国内外を旅して風景や人、土地の文化を撮影するフォトグラファー、飯田裕子。独自の視線で切り取った、旅の遺産ともいうべき記憶を写真と言葉でつづる連載、第6回

TEXT AND PHOTOGRAPHS BY YUKO IIDA

 333の島々で構成されているフィジー共和国だが、広さはちょうど四国くらい。南半球のオーストラリアの右上に位置し、つねに緩やかな東風が吹き、中央の山には太平洋から湧いた水蒸気が雲となり雨が降る。その雨は滝となり、川となり、海へ注ぎ、沿岸部には豊潤な養分でマングローブが育つ。マングローブの緑や、浅瀬の珊瑚が生む酸素、いろいろな有機物が織りなす恵みは、虹色の黒真珠をも育む。

画像: マングローブは海と陸の喫水域で酸素を産む

マングローブは海と陸の喫水域で酸素を産む

画像: 山、森、川、海へと連なる恵みを受けて黒真珠は輝きを放つ

山、森、川、海へと連なる恵みを受けて黒真珠は輝きを放つ

 翌日、アトラクションのジェット・ボートで川をさかのぼり、村を訪ねた。まずは、酋長の家で挨拶を交わすカヴァの儀式をして、その後、村の人総出で作ってくれたランチをいただく。素材はもちろん、村の周囲で栽培したり採集したもの。地面を掘り、焼き石を入れたロボと呼ばれるアース・オーブンに、葉で包んだイモや肉や魚を入れ、数時間蒸し焼きにしたもの。特別な調味料がなくとも、素材そのものの味が際立つおいしさがある。

 いつしか円陣に座った人々がギターやウクレレで歌い出した。お腹も満たされ、そのハーモニーの優しく美しい調べに心が揺さぶられる。さらにリズムは速くなり、ステップを踏む人々は踊りの渦となった。まるで沖縄のカチャーシーのように、私たち旅人もその渦に混ざって歌い、踊り、笑う。村の人々の暮らしは近代的ではないかもしれないが、そこには確かに幸せがあった。

画像: 村での歓待の最後は踊りの渦で締めくくられた

村での歓待の最後は踊りの渦で締めくくられた

 翌日には、打って変わって洗練のリゾート、「ナヌク・オーベルジュ」へ向かった。3大陸に20のリゾートを展開する、北米でも評判が高いオーベルジュ・リゾーツが満を持してフィジーに開いたオーベルジュでは、新鮮な食材を健康志向かつ繊細な1品に変化させたメニューに驚かされた。フィジー独自の調理方法を家族でも楽しめるイベントにしたり、バーではこの地に固有のハーブをジンやラム酒などに漬け込んだものを提供。フィジーと世界の食の知恵が散りばめられた、ユニークで新しいスタイルのディナーを満喫した。心身ともにチャージ完了。バランスを整えリフレッシュすることができた。

画像: ナヌク・オーベルジュでは、フィジーのフレッシュな食材を使ったヘルシーな朝食が定番

ナヌク・オーベルジュでは、フィジーのフレッシュな食材を使ったヘルシーな朝食が定番

画像: フィジーの薬草を使ったラム酒やスピリッツも揃うバー

フィジーの薬草を使ったラム酒やスピリッツも揃うバー

 フィジーでの最後の夜、満点の星空を眺めると、南十字星がようやく東の空に現れた。フィジーには「フィジアン・マジック」と呼ばれる魔法が存在すると、誰もが信じている。彼らが「魔法」と呼んでいるもの。それは、この島へ行かなければ感じることができない生命力(マナ)ではないだろうか。

画像: フィジーの魔法の一つは、ドラマチックな夕陽かもしれない

フィジーの魔法の一つは、ドラマチックな夕陽かもしれない

飯田裕子
写真家。1960年東京に生まれ、日本大学芸術学部写真学科に在学中より三木淳氏に師事。沖縄や南太平洋の島々、中国未開放地区の少数民族など、国内外の“ローカル”な土地の風景や人物、文化を多く被写体とし、旅とドキュメンタリーをテーマに雑誌、PR誌で撮影・執筆に携わる。現在は千葉県南房総をベースに各地を旅する日々。公式サイト

 

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