BY JUN ISHIDA
―― まず完成した展示を見ていかがでしたか?
9カ月にわたって作業していたレンダリング(完成イメージ)とまったく同じで、こんなことがあり得るのかと驚きました。子どもを授かり、その瞳が何色なのかをもうすでに知っているかのようでした。
―― そもそも「オリジナルとコピー」をテーマにした展覧会をキュレーションするというアイデアはどのように生まれたのですか?
この議題は、長い間、現代美術の一部であり、特に新しいものではありません。しかし、長年にわたって議論された結果、著作権の戦いには「The End」という2語を投げかけていいと思っています。 アレッサンドロと私がこのコンセプトに決めたのは、私たちが生きる現在社会のすべての概念や構造について、再考する時が来たと感じたことがきっかけでした。
―― 展覧会をキュレーションするにあたり、アレッサンドロ・ミケーレとの間にどのような議論がありましたか?
本展の出発点は、コピーは主題を深く理解してこその行為であるという考えです。 コピーは注意を促すことを意味し、また複製しているコンテンツを評価することです。それは多くの意味を持つ行為であり、オリジナルのコンセプト自体に新たな意味を加えるのです。次の世代のためにアイデアを生かしておくことにもなります。
アレッサンドロとのやりとりはそういったコンセプトから始まり、イコノグラフィー(図像学)とアイコンについて、そしてマドンナ(聖母マリア)とマドンナにどんな特徴が共通しているかについて話し合ったのを覚えています。具体的に展覧会について話すことはなく、私たちはいつも芸術についてのみ話をしました。クリエイティブな人間の良い点は、芸術について語るのを避けられないところです。そしてそれに飽きたりストレスを感じることはないでしょう。私は仕事をしないでは一日もいられません。仕事は治療と同じようなもので、医者の処方箋のようなものともいえるかもしれません。一日も無駄にはできないのです。
―― 上海というコピーの象徴といえる都市でこの展覧会を開催することは非常に大きな意味を持つと思います。展覧会の準備期間中に実際に上海の街を彷徨ってみて、この街からどのようなインスピレーションを得ましたか?
展覧会全体が、上海という街や中国文化へのセレブレーションになっているのですが、その理由は来場すればわかっていただけるはずです。例えばブライアン・ベロットとジョン・アハーンの展示室が、上海のフランス租界にまだ現存しているこの街らしい伝統的な民家へのオマージュになっているように、いくつかそれを感じさせるスポットがあります。