BY KYOKO SEKINE
世界有数の電気街として名高い秋葉原は、サブカルチャーの発信基地でもあり、アニメショップやメイドカフェなどが立ち並ぶ。だが、今の秋葉原はそれだけには終わらない。地元と共に新しい文化を発信し、アートや音楽、グルメな食の街としても知られている。
その魅力あふれる秋葉原と共に未来を目指そうと唱える地域型の1軒のホテルがある。2020年9月1日に新規開業を迎えた「ノーガホテル 秋葉原 東京」だ。機能性、使い勝手の良さは言うまでもないが、今どきのホテルラバーが、秋葉原で何を望んでいるか、また斬新な提案とは何だろう、楽しみ方は? など、徹底して本物を追求するこの街ならではのユーザーを意識してつくられている。また、地域に根差して活躍するアーティストや、秋葉原の魅力を伝える空気感がホテル館内に漂っているのも面白い。この説明では分かり難いだろうが、気兼ねなく利用でき、こだわりの詰まった、リーズナブルで高品質なホテルなのである。
ホテルのロケーションは、秋葉原の中心地を突き抜ける賑々しい中央通りから、細い道に曲がりほんの少し行った静かで便利な場所にある。また、ホテルの西側道路は通称“ジャンク通り”と呼ばれ、コアな趣味人が通うなど、とにかく面白そうな環境である。ノーガホテル 秋葉原 東京のオーナーは大手不動産会社、野村不動産株式会社だ。約2年前には東京上野に初の同名ホテルを開業し、秋葉原はその成功を受けて2軒目の同ブランドのホテルとして誕生した。
そのコンセプトには、前述の通り「地域との深いつながりから生まれる素敵な経験」を掲げ、東京下町に根づくサブカルチャーの面白さに迫るホテルの役割を前面に打ち出している。私自身、秋葉原を良く知る一人と自負していたが、細い道に隠れたグルメ処も知らず、様々なジャンルのプロに足を向かせる奥深い面白さも、実は何も知らなかったのだと気づいた。
ホテルのメインエントランスの前には、「ゲストの流れを注視して新たに設置した」という“オープンテラス”がつくられ、帰りがけのビジネスマンがビールを飲んだり、女性が帰宅前にちょっとカフェタイムを楽しんだり、またパソコンで仕事をする人も見かけたり…… など、植栽に包まれたこのテラスが、すでに快適な安らぎの場所となっている。
客室は全120室。室内はシンプルで使い勝手が良く、メイド・イン・ジャパンのクオリティにこだわる家具や調度品が揃っている。館内の施設には、ロビーギャラリー、レストラン、バー、スタジオ・テラス、小規模ながらフィットネスを備えており、宿泊者以外も、レストランやバー、ロビーギャラリー、テラスなどが使用できる。また、とりわけ音楽には相当力を入れており、館内の至るところや客室内にも音楽好きがニンマリするような様々なタイプのスピーカーが設置され、どこにいても心地いいオーディオ環境が楽しめる。
ホテルは食にもアートにもかなりのこだわりがあるが、同時に、地球環境に対し細やかな対策を講じていることがわかり、やはり未来を目指すホテルとしての社会的責任を負っている。デザインのカッコよさや話題を呼ぶことだけに終始せず、地元アーティストとコラボしたり、ゲストに見えない部分でも環境へ配慮するなど、納得のいく奥行きがあることがいい。調達電力のCO2 排出量ゼロ化を行うグリーン電力導入や、安全性や衛生にもきちんと気を使い、感染症拡大に対しても厳しい対策を講じる未来型ホテルである。
ノーガホテル 秋葉原 東京
(NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO)
住所:東京都千代田区外神田3-10-11
電話:03(6206)0569
客室数:全120室
料金:¥10,000~(1泊1室の室料。消費税別)
※ 上記は参考価格。料金は宿泊日により変動するため、要問い合わせ
公式サイト
せきね きょうこ
ホテルジャーナリスト。フランスで19世紀教会建築美術史を専攻した後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。在職中に住居として4ツ星ホテル生活を経験。以来、ホテルの表裏一体の面白さに魅了され、フリー仏語通訳を経て、94年からジャーナリズムの世界へ。「ホテルマン、環境問題、スパ」の3テーマを中心に、世界各国でホテル、リゾート、旅館、および関係者へのインタビューや取材にあたり、ホテル、スパなどの世界会議にも数多く招かれている。雑誌や新聞などで多数連載を持つかたわら、近年はビジネスホテルのプロデュースや旅館のアドバイザー、ホテルのコンサルタントなどにも活動の場を広げている
www.kyokosekine.com