BY MASANOBU MATSUMOTO
NYファッション界きっての料理好きとしても知られる、デザイナーのフィリップ・リム。インスタグラム(@therealphilliplim)のストーリーズには、リム自らが解説する料理動画がずらりと並び、以前にはT JAPANのためにお気に入りレシピをイラスト付きで公開してくれたこともあった。
2019年には自身が監修したレシピに加え、写真家ヴィヴィアン・サッセンの撮りおろし作品を載せた『More Than Our Bellies』を出版。この“アーティスティックな料理ブック”とも言える本著が、先日デジタル版となってリリースされ、今ふたたび注目を集めている。

2019年に発売されたレシピブック『More Than Our Bellies』。写真家ヴィヴィアン・サッセンによるアートワークがページを彩る
そこで紹介されるのは、リムの幼少期に母親がよく作ってくれた「バジルと生姜の鶏肉いため」、ホームシックになった時に食べたくなる「オックステールとポテトのスープ」、時差ボケに効く「トムヤンクン」など12のレシピ。それぞれにリムの個人的なエピソードがテキストで添えられており、彼の意外な素顔を覗くことができるのも面白い。
ちなみに、リムが来日した際にわれわれが行ったインタビューでは、料理の楽しさ、また料理とデザイン活動との共通点を“幸せ”や“愛”という言葉を使いながら、こう語っていた。
「誰かのために料理をするとき、相手はどういうテイストが好きで、どういうものをサーブすれば幸せを感じてもらえるかを考えるよね? 単に食べ物を作るのではなく、大切なのは、相手との思い出を頭の中で蘇らせたりしながら、“愛”のようなものを注ぎ込むこと。それは、ものづくりの根本であり、クリエイターにとって最も大事なこと」
加えてリムは、食材の大切さを学んだことで、環境や社会問題に対する意識が変化した、とも言い(「3.1 フィリップ リム」では、ファーフリーを宣言し、サステナブルなものづくりを展開)、今の時代に、自分がすべきことを改めて考えるようになったとも話した。

リムによる12つのレシピ、また料理にまつわる個人的なエピソードを紹介している

『More Than Our Bellies』デジタル版 $34.99
Apple Booksにて購入可能(英語のみ)
PHOTOHRAPHS: COURTESY OF 3.1 PHILLIP LIM
実はリムにとって、このデジタル版『More Than Our Bellies』のリリースも「今、自分がすべきこと」のひとつである。これはチャリティープロジェクトでもあり、販売で得た収益の一部(1冊につき10ドル)を食料支援団体「City Harvest」に寄付。食料を得るのが困難なニューヨークに住む子どもやその家族への支援活動に役立てられるという。本著で美味しい食事を楽しみながら、リムの思いを共有したい。
問い合わせ先
3.1 フィリップ リム ジャパン
TEL. 03(6433)5011
公式サイト