)工藤館の場』
第二部『色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)かさね』
第三部 秀山ゆかりの狂言『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)引窓』
第四部 映像×舞踊特別公演『口上』『鷺娘』

会期:2020年9月1日(火)~26日(土)
休演日:9月7日(月)、17日(木)
会場:歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
料金:1等席¥8,000、2等席¥5,000、3階席¥3,000
※ 1・2階桟敷席および、4階幕見席の販売はなし
公式サイト
<チケットの購入は下記から>
電話: 0570-000-489(チケットホン松竹)
チケットWEB松竹

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