BY YUKA OKADA, PHOTOGRAPHS BY KIYOTAKA HATANAKA(UM)

渓流沿いにあり、窓を閉じても豊かな水脈の音が聞こえる黒川勝志さんのアトリエ「jockric REBUILD」。一角にはごみステーション から持ってきた古いミシン、ラックにはリメイクに使う古着がストック。 「たまに住民の方々がドアの外に置いていってくれる」という靴箱は、ギフトボックスとして再利用する。空き家が多いため物件には事欠かないことから、広さも十分
なお、長年の上勝暮らしの知恵を伝える者もいれば、RISE & WINをきっかけに、上勝に拠点を設けた若き経営者もいる。オリジナルのワークウェアを受注生産する「ジョックリック」の黒川勝志さんは、ごみステーションの古着や布を使いRISE & WINスタッフのエプロンを手がけたことで、ゼロ・ウェイストに共感。「将来的には縫製の技術に長けた上勝の年配者を雇用できたら」との夢を抱き、今では家族が暮らす徳島市内から車で片道1時間半をかけ、上勝までの道を通勤する。

「WHY(ワイ)」の完成予想パース。建築は今回も 中村拓志が手がけ、RISE & WINはケータリングサービスで参画予定
ちなみに上勝町では移住者以外に、こうした“関わり人口”の創出も重要と捉えている。そのためのタッチポイントとして2019年春、ゼロ・ウェイストセンター「WHY(ワイ)」が始動予定だ。新しいごみステーションをはじめ、企業や大学関係者向けのラボ、視察者向けの宿泊施設、ビジネススクール、町民のマルチファンクションルームなどを備えたこの施設は、空から見ると「?」の形状に。そこには訪れた人々の「WHY(なぜ?)」に対する答えが見つかる場所に――との想いが込められているというが、上勝を去るとき、ある問いに駆られたのは確かだ。はたして、ごみの正体は本当に、ごみそのものなのだろうか?
わずかな分別すら億劫なほど忙しさに追われ、何もかもを詰め込みパンクしそうな都会のごみ袋の中身は、私たちが失い続けてきた時の集積なのかもしれない。