“天と地の間に生まれる美しい飲み物”と称されるワイン。よりよきブドウを育み、味わいを究める努力を重ね、日本ワインに新章を開いた4人の女性たちの姿を追う。第二回は、タケダワイナリー、岸平典子さんに話を聞いた

BY KIMIKO ANZAI, PHOTOGRAPHS BY YASUYUKI TAKAGI

 畑のどこからか“ギュギュギュ”とキジの鳴き声が聞こえる。「キジは、汚染のないきれいな土地にしか棲めないそうです。うちのワインのラベルにはキジが描かれていますが、これは先代の社長、父のアイデア。この自然を守り続けようという“誓い”のようなものですね」と、タケダワイナリー代表取締役社長兼栽培醸造責任者の岸平典子が話す。頭上をトンビがのびやかに飛び交う。足もとの土はふかふかで、シロツメクサやカラスノエンドウが生い茂る。これらの植物はブドウの木の根に窒素を固定するので化学肥料いらず。カラスノエンドウはアブラムシの好物で、ブドウの芽をその害から守る。時折てんとう虫も現れる。豊かな生態系が息づく里山の風景がここにある。

画像: 岸平典子(NORIKO KISHIDAIRA) 玉川大学農学部農芸化学科卒業後、1990年ワイン造りの研修のため渡仏、国立マコン・ダヴァイエ醸造学校で学び、ロワールやブルゴーニュなどのドメーヌで研鑽を積む。1994年帰国し家業に参加、2005年より現職。明治初期創設の老舗農園の5代目当主となる。「銀座の老舗『空也』の最中が大好きです。拡大することなく一つ処を守り、よいものを作り続ける職人魂に惹かれます」。ブドウ畑と上山の町並み、そして蔵王連峰を望む穏やかな風景。「この景色が大好きなんです」

岸平典子(NORIKO KISHIDAIRA)
玉川大学農学部農芸化学科卒業後、1990年ワイン造りの研修のため渡仏、国立マコン・ダヴァイエ醸造学校で学び、ロワールやブルゴーニュなどのドメーヌで研鑽を積む。1994年帰国し家業に参加、2005年より現職。明治初期創設の老舗農園の5代目当主となる。「銀座の老舗『空也』の最中が大好きです。拡大することなく一つ処を守り、よいものを作り続ける職人魂に惹かれます」。ブドウ畑と上山の町並み、そして蔵王連峰を望む穏やかな風景。「この景色が大好きなんです」

 岸平のブドウ作りは、ビオディナミに基づく減農薬栽培だ。大学卒業後、渡仏してワイン造りを学んだ。「ワイン造りは面白い。これは一生をかけて取り組める仕事だ」とのめりこんだ。そのままフランスに残ることも考えたが、おそらく自分は異邦人のままであろうと思った。そんな葛藤を抱えていたとき、日本から送られてきたのが、父の新作のファーストヴィンテージ「シャトー・タケダ ルージュ 1990」だった。「仲間とともにワインを開けたとき、上山の風景がふと浮かび上がりました。上山は自分が育った、肌で理解できる土地。ワインを造るなら上山だ。日本へ帰ろう、と決心しました」

 帰国後、予想しなかった困難が待っていた。家業に携わり、フランスで学んだやり方を実践したところ、父や叔父から猛反対されたのだ。だが、岸平は自身が信じることを黙々とやり続けた。ワインの品質は明らかに向上し、その結果が周囲を納得させた。以降、岸平はワイン業界初の女性社長兼醸造家として、日本ワインを牽引するひとりとなった。

画像: 樹齢70年のマスカット・ベーリー A種の畑

樹齢70年のマスカット・ベーリー A種の畑

 今、岸平は上質な山形産ブドウを使ったワイン造りに注力している。近隣農家からもブドウを購入しているが、大切にしているのは信頼関係だ。父の代から続く契約農家とのつながりは強く、だからこそ約束は確実に守る。基準に満たないブドウには意見するが、優れたものにはこちらから高値を提案する。本音で誠実に向き合ってきた。その絆の証しのひとつが山形の名産・デラウェアで造る「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡)」だ。山形はデラウェアの収穫量が日本一。故郷の誇りもワインに込められている。

画像: (左)亜硫酸塩無添加の「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡) 2020」<750ml>¥2,200 (右)「ドメイヌ・タケダ ベリーA古木 赤(辛口) 2018」<750ml>¥4,180 樹齢70年の古木から生まれ、力強くも繊細 ※ ともに参考価格/編集部調べ

(左)亜硫酸塩無添加の「タケダワイナリー サン・スフル 白(発泡) 2020」<750ml>¥2,200
(右)「ドメイヌ・タケダ ベリーA古木 赤(辛口) 2018」<750ml>¥4,180
樹齢70年の古木から生まれ、力強くも繊細
※ ともに参考価格/編集部調べ

問い合わせ先
タケダワイナリー
住所:山形県上山市四ツ谷2-6-1
電話:023(672)0040
公式サイト

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