BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY KENSHU SHINTSUBO, STYLED BY NAOKO SHIINA, HAIR BY KIYOKO ODO(kiki), MAKEUP BY UDA(mekashi project), MODEL BY KIKO ARAI(Donna)
空間を覆いつくすように張り巡らされた赤い糸、黒い糸。力強い生命力と人と人の絆、同時に果てない宇宙や避けられない死をも連想させる塩田千春のアート作品。デザイナーたちのクリエーションと出合うとき、森羅万象に通じるそのイマジネーションはさらに拡張してゆく。
――『魂がふるえる』というタイトルの意味は?
塩田千春(以下S)森美術館での展覧会が決まったときに、まず生きていてよかったと思いました。しかし翌日に、がんの再発を告げられ、手術を行い、抗がん剤治療が始まりました。病院ではすべてがシステマティックに進んでゆき、そこに“私”は存在せず、人間の不条理を感じました。普段から生と死の問題に向き合い作品を作ってきましたが、ここまで死に寄り添って制作したのは初めてです。自分の命に限りがあることを実感しながら展覧会の構想を練りました。自分がいなくなったあと、魂はどのくらい生きてゆけるのか、意識や感情はどこにゆくのか......そうしたことを考えていて、生まれたタイトルです。
―― 今回の展覧会は308番目と聞きました。
S 私の作品はインスタレーションなので、発表の場があって初めて作品を作ることができます。展覧会は生きがいです。制作していると次はああしようこうしようと考えが浮かぶので、止まってしまうことは考えられません。
―― 国内では初の大規模な回顧展となりますね。
S ここまで深く自分を追求したのは初めてです。塩田千春は、“塩田千春”になるために生まれてきたと思わせるような展示になっていると思います。