どんな時代にあっても自由闊達に、自分らしく在り続ける─。2024-’25秋冬コレクションを彩る服と書評家・石井千湖の選ぶ女性随筆家の作品が交錯し、人生を拓くしなやかな精神を映し出す

BY ASAKO KANNO, PHOTOGRAPHS BY MISUZU OTSUKA, STYLED BY TAMAO IIDA HAIR BY JUN GOTO AT OTA OFFICE, MAKEUP BY KANAKO YOSHIDA MODEL BY MAE AT BRAVO MODELS, SELECTION OF BOOKS & REVIEW BY CHIKO ISHII, SPECIAL THANKS TO FUJIMI PANORAMA RESORT

わたしは今や、真実トウモロコシ畑のど真ん中で暮らす者となった。
──『イリノイ遠景近景』「トウモロコシのお酒」より

画像: 唯一無二の個性を輝かせ、どこに在ろうとも自身の物語を綴っていく女性たちを祝福するコレクション。ノルディック柄のカシミアニットとマフラーに、ニューヨーク・マディソンアベニュー888番地のフラッグシップストアにちなんで名付けられた、自由と自立の精神を宿すバッグを合わせて。 セーター¥410,300・スカート¥267,300・マフラー¥199,100・バッグ「RL 888トート」〈H32×W33.5×D18〉¥429,000/ラルフ ローレンコレクション ラルフ ローレン TEL.0120-3274-20

唯一無二の個性を輝かせ、どこに在ろうとも自身の物語を綴っていく女性たちを祝福するコレクション。ノルディック柄のカシミアニットとマフラーに、ニューヨーク・マディソンアベニュー888番地のフラッグシップストアにちなんで名付けられた、自由と自立の精神を宿すバッグを合わせて。

セーター¥410,300・スカート¥267,300・マフラー¥199,100・バッグ「RL 888トート」〈H32×W33.5×D18〉¥429,000/ラルフ ローレンコレクション

ラルフ ローレン
TEL.0120-3274-20

藤本和子「トウモロコシのお酒」
『イリノイ遠景近景』(筑摩書房)所収

ブローティガンの翻訳で知られる藤本和子の「住処」をめぐるエッセイ。ずっと都会にしか住めないと思いこんで生きてきた翻訳家が、アメリカ・イリノイ州のトウモロコシ畑の真ん前にある家で暮らす。空が180度の視界で見渡せる場所があるという小さな田舎町での生活は、どこか現実感がない。でも自分は「よそ者」と思うこともあまりないというくだりがいい。無理になじもうと頑張るわけでも、交流をあきらめて閉じこもるわけでもなく、平常心で地に足をつけて生きている感じに憧れる。犬種がわからない保護犬ポチも魅力的だ。

そんな脈絡のない断片だけの記憶が、あの町にはたくさんある。
まるで読みすぎてページがばらばらになってしまった絵本みたいに。
──『文化の脱走兵』「あの町への切符」より

画像: ウィメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクターにニコラ・ジェスキエールを迎え、10周年となるルイ・ヴィトン。過去10年のクリエーションの「旅」を回顧しながら、内省的な探求のなかで出会う記憶や感情を表現した。フレンチクチュールを継承するドレスが近未来的なシルエットを描き、過去と未来を豊かにつないでいく。 ドレス¥1,369,500・グローブ¥348,700(ともに参考価格)・ネックレス¥115,500・ベルト¥72,600/ルイ・ヴィトン ルイ・ヴィトン クライアントサービス TEL.0120-00-1854

ウィメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクターにニコラ・ジェスキエールを迎え、10周年となるルイ・ヴィトン。過去10年のクリエーションの「旅」を回顧しながら、内省的な探求のなかで出会う記憶や感情を表現した。フレンチクチュールを継承するドレスが近未来的なシルエットを描き、過去と未来を豊かにつないでいく。

ドレス¥1,369,500・グローブ¥348,700(ともに参考価格)・ネックレス¥115,500・ベルト¥72,600/ルイ・ヴィトン

ルイ・ヴィトン クライアントサービス
TEL.0120-00-1854

奈倉有里「あの町への切符」
『文化の脱走兵』(講談社)所収

ロシア文学研究者の奈倉有里が、1 歳から8 歳まで住んでいた町の記憶をたどる。公団住宅が立ち並んでいたその町は、今はもう跡形もなく消えてしまった。しかし、「子供時代への切符」というロシアの詩を切符にして時間旅行をするのだ。自分のなかの世界地図を広げてくれた父、お金はなくても明るく生活を楽しんでいた母、雪の日に撮った家族写真。郷愁に動かされて、著者は思い出の町があった場所を実際に訪れるが……。愛おしい過去は、たとえ失われてしまっても、現在から未来へ旅を続ける自分を支えてくれると思える一編だ。

石井千湖(いしい・ちこ)
書評家、ライター。大学卒業後、8年間の書店勤務を経たのち、書評家、インタビュアーとして活動を始める。新聞、週刊誌、ファッション誌や文芸誌への書評寄稿をはじめ、主にYouTubeで発信するオンラインメディア「ポリタスTV」にて「沈思読考」と題した書評コーナーを担当。著書に『文豪たちの友情』(新潮文庫)、『名著のツボ 賢人たちが推す!最強ブックガイド』(文藝春秋)、『積ん読の本』(主婦と生活社)(10月1日発売予定)。T JAPAN webにて連載中のブックレビュー「本のみずうみ」も好評。

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