日本酒のトップメーカー黒龍酒造による、最高級熟成酒の入札会。日本酒業界で初となった入札会で何が行われたのか? 

BY MIKA KITAMURA, PHOTOGRAPHS BY HAYATO TAKAMI

 2012年420本、2013年240本、2014年も240本、2015年600本の計1,500本。それぞれの米栽培や醸造に関する情報、科学的な分析による日本酒度や酸度などの数値、識者の講評などもすべて公開。特約店のバイヤーたちが利き酒をし、これらのデータを吟味したうえで、購入希望数(1ケース6本のケース単位)を用紙に記入する。その投票結果を集計し、購入希望数の合計が各ヴィンテージの出荷本数を下回ったらその金額で落札となるが、上回った場合は2次入札へ。それでも上回れば3次入札となる。1次から3次までは、価格があらかじめ提示されている。それでも希望本数が上回れば、価格と1人当たりの購入本数の上限を再設定する。

画像: 入札はヴィンテージごとに行う。バイヤーからは「酒造サイドからの価格設定は安過ぎると思う」という声が

入札はヴィンテージごとに行う。バイヤーからは「酒造サイドからの価格設定は安過ぎると思う」という声が

 結局、2012年ものは5次まで、そのほかすべても4次まで入札が行われた。特に評価の高かった2013年は当初設定の3倍近くの価格で取引された。最終的な落札本数は、黒龍酒造が新たに増やして2,800本となった。

 この入札を後押しした「京都吉兆 嵐山本店」徳岡氏は、「2000年ごろから日本の食文化が海外の注目を浴び始め、2013年には和食がユネスコの無形文化遺産に登録された。日本酒ももっと脚光を浴びていい。ワインはすでに投資対象になっていますが、そうなるべきポテンシャルは日本酒にもあると思う。長期熟成酒は、その意味で日本酒の未来を拓いてくれる存在。今日は日本酒の新しい歴史が始まった日だと思っています」と、興奮冷めやらぬ口調で話してくれた。

画像: 会場は六本木のモダンバスク料理店「エネコ東京」。入札結果を待つあいだ、黒龍酒造の酒に合う料理がコースで提供された

会場は六本木のモダンバスク料理店「エネコ東京」。入札結果を待つあいだ、黒龍酒造の酒に合う料理がコースで提供された

 また、バイヤーとして参加した「はせがわ酒造」の長谷川浩一社長も、「黒龍酒造というブランドだからこそできた試みです。最初の設定価格は安過ぎる。全部再入札になると思ったら、やはりそうなりましたね」と話した。大阪「今仲酒店」の今仲章人社長の感想も同様だ。「ハイブランドに例えるなら、黒龍酒造さんは『エルメス』です。今日出された酒の入札価格は、黒龍酒造さんの最高級ブランド『石田屋』の10倍以上高くなりましたが、それも当然でしょう。大阪では北新地のお鮨屋さんなどがこうした希少な高級酒をためらわず買ってくれるので、安心して入札しました」

画像: 黒龍酒造の水野直人社長(右)は、「日本酒は時間を経て、どんどんまろやかな味になります。もちろん、味のふくらみや複雑さも加わります。この試みが業界全体に広まれば、日本酒の価値がさらに上がるでしょう」。「京都吉兆 嵐山本店」の徳岡邦夫氏(左)は「ワインと同様、投資対象となるような価値のある日本酒がこれから出てくることを期待しています」

黒龍酒造の水野直人社長(右)は、「日本酒は時間を経て、どんどんまろやかな味になります。もちろん、味のふくらみや複雑さも加わります。この試みが業界全体に広まれば、日本酒の価値がさらに上がるでしょう」。「京都吉兆 嵐山本店」の徳岡邦夫氏(左)は「ワインと同様、投資対象となるような価値のある日本酒がこれから出てくることを期待しています」

 筆者の予測では1本10万円以上で小売りされるであろう、珠玉の日本酒。「時間によって生み出される個性」という日本酒の新たな価値は、今後、日本酒ラバーと海外展開の可能性も増やすトリガーになることだろう。

問い合わせ先
黒龍酒造
TEL. 0776(61)6110
公式サイト

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