Netflixで配信中のドラマ『ザ・クラウン』で、チャールズ皇太子の役を演じた俳優のジョシュ・オコナー。リベラル左派を自称する彼にとっては、それまでとりたてて興味のなかった役ではあったが、オコナーはそれを見事に演じきった

BY KATHRYN SHATTUCK, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 ジョシュ・オコナーの威厳ある耳の形については、多くの人がさまざまなことを言っている。彼が『ザ・クラウン』で演じているチャールズ皇太子の耳とそっくりに、横に突き出ているからだ。
 だがその耳は、次なる王位継承者に似せるための特殊メイクではない。実際、オコナーが言うように、彼の耳は元からそういう形をしているのだ。

画像: 重圧に打ちのめされた男としてチャールズ皇太子を演じたジョシュ・オコナー PHOTOGRAPH BY CHARLOTTE HADDEN FOR THE NEW YORK TIMES

重圧に打ちのめされた男としてチャールズ皇太子を演じたジョシュ・オコナー
PHOTOGRAPH BY CHARLOTTE HADDEN FOR THE NEW YORK TIMES

 オコナーは、皇太子の心理状態を、徐々に顕著になっていく猫背の姿勢で表現した。シーズン3で、ケンブリッジに通う大学生時代のチャールズの役で初登場したときはいい姿勢だったが、ウィンザー家を継ぐ者としての重圧がのしかかるにつれ、彼の首は少しずつうなだれ始める。母親であるエリザベス二世(演じるのはオリヴィア・コールマン)が、プリンス・オブ・ウェールズの称号の叙任式で息子の頭に冠を授けるシーンに到っては、視聴者は彼がその重みに耐えられるだろうかと心配になるほどだ。「肩に重圧がのしかかり、気持ちが沈んでいくにつれて、彼の首はどんどんうなだれていく」とオコナーは語る。「最後には、哀れで打ちのめされた人間のようになるんだ」

画像: 『ザ・クラウン』シーズン4 予告編 - Netflix Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』シーズン1~4独占配信中 www.youtube.com

『ザ・クラウン』シーズン4 予告編 - Netflix
Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』シーズン1~4独占配信中

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 現在Netflixで配信中の『ザ・クラウン』シーズン4になると、その猫背はますますひどくなり、チャールズはいっそう共感しがたい存在として描かれている。注目をさらったダイアナ皇太子妃(エマ・コリン)との結婚に縛りつけられ、不機嫌な顔で泣き言ばかり口にする。一方でカミラ・パーカー・ボウルズ(エメラルド・フェネル)への恋慕は特に秘められることもなく、彼女への愛情が失われることはない(そしてカミラは、現実の世界で2005年にそうなったように、今後のストーリー展開の中でチャールズと結婚することになるのだろう)。

 現在30歳のオコナーが出演するのは、このシーズン4が最後になる。彼にとってチャールズ役は、今まで一度も演じてみたいと思ったことのない役だった。リベラル左派を自認する彼は、最初にチャールズの出てくるシーンの台本を読んでみるよう勧められたとき、それを拒否した。「自分には何もできることはないと思ったんだ」と、ロンドンからのオンラインインタビューで彼は語った。「僕は共和主義者だ―― ロイヤル・ファミリーには興味がないのでね」

画像: オコナーとオリヴィア・コールマンは、彼ら2人が共演するシーンはすべて、同じ悲劇的テーマの繰り返しだとジョークを言い合った。Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』シーズン1~4独占配信中 COURTESY OF NETFLIX

オコナーとオリヴィア・コールマンは、彼ら2人が共演するシーンはすべて、同じ悲劇的テーマの繰り返しだとジョークを言い合った。Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』シーズン1~4独占配信中
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 しかし彼は最終的に台本を読んでみることにした。そして製作者兼脚本家のピーター・モーガンは、彼にあるシーンの台本を見せた。そこでチャールズは、ソール・ベローの小説『宙ぶらりんの男』の主人公と自らを比較する。その主人公は、戦争に行けば自分の人生に意味が生まれると感じていて、召集がかかるのを心待ちにしている。「そこで彼はこう言うんだ。『つまり僕は、自分の人生に意味を与えるために、母が死ぬのを待っているんだ』」とオコナー。「そのセリフを読んだときにこう思ったんだ。『よし、これはやりがいのある役だぞ』とね」

 最新シーズンで、皇太子は自分の置かれた状況にますます激昂するようになる。押しつけられた不幸な結婚生活にも、王家における自分のちっぽけな存在感にも、いら立っている姿が描かれる。「われわれは無視される存在、声なき存在としてのチャールズを描き出した」とオコナーは言う。「そこに美しさがある。彼は自分のことを誰にもわかってもらえないと感じていて、必死にもがいているんだ」

画像: 最新シーズンでチャールズ皇太子は、不幸な結婚生活にも自分のちっぽけな存在感にも、ますます激昂するようになる Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』シーズン1~4独占配信中 COURTESY OF NETFLIX

最新シーズンでチャールズ皇太子は、不幸な結婚生活にも自分のちっぽけな存在感にも、ますます激昂するようになる
Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』シーズン1~4独占配信中
COURTESY OF NETFLIX

 これはチャールズの思い過ごしではない。彼と母親が言い争いになったとき、女王は冷淡に彼に告げる。誰ひとりチャールズの言うことに耳を傾けようとする者はいない、と。そう、誰ひとりいないのだ。

 オコナーと、エリザベス二世を演じるコールマンにはお気に入りジョークがある。彼らふたりが共演するシーンは、すべて同じ悲劇的なテーマをちょっとづつ変えたものであるというのだ。「チャールズがやって来て言う。『ママ、話があるんだ』。そうすると女王は言う。『いいえ』。そして、チャールズは去っていくんだ」と彼は説明した。これが何度も繰り返されるというわけだ。

 エリザベス二世役のコールマンは言う。「私の役柄はあくまで強くあらねばならないのに、思わず彼を抱きしめてあげたくなりました」。彼らはメソッド・アクター(註:役柄に深く入り込み、その感情を追体験することで、自然な演技をするという演技法を採用する役者のこと)ではないのだ。「カットがかかった瞬間、『お茶にしない? そこの作業台にビスケットがあるから!』っていう感じ。深刻さを引きずらず、むしろふざけて笑い合うようにしていましたね」

「彼は、共演者としてはもっとも素晴らしい俳優のひとりです」と彼女は加える。「個人的には、偉大な役者といってもいいような存在だと思いますね」

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