BY JUN ISHIDA
―― 展覧会場に〈Yuz Museum〉を選んだ理由は?
〈Yuz Museum〉は素晴らしい空間なのですが、このスペースの中にさらに新しい空間をあえて設けるという大胆なやり方に決めました。訪れた人たちが我々の頭の中で迷子になるような導線を作ろうと考えたのです。しかし、もともとこの美しいスペースがなければ、それを実現することはできなかったでしょう。
―― 38名の参加アーティストは出身国もキャリアも様々です。アーティストの選定はどのように行ったのですか?
作品の製作自体は楽しいものではありません、一番楽しいのはどんな作品にするかを考えているときです。きっとどのアーティストにとってもそれは同じはずで、シャワーを浴びている数分間や、まだ十分ではないアイデアにもやもやしている日々であっても、考えることができます。結局のところ、世界のすべての金塊を他のアーティストと分かち合うことはありませんから、芸術を創造することは間違いなく孤独な喜びだと言えます。展覧会のキュレーターとなる幸運なチャンスが私に与えられるたび、アーティストのキャリア、履歴書、ポートフォリオを考慮するのではなく、その展覧会にとってパーフェクトとなる作品を選んでいます。私が芸術について愛するのは、芸術そのものです。 残りは、DD:Decoration(飾り)とDistraction(気晴らし)にすぎません。
―― 展覧会は17の部屋に分かれています。一番気に入っている展示室は?
展示室はどれも同じように重要であり、どの展示室のどのアーティストが欠けても、展覧会が成り立たないことを強調したいです。どれがお気に入りかよりも、展覧会のコンセプトをより見事に統合した作品だったら挙げることができます。XU ZHEN ©の作品は、東洋と西洋の出会いの瞬間を完全に記号化しようとするアイデアで、(展覧会のコンセプトを)この中国人アーティストの作品がしっかりと代表しています。異なる伝統から生まれた名作たちが、まったく別の、他にないひとつの傑作へと変異していくこと、それがまさに我々が関心を持っている創造のプロセスなのです。
―― 展覧会のタイトルとキー・ビジュアルはマリーナ・アブラモヴィッチの「The Artist is Present」からのアプロプリエーションです。このタイトルとビジュアルを盗用した狙いは?
彼女の展覧会のコンセプトそのものより、そのメディア的な成功がより大きなインスピレーションとなったことを認めなければなりません。この展覧会と、コピーというもののオリジナリティについて考え始めたとき、この言葉によってもたらされる世界観全体を包み込み、探求しようとしました。そしてオリジナリティやオーサーシップ(著作権所有者)のように、私たちにはごく自然に思えるいくつかのアイデアに新しい定義を与えようと試みるように頭を切り替え、新しい手法を考えるようになったのです。私たちの意図をすぐに伝えることができるタイトルが出発点だったのは当然のことで、その意図とは、すでに有るものにコピーという行為を経て第二の命を与えることでした。オリジナルの代わりにコピーが存在し、コピーがオリジナルになる、これが近頃気になっている議題の1つです。マリーナになりたくないと思うアーティストがいるでしょうか?
―― コピーとオリジナルの境界線は、アートとは何かという問いかけでもありますが、あなた自身はアートをどのように定義しますか?
最初は、結果に関係なく、自分の最もダークな部分とぎりぎりまでやり合うこと。それから、シンプルかつ意義のあるものにすること。