BY KIMIKO ANZAI
数あるシャンパーニュの中でも、その華やかさで多くの愛好家を魅了しているのが「ヴ―ヴ・クリコ」だ。1772年、ランスに創業した老舗メゾンで、2代目当主フランソワ・クリコの妻であるマダム・クリコ(バルブ=ニコル・ポンサルダン)が、夫亡き後、27歳の若さで自ら指揮を執り、自社のシャンパーニュをロシア宮廷に売り込んで、メゾンを大きく発展させたのは、ワインの世界では有名な話。マダム・クリコは先見の明があった人物で、ルミュアージュ(ボトルの瓶口に澱を集めるために少しずつボトルを回していく作業)のためのピュピトルという動瓶台を開発したことでも知られ、シャンパーニュ造りに革新をもたらしたことでも知られる。
「ヴ―ヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015」も、マダム・クリコの“革新”が生み出したシャンパーニュだ。マダム・クリコが活躍した時代、ロゼは白ワインにエルダーベリーなどや黒ブドウを添加して造られていた。マダム・クリコは「添加するのは自社の最高品質のピノ・ノワールのみ」とブージー村のクロ・コランの畑のブドウを使用し、初のブレンドスタイルのロゼ・シャンパーニュを誕生させたのだ。そして、その手法は現代まで大切に守られている。
「ラ・グランダム(偉大なる女性)」はマダム・クリコのシャンパーニュへの深い愛と功績を称え、1990年に誕生した特別なキュヴェで、優雅でふくよかな果実味と凜とした酸味が、確かに、マダム・クリコその人を思わせる。「ヴ―ヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015」はチェリーなどの赤い果実の香り、ナツメグ、クローヴ、バラやスミレのフローラルなニュアンスが魅力的。タンニンの質感はシルキーで、奥行きがある味わいだ。
セラーマスターのディディエ・マリオッティ氏は語る。
「2015年はとても暑い年で、特にピノ・ノワールが理想的に完熟しました。果実味豊かなヴィンテージになったと思います。注目していただきたいのが、このロゼ色です。マダム・クリコはいつも『私たちのワインは視覚と味覚の両方を楽しませるものでなければならない』と話していたそうです。私は、ワイン造りについて迷いを感じた時には、『マダム・クリコならどうするだろう?』と自問自答しています(笑)」。
また、マダム・クリコのシャンパーニュへの思いを表現しているのが、イタリアの陶芸家パオラ・パロネット氏が手がけたカラフルなボックスだ。パオラ・パロネット氏は“ペーパークレイ”と呼ばれる紙粘土での仕上げの手法が特徴的なアーティストで、色彩と技術への情熱がマダム・クリコと共通することから、このコラボレーションが実現したという。
「ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015」の魅力は、なんといっても、どんな料理をも包み込んでくれる包容力にもある。フレッシュ感に満ちた野菜や新鮮な魚料理、また、伝統的なフレンチのソースが添えられた肉料理まで、素晴らしいマリアージュを楽しませてくれる。軽やかな一皿にはピュアな酸味が、力強い肉料理には赤ワインのニュアンスが自然に寄り添ってくれるイメージだ。
「すべては“バランス”です。果実味、酸味、ミネラル、タンニンが美しいバランスを保つにはどうすべきか、それを一番に考えています」とマリオッティ氏。
繊細で鮮やかな色合いのボックスに収められたシャンパーニュは、大切な人への贈り物にこそふさわしい。フェスティプ・シーズンのための特別な一本として覚えておきたい。
問合せ先:
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
TEL. 03-5217-9777
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