大いなるものに生かされ日々を営みながら、次世代へとつないでゆく。感謝と、未来の安寧と幸福を願う祈りを言葉に込めてことほぐ。その心を、暮らしの中のさまざまなものに映し、形にしたものが、京都には今も息づいている

BY HISASHI KASHIWAI(p1), BY SHOKO NISHIMURA, PHOTOGRAPHS BY MASANORI AKAO, STYLED BY HITOMI NAGAMATSU(p1-p2)

「ことほぎ」という美しい日本語があります。「言祝ぎ」と書くように、言葉を使って祝うことをいうのですが、その「ことほぎ」の代表とも言えるのが、新年を迎えたときの「あけましておめでとう」です。
 ただ言祝ぐだけでなく、「あけましておめでとう」にはもっと深い意味があります。それは「つなぐ」ということです。

画像: 「重ね扇」<1箱(5個入り)>¥3,000 “末広がり”の吉意を5色の扇子形の薯蕷で表した「重ね扇」。お正月に限らず婚礼などにも使える祝い菓子 末富 TEL.075(351)0808

「重ね扇」<1箱(5個入り)>¥3,000
“末広がり”の吉意を5色の扇子形の薯蕷で表した「重ね扇」。お正月に限らず婚礼などにも使える祝い菓子
末富
TEL.075(351)0808

 年が明けたことを「ことほぐ」。そこに込められているのは、過ぎた年に対する感謝と、来たる年に対する期待、願いです。言い換えれば「あけましておめでとう」は、ご先祖さまから次の世代へ橋渡しをする「ことほぎ」なのです。年が明けるとまずはお墓参りをし、それから初詣に出向くのは、その象徴と言ってもいいでしょう。
「ことほぎ」は言葉で祝う、と言いながらも心で祝うのが本意です。それを示すのが言霊(ことだま)です。

画像: 「幸袋」<杉箱入り>¥4,900  ※ 6日前までに注文 宝尽くしの文様のひとつ、巾着(金袋)をかたどったと思われる「幸袋」。人生のさまざまな喜び事に とらや京都一条店 TEL.075(441)3111

「幸袋」<杉箱入り>¥4,900 ※ 6日前までに注文
宝尽くしの文様のひとつ、巾着(金袋)をかたどったと思われる「幸袋」。人生のさまざまな喜び事に
とらや京都一条店
TEL.075(441)3111

 言葉に宿る霊力を言霊と言いますが、お正月にはそれをあちこちで目の当たりにできます。
 たとえば「松」。ふだんはただ樹木の一種としか見られていない「松」がお正月をはじめとして、慶事には格別の意味を持ちます。
 禅語に「松寿千年翠(しょうじゅせんねんのみどり)」という言葉があるように、松の木の翠色は千年もの長い歳月を重ねても、その色を変えません。「松」は長寿や繁栄を象徴する「ことほぎ」の言葉です。つまりお正月に欠かせない門松や松飾りは「ことほぎ」を目に見える「形」にしたものなのです。

画像: 「ふくべ」、「梅鶴」1箱¥800 黒糖羊羹の「ふくべ」と、梅肉糖の「梅鶴」に松葉を添えて 塩芳軒 TEL.075(441)0803

「ふくべ」、「梅鶴」1箱¥800
黒糖羊羹の「ふくべ」と、梅肉糖の「梅鶴」に松葉を添えて
塩芳軒
TEL.075(441)0803

画像: 「菊日和」¥400 ふんわりと、甘さもまろやかな羽二重餅製。高貴とされる菊を模した和菓子は多く、喜久、万寿菊など字に祝意を込めることも 塩芳軒 TEL.075(441)0803

「菊日和」¥400
ふんわりと、甘さもまろやかな羽二重餅製。高貴とされる菊を模した和菓子は多く、喜久、万寿菊など字に祝意を込めることも
塩芳軒
TEL.075(441)0803

 こうして「言葉」から「形」へと「ことほぎ」はつながっていきます。未来の発展を意味する「末広がり」を形にした「扇」や、長寿の象徴とされる「鶴」や「亀」などがその好例です。
 これらをそのまま飾ることもあれば、和菓子にしてその思いを託すことも少なくありません。形だけでなく菓銘にも「ことほぎ」を表すのが和菓子の醍醐味です。

画像: 干菓子<1箱(40個入り)>¥2,400(税込) 長寿の象徴が紅白で並ぶ「鶴ト亀」 鍵善良房 TEL.075(561)1818

干菓子<1箱(40個入り)>¥2,400(税込)
長寿の象徴が紅白で並ぶ「鶴ト亀」
鍵善良房
TEL.075(561)1818

 新たな年を迎えた京都の家々では、若水で淹れた大福茶(おおぶくちゃ)を、家族揃って祝うことからお正月がはじまります。添えられた和菓子の意を子どもに説き、「ことほぎ」を代々伝えていきます。
 お屠蘇、おせち、お雑煮と、家族揃っての「ことほぎ」は続きますが、それぞれに込められた「ことほぎ」の思いは祖から現在、そして未来へと途切れることなく言霊とともに、ていねいに紡がれていきます。

画像: 「松の翠」<1箱(10個入り)>¥1,555 羊羹の上に、時間をかけて炊きあげた大納言小豆をのせて、蜜をかけ……。手間ひまかけて作られる、松の幹に見立てた半生菓子。お正月には縁起のよい結び昆布と、小梅を入れた大福茶とともに 紫野源水 TEL.075(451)8857

「松の翠」<1箱(10個入り)>¥1,555
羊羹の上に、時間をかけて炊きあげた大納言小豆をのせて、蜜をかけ……。手間ひまかけて作られる、松の幹に見立てた半生菓子。お正月には縁起のよい結び昆布と、小梅を入れた大福茶とともに
紫野源水
TEL.075(451)8857 

 令和はじめてのお正月。「令」には「善」、「和」には「穏」の言霊が込められています。善きことが穏やかに続きますように。そんな祈りを捧げつつ、新たな年を「ことほぎ」たいものです。
ーー柏井 壽

 

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