RECIPE BY KEIKO NAGAE, PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA
「コンポート(compote)」は、フランス語で「煮る」という意味。お菓子の世界では、コンポートとは果物のシロップ煮のことを指す。形を崩さず、フルーツの風味をしっかり残して仕上げる。
「日本のフルーツは甘くておいしいものが多いので、桃が持つ自然の糖度(甘み)を凝縮するように火を入れていきます」。
鍋で煮ていく方法が一般的だが、長江さんは低温のオーブンでゆっくりと均一に火を入れ、濃縮していく。オーブンシートを上にのせることで、水分が蒸発しにくく、熱が均一に入るため、フルーツにじわじわと味が染み込むのだそう。桃以外のコンポートも全てこの方法でOK。
「今日の桃は甘くて香りがあるので、砂糖を少なめにして、130℃の低温で1時間、オーブンで加熱しました。様子を見ると、まだかためだったのでさらに30分、同じ温度で火を入れました。かたいフルーツ、例えば、皮ごとの柑橘類などは特に低温・長時間の火入れがおすすめです」
レストランで作る桃のデザートにはレモンバーベナを加えることが多い、と長江さん。「桃とレモンバーベナは黄金の組み合わせ。レモンバーベナの爽やかであり華やかでもある香りが、桃の甘い風味を際立たせてくれます。他に、好みのハーブやスパイス、使い終わったバニラのさやなどを加えてもいいですね。ハーブならレモングラス、大葉、スパイスならカルダモンやクローヴなどと相性がよいでしょう」。
桃は必ず皮ごと蒸し焼きに。皮の色と香りがシロップに溶け込んで、美しい色合いと豊かな香りが楽しめる。シロップはジュレやグラニテにしてコンポートに添えても、炭酸で割って楽しんでも。今回はジュレとグラニテ、ソルベを合わせた大人のデザートもご紹介する。
材料(作りやすい分量)
桃 2〜3個(1個300gほど)
水 1ℓ
グラニュー糖 120g
レモン汁 10g
バーベナの葉 10~20g
■作り方
1 桃は水でよく洗い、皮ごとナイフで半分に切り、両手でくるっと回しながら実を種からはずす。
2 桃を櫛形に切り、耐熱容器に並べる。種も入れておく。
3 バーベナを桃にのせる。水、グラニュー糖、レモン汁を鍋に入れて火にかけて沸かして、桃とバーベナに注ぐ。
4 ベーキングシートをピッタリとおおうように上からかぶせ、120〜140℃のオーブンで1〜1時間半加熱する。
5 仕上がりの目安は、桃がやわらかくなり、火がきちんと通っている状態。1時間ほど経ったら、一度オーブンから出して様子を見るとよい。オーブンから取り出したら、ラップをしてそのまま常温になるまで冷ます。こうすることで、香りを逃がさずにゆっくりと常温まで冷めていく。
6 常温まで冷めたら冷蔵庫で最低一晩寝かせる。その際、桃とバーベナの風味をシロップに余さず移すため、皮と葉の水分をスプーンに押し当てて絞る。シロップごと保存容器に入れ、そのまま2週間ほど保存可能。皮、タネは、いただく際にとり除けばOK。
コンポートのシロップをアレンジ
【桃のジュレ】
材料(作りやすい分量)
桃のシロップ 200g(今回、使用したものはルバーブの皮を加えて赤く仕上げたシロップ。桃だけの場合は薄いピンク色に)
板ゼラチン 3g
■作り方
1 板ゼラチンは水適量で戻し、水分を絞ったら、桃のシロップ適量を加えて、電子レンジ(600wで約30秒)にかけて溶かす。
2 桃のシロップに1を加えてよく混ぜ、容器に入れて冷蔵庫で冷やす。
3 冷やし固めた2に切れ目を入れる。
4 スプーンで細かくする。
【桃のグラニテ】
材料(作りやすい分量)
桃のシロップ 適量(今回、使用したものはルバーブを加えて赤く仕上げたシロップ。実際はもっと薄いピンク色)
■作り方
1 桃のシロップをザルなどで濾して、冷凍可能な容器に入れて冷凍庫で固める。
2 固まったら、フォークでかき混ぜる。数回行うとよい。
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