グッチのデザインにあふれる動物や植物の意匠は何を示すのか。ファッションの根源にあるものを、思想家・文化人類学者の中沢新一が考察する

BY SHINICHI NAKAZAWA, EDITED BY ITOI KURIYAMA

画像1: 中沢新一が読み解く、
アレッサンドロ・ミケーレの
哲学的ファッション

 動物(鳥、昆虫、爬虫類、狼、虎、獅子……)や植物(薔薇、百合、金鳳花、撫子……)の図案は、グッチのデザインと切っても切れない間柄にある。それどころか、そのことがグッチのデザインの本質をなしている。

 よく知られているように、グッチの創設者はもともと皮革職人と密接な関係をもつ人だった。そのため初期のグッチ製品には、馬具や革の装飾品につけられる紋章に由来するさまざまな意匠が、ブランドの目印としてつけられた。この紋章に由来する意匠には、好んで動植物の図案が用いられた。アレッサンドロ・ミケーレが現代において、矢継ぎ早に世に送り出しているデザインのユニークさは、じつはかつて貴族の馬具や騎士の武具に描かれていた、この動植物の図案の秘めもつ深い象徴的意味に根ざしている。

画像: アレッサンドロ・ミケーレは、さまざまな意味合いや事柄の象徴となっている動植物モチーフを、「グッチ ガーデン」と称して好んで用いる。グッチ青山とグッチ銀座で扱う「GUCCI DIY」では、これら多種多様のモチーフのパッチ(アプリケ)がそろう

アレッサンドロ・ミケーレは、さまざまな意味合いや事柄の象徴となっている動植物モチーフを、「グッチ ガーデン」と称して好んで用いる。グッチ青山とグッチ銀座で扱う「GUCCI DIY」では、これら多種多様のモチーフのパッチ(アプリケ)がそろう

 古代中世のヨーロッパの貴族たちは、衣装を結ぶ革のベルトや種々の装飾品、馬に載せる鞍や顔覆い、儀礼用の武具や実戦で用いる盾などに、自分の所属する家や集団を象徴するさまざまな紋章的デザインを描き込んだ。ヨーロッパの貴族階級はもともと古代戦士の階級から出てきた人々であったので、紋章的デザインで我が身をおおうこのしきたりには、古くからの戦士階級の伝統が色濃く反映されている。この古代中世の戦士たちが、馬具や盾などの武具に、動植物の図案を好んで描いたのである。

 ではなぜ古代中世の戦士(騎士)やその末裔である近世の貴族たちは、馬具や武具に、動植物の図案を描くことを好んだのだろうか。それには二つの理由が考えられる。一つの理由は自分の属する家や集団を、ほかから識別するためである。

 

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