ピュアな味わいで“泡好き”を魅了する「バローネ・ピッツィ―ニ」。老舗でありながら、いち早くビオロジックを導入し、同地を牽引してきたことでも知られる。その“始まりの物語”を聞いた

BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY SHINSUKE SATO

 ブレシャニーニが最初に手がけたのは、“ブドウの質を上げること”だった。料理人でもあった彼は、「料理とワインのアプローチは似ている。まずは素材ありき。ブドウをリスペクトしなければ、いいワインなどできない」と考えたのだ。「ブドウには如実にテロワールが反映されます。私は、土地の個性を生かすのは当然ながら、いきいきと生命力に満ちたブドウを育てたいと思いました。そのためには、土にも生命力を宿らせなくてはいけない。ブドウに栄養を与える微生物が気持ちよく棲める土にするための方法が、有機栽培だったのです」

画像: 畑はすべてビオロジックで栽培。今やフランチャコルタ全体で70%がビオロジック栽培だというが、「バローネ・ピッツィ―ニ」はまさしくその先駆者だ COURTESY OF BARONE PIZZINI

畑はすべてビオロジックで栽培。今やフランチャコルタ全体で70%がビオロジック栽培だというが、「バローネ・ピッツィ―ニ」はまさしくその先駆者だ
COURTESY OF BARONE PIZZINI

 だが、90年代のフランチャコルタでは、誰もその方法を知っている醸造家はいなかった。むしろ、「彼はおかしなことを始めたのではないか」という評判さえ立ったという。だが、幸いなことに農学者で有機栽培に詳しいピエールルイジ・ドンナと出会ったことが、また新たな転機となった。ブレシャニーニは、ドンナの指導を受けながら、98年に有機栽培を始めたのだった。そして2001年にはすべての畑をビオロジックに転換。その成果は、なによりも「バローネ・ピッツィ―ニ」の味わいが物語っている。

 フランチャコルタでは現在、畑全体の70%が有機栽培だというが、これはブレシャニーニの大きな功績と言ってよいだろう。「『バローネ・ピッツィ―ニ』のフランチャコルタは、フルーティーでフレッシュな酸味が特徴です。このおいしさは、すべてブドウの生命力によるものだと私は信じています。すっきりとした味わいなので、鮨をはじめとする和食とともに、気軽に楽しんでいただけたらうれしいです」とブレシャニーニは語る。

画像: (左から) 「バローネ・ピッツィ―ニ フランチャコルタ ロゼ 2013」<750ml>¥6,000 ピノ・ネロ80%、シャルドネ20%。チェリーやフランボワーズなど赤い果実の香り。クローブなどのスパイスの香りも。華やかな味わいで、さまざまな料理に寄り添う 「バローネ・ピッツィ―ニ フランチャコルタ ブリュット アニマンテ」<750ml>¥4,000 シャルドネ78%、ピノ・ネロ18%、ピノ・ビアンコ4%。レモンやグレープフルーツの香り。酸はやわらかくエレガント。「アニマンテ」とは“生命”の意で、“大地の命が吹き込まれたワイン”を意味する 「バローネ・ピッツィ―ニ バニャドーレ 2009」<750ml>¥7,000 シャルドネ50%、ピノ・ネロ50%。ブリオッシュやハチミツのニュアンス。ドザージュ(加糖)ゼロで、すっきりした味わい。9年熟成による奥深い味わいも特徴的。単一畑のブドウのみを使用

(左から)
「バローネ・ピッツィ―ニ フランチャコルタ ロゼ 2013」<750ml>¥6,000
ピノ・ネロ80%、シャルドネ20%。チェリーやフランボワーズなど赤い果実の香り。クローブなどのスパイスの香りも。華やかな味わいで、さまざまな料理に寄り添う

「バローネ・ピッツィ―ニ フランチャコルタ ブリュット アニマンテ」<750ml>¥4,000
シャルドネ78%、ピノ・ネロ18%、ピノ・ビアンコ4%。レモンやグレープフルーツの香り。酸はやわらかくエレガント。「アニマンテ」とは“生命”の意で、“大地の命が吹き込まれたワイン”を意味する

「バローネ・ピッツィ―ニ バニャドーレ 2009」<750ml>¥7,000
シャルドネ50%、ピノ・ネロ50%。ブリオッシュやハチミツのニュアンス。ドザージュ(加糖)ゼロで、すっきりした味わい。9年熟成による奥深い味わいも特徴的。単一畑のブドウのみを使用

 最後に「今後の夢は?」と聞いてみると、「できうる限り、長くワインづくりをしていたい。気づくと、『どうすればもっとおいしいフランチャコルタがつくれるのか』」ばかり考えているのです」という答えが返ってきた。彼は「このおいしさは、すべてブドウの生命力によるもの」だと言うが、それは彼の真摯な姿勢とたゆまぬ努力の成果であることも、ここに付け加えておかなくてはならないだろう。

T JAPAN LINE@友だち募集中!
おすすめ情報をお届け

友だち追加
 

LATEST

This article is a sponsored article by
''.