美味を訪ねて日々食三昧、マッキー牧元が厳選する「いま東京で食べるべき中国料理」。最終回は期待の若手にフォーカス!

BY MACKEY MAKIMOTO, PHOTOGRAPHS BY MASAHIRO GODA

 最後にもう一人、今後の四川料理界を担う、若手のホープを紹介しよう。渋谷「スーツァンレストラン陳」の井上シェフである。

 彼は去年、35歳以下の若手料理人コンテスト「RED U-35」にて、フレンチや割烹のシェフを抑え、優勝した料理人である。最終審査では、有名料理人や料理評論家の審査員たちの圧倒的評価を得て、グランプリを勝ち取った。彼もまた目先のアイデアや高級食材に捉われすぎることなく、確かな技に裏づけされた、美しい料理を作る料理人である。

画像: 「白菜と干し貝柱のやわらか煮込み」

「白菜と干し貝柱のやわらか煮込み」

「白菜と干し貝柱のやわらか煮込み」は、白菜の芯の黄色い部分と干し貝柱だけをスープで煮て味つけした料理だが、ため息が出るほどおいしい。白菜のやさしい甘みと干し貝柱の塩気とうま味が抱き合って、しっとりと舌を包み込む。ふだん慣れ親しんだ白菜に高貴さを感じるほど、料理に品格がある。開店時から続く名物メニューだそうだが、こうしたどこにでもある食材でうならせる料理を生み出せることこそ、料理人の才である。

画像: 井上さんが上海で学んできたという漬物、「季節の根菜 特製甘酢漬け」。コクのある甘酸っぱさ、パリッとした根菜の食感がたまらない

井上さんが上海で学んできたという漬物、「季節の根菜 特製甘酢漬け」。コクのある甘酸っぱさ、パリッとした根菜の食感がたまらない

「季節の根菜 特製甘酢漬け」も、その才を感じさせる料理である。黒酢とはちみつなどに漬けられた根菜は、土の力をみなぎらせて、しみじみとうまい。

 こうした巧みな野菜料理こそ、食べこんだ年配の食いしん坊の方々に食べてほしいと思う。

 紹介した6人の料理人は、今後ますます料理の幅を広げ、日本の中国料理を活性化させていくだろう。そして僕は言い続ける。「東京で最も面白いのは中国料理だ」と。

画像2: 連載 
TOKYOチャイニーズは燃えている 
Vol.3

スーツァンレストラン陳

スーシェフの井上和豊氏は、若いながら品格のある料理を生み出す。アラカルトのほか、平日ランチ¥4,000〜、ディナーコース¥10,000〜

住所:東京都渋谷区桜丘町26-1セルリアンタワー東急ホテル2F
電話:03(3463)4001
営業時間:11:30〜15:00 (14:00 LO)、17:30~23:00 (21:30 LO)
公式サイト:www.srchen.jp

※本文中の料理は、季節により、またメニュー改定により提供されていない場合があります。

マッキー牧元
1955年東京出身。数々のメディアで活躍中の、自称「タベアルキスト」。割烹から焼き鳥、トンカツ、居酒屋まで日々渉猟し、旅先ではなんと「朝3、昼2、夜1(食)」が基本と語る食ジャーナリスト。一読、「うまそう!」と思わずよだれをそそる、シズル感あふれる文体が魅力。株式会社味の手帖 取締役編集顧問もつとめる。

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