BY ALEXANDER FURY, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
VERSACE(ヴェルサーチ)
ヴェルサーチの2018年春夏コレクションは、ブランドの「ホーム」に立ち返るものだった。ショーが開催されたのは、ブランドの創設者であるジャンニ・ヴェルサーチが住んだ、ジェス通りにあるバロック・ミラネーゼ・マンション。正確に言うとジャンニが建てたわけではないが、彼が80年代に自身のブランドの本拠地として選んだ建物だ。ショーはその家の裏庭で開催された。

実際にはモザイク画と回廊に囲まれた中庭とでも言うべきところで、今までに見たどんな裏庭よりも豪華絢爛なものだけれど。
モデルたちはミラノの夕空の下を歩いた。会場を照らすライトは太陽の光のみで、会場セットは背後にそびえる壮麗な邸宅のみ。

ドナテッラ・ヴェルサーチは今回のショーを「帰郷」と呼んだ。
90年代初頭のヴェルサーチの全盛期、あらゆるファッショナブルな男たちがヴェルサーチの鮮やかな柄のシルクシャツを着ていた時代のアーカイブを参照。その渦巻く柄はいたるところに登場し、デニムやニットにもあしらわれていた。

ルーツへの回帰の一環として、曲線的なオリジナルフォントのロゴが、1978年のブランド創立以来となるリバイバルを果たした。
今回のショーは、形式的にはブランドの40周年記念イベントの第一弾となる。典型的なヴェルサーチのルックは、「クチュールの性交」と呼ばれている。マスキュリンな要素とフェミニンな要素が、ひとつのルックの中できれいに混ざり合っているのだ。コスメカウンターを思わせるパウダーブルーやパステルピンクのワントーンルックも登場した。

今回、ヴェルサーチはメンズコレクションとともにウィメンズウェアのカプセルコレクションも発表。
既に発表されているリゾートコレクションとも、来たる9月にショー開催予定の春夏コレクションとも別のもので、明らかにメンズウェアと同テーマでデザインされているルックもあった。ドナテッラによると、このカプセルコレクションは顧客の欲求と要求に応えるものなのだそう。
もっと服を、もっとたくさん、もっともっと!
なるほど、いかにもヴェルサーチ的だ。

しかし、すべてが過去からの引用だったわけではない。モデルキャスティングはスレンダーな若い男の子ばかりを選んでおり、かつてヴェルサーチのランウェイを席巻したマッチョなイケメンの姿はなかった。
「今、ミレニアルズと呼ばれる若者たちに夢中なの」と、ショーの前にドナテッラは話した。
「彼らにはパワーがあるから」

今回、ブランドの膨大なアーカイブの中から、2つのプリントが再登場した。写真上は、ギリシャ風のバレエ舞台用マスクの柄。
縁取りをしているのは、ヴェルサーチのシグネチャーである「グリークキー」のプリントだ。これはマイアミビーチ風のパステルカラーのアイテムに描かれ、シャツやブラ、バックパックやデニムパンツにもあしらわれた。

PHOTOGRAPHS BY MOLLY SJ LOWE
ドナテッラがインスピレーション源として挙げたのは、「ピュアであること」という抽象的なイメージ。
今年は彼女がブランドの指揮を執るようになって20年目であると同時に、彼女の兄ジャンニの死から20周年目の節目でもある。この「帰郷」は、ヴェルサーチというブランドの過去、現在、そして未来を祝福するものなのだ。