京都生まれ、京都育ちの食いしん坊、京都でおいしいものに出合いたければ、この人に聞けばハズレなし!そんなアマジュンこと天野準子の絶品満腹口福アドレス。8月は冷たい麺を紹介。第3弾は「更科本店」のきしめん

TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO

新京極「更科本店」

画像: 温と冷を選べる「梅ぼしきしめん」¥850

温と冷を選べる「梅ぼしきしめん」¥850

 全国的に猛暑が続いているが、京都の夏は暑さプラス湿気のダブルパンチ!そこで今月は、暑さで食欲がわかない時にぴったりなさっぱりとした冷たい麺をピックアップ。

 明治時代、東京奠都の影響で人口が減った京都の街に活気をとりも出すために誕生した新京極商店街。当時は、浄瑠璃の芝居小屋や寄席、甘味処などが軒を連ねていたそう。「更科本店」は、商店街が誕生した2年後、明治7年に創業。新京極商店街は、昭和の頃は、修学旅行生のお土産を買う通りとして親しまれ、現在は外国人ツーリストで賑わい、店舗の入れ替わりも激しいが、ここだけは変わらない老舗だ。

画像: 支店はないが、暖簾分けした店もあり、“更科本店“としている

支店はないが、暖簾分けした店もあり、“更科本店“としている

 更科という屋号はそば屋に多いが、こちらの名物はきしめん。初代が名古屋出身だったことから、創業当初から、そばとうどんに加え、きしめんを出していたという。
「京都の人にはきしめんなんて馴染みがないから全然売れなくて。それでも代々続けていて。父の代からはきしめんをもっと打ち出すようにしたんです」と、6代目鬼頭亮二さん。

画像: 湯飲みには、きしめんを食べる時のオノマトペが添えられている

湯飲みには、きしめんを食べる時のオノマトペが添えられている

 お品書きは、「きつねきしめん」や「にしんきしめん」、「鳥なんばきしめん」など、種類豊富なきしめんを打ち出し、うどんやそばにも変更できると書き添えた、きしめん推しに。今では日本人客の9割がきしめんを注文するという。

 通常のきしめんは1〜2㎜の厚みがあるが、こちらのきしめんは、京風の出汁に合うよう1㎜以下に。薄いとちぎれやすくなるため、高加水の生地で低加水の生地をを挟んで伸ばすことで、口当たりはなめらかながらコシはしっかり。スルスルといただくことができる。

画像: 甘く炊いた油揚げの上に花かつおがたっぷりのった「きしめん」¥800

甘く炊いた油揚げの上に花かつおがたっぷりのった「きしめん」¥800

 基本の「きしめん」は油揚げからジュワッと甘い出汁があふれ出し、たっぷりの花かつおをきしめんに絡ませながらいただくとかつおの風味が口いっぱいに広がる。

画像: 南高梅に焼き海苔、九条ネギ、花かつおを添えた「梅ぼしきしめん」¥850

南高梅に焼き海苔、九条ネギ、花かつおを添えた「梅ぼしきしめん」¥850

 暑さで食欲がない日は「梅ぼしきしめん」がお勧め。梅ぼしを崩しながら味わうと、梅干しの酸味が出汁に加わり、よりさっぱりいただける。

 以前に比べ、京都を旅する際、「京都らしさ」より「京都の日常らしさ」を求める人が増えている。喫茶店やうどん屋さん、食堂など、ご近所さんが普段使いしていた店に行列ができることもしばしば。
「更科本店」はまさにそんな日常店。昔ながらの食堂っぽい店内に、三角巾にエプロン姿のお姉さんたちが忙しく接客している。そんな日常の風景も通いたくなる理由だ。

画像: ご近所さんや商店街のショップスタッフ、学生、外国人ツーリストなど、お客さんの層も幅広い

ご近所さんや商店街のショップスタッフ、学生、外国人ツーリストなど、お客さんの層も幅広い

「更科本店」
住所:京都市中京区新京極通六角下ル中筋町483
営業時間:11:00〜15:30、日曜のみ夜営業あり17:30〜20:00(麺がなくなった場合早仕舞い)
定休日:木曜(祝日の場合は営業、翌金曜休)
TEL. 075-221-3064

画像: 天野準子 生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント

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