BY AZUMI KUBOTA, PHOTOGRAPHS BY AYUMU YOSHIDA

唐時代に作られた馬像。夫人のお気に入りの漢時代の馬像と対で、香港のギャラリーで購入。時代を超越した力強いシルエットに「ピカソを思わせる。こちらのほうが先だけどね」とつぶやく。地震に遭った際、真っ先にこの像に駆け寄り、夫人から「いったいどなたが大切なの?」と皮肉を言われたエピソードを笑いながら披露した

茶道は、裏千家師範の祖母に育てられ、幼い頃から茶に親しんでいた夫人の影響でのめり込んだ。桜色の茶碗は、40年前に京都で購入。これが、自分で最初に買ったもの。茶道の経験は、来春に日本で刊行される『<Le pavillon de thé> 茶室』の作品世界に大きく反映されている

京都で夫人とふたりで、竹を削るところから手作りした茶杓と茶杓入れ。侘び寂びのある簡素な道具に、ふたりの個性が表れていて愛しい、という。「自分の手で作ることで、茶道具のもつ官能的なカーブについて発見があった」

書棚に並ぶのはコラスの日本とフランスでの刊行作品。小説家としてのデビューは日本で。処女作『遙かなる航跡』は、初めて日本を旅したとき訪れた瀬戸田(現・尾道市)での体験を描いている。のちにフランス語原文の原稿を持ち込んだところ、たちまちフランスでも出版され、日仏両国で多くの作品が刊行されている

奥は創作のためのノート。現在執筆中の『日本についての百科事典』のためのエントリーを五十音順に書き出している。「芸妓」「ちんどん屋」など、350以上の項目からなる予定。手前は読書ノート。日本文学を深く愛するコラスだが、最近になって三島由紀夫、川端康成の全作品を再読。思いついたとき、読み終えたとき、こまめに肉筆で思いを綴る