BY YUKA OKADA, PHOTOGRAPHS BY KIYOTAKA HATANAKA(UM)
「水道も電気もない先生の宿坊では、日が落ちれば作業は終わり。そこから『飯でも作ろうか』と竃に薪をくべる。バザールへの買い出しは2週間に一度、片道3時間半の道のりを歩いて通うんだけど、上勝はごみステーションに行くにしても一時間も山を下れば着く。だから、昔も今も成長がないというか(笑)、人生、何が幸いするかわからないよね」
お金より、時間を愛でて、生きる。
木彫版画で培った手先の器用さで、日々の有り余る時の中で編まれた竹籠や、大事に使い込まれた生活の道具、廃材を巧みに組み合わせた家具、適材適所にレイアウトされた最小限の日用品......。足るを知りながら生きることを追求し尽くした生活には、一切の無駄がなく、静謐な美意識が貫かれている。