BY JUN ISHIDA
エルメスのレディス部門アーティスティック・ディレクターを務めるバリ・バレ。シルクからプレタポルテ、ジュエリー、レザーグッズとレディスのコレクション全体をディレクションする女性だ。レディスプレタポルテのデザインを行うナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキーとともに、7月11日から国立新美術館で開催される展覧会を監修する彼女に、その見どころとテーマとなるエルメスの女性像について聞いた。
ーー 展覧会「彼女と。」の詳細は秘密につつまれていますが、どういったものになるのでしょう?
さまざまな試みの中で、エルメス的女性像を探るというものです。女性像をテーマとしたイベントはこれまで上海、北京、パリ、ニューヨークで行い、東京が5都市めとなります。ちょうど2年ほど前に北京で開催した「View from her」というイベントでは、レディスプレタポルテコレクションを通して、エルメスの女性像を表現しました。エルメスのプレタポルテを身につけた「私」は何が好きで、どんなアクセサリーを身につけたいか…などを示したのです。北京が「私」の視点での表現とすると、東京では女性を見る視点が変わって、ほかの人が「彼女」、すなわちエルメス的女性像を見て、その人物について語ることになります。今回、他者の視点から「彼女」について語るにあたり、私たちはたいへんすばらしい出会いに恵まれました。「彼女と。」展は、パリ在住の30代の女性であるロール・フラマリオンとつくりあげることになったのです。彼女はギャラリーでキュレーションをしたり、映画を撮ったり、作家、脚本家であり収集家でもあるという才能豊かなクリエイターです。彼女の視点で自由にエルメスの女性像を描いてもらうことは、じつにエキサイティングなことでした。
ーー “映画的設定の、観客参加型の展覧会”ということですが?
観客が映画の撮影スタジオの中に入り込んだような演出を考えています。会場では、彼女の人生に関するさまざまな場所や時間が設定され、撮影現場と同じように監督やクルー、俳優がいて、楽屋や衣装部屋もあります。ストーリーは、ひとりの「作家」が映画を見て、出演者である「彼女」にひと目惚れすることから始まります。彼女に会いたいと思い、どんな女性なのかを探る中、いろいろな人物が彼女について語るのを聞き、彼女にまつわる映像にも触れてゆきます。フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』や、ラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィルジ』を想像してもらえればいいかもしれません。
ーー展覧会で探求されるエルメス的女性とはどんな人物だと思いますか?
いろいろな面を備えた人物ですね。洗練されていて、アウトドアも楽しむ自由な女性。自由というのが一番大事かもしれません。自立していて、自分で物事を決めて行動できる女性です。
ーー エルメスでのキャリアはカレから始まり、今もディレクションをされていますが、エルメスにおけるシルクスカーフとはどのような存在でしょう?
エルメス的女性像と同じく、極めて自由な存在です。「カレ」とは正方形を意味しますが、白い四角の中の表現は自由です。エルメスにおけるファンタジーを表現するものといってもいいかもしれません。黄色とオレンジのドレスは着るのにとまどうかもしれないけれど、カレなら気軽に身につけられるでしょう?