RECIPE BY KEIKO NAGAE,PHOTOGRAPHS BY MANA LAURENT, TEXT BY MIKA KITAMURA
Vol.1. バヴァロア・ヴァニーユ
レッスン第1回目は、つるんとなめらか、クリーミーな口当たりのバヴァロア。牛乳、卵黄、砂糖で作る「アングレーズソース」に、泡立てた生クリームとゼラチンを加えて冷やし固めたお菓子。基本のバヴァロアはプレーンなヴァニーユ(バニラ)味。フルーツ、チョコレート、ナッツや泡立てた生クリームなどを合わせて、お好みの味に仕立てられる。バヴァロアは、フランス語で「bavarois」=「バイエルンの」を意味し、ドイツの旧バイエルン王国に由来すると言われている。
■材料 (作りやすい分量)
牛乳 200g
バニラビーンズ 1/2 本
ゼラチン(板ゼラチンでも) ※5g
卵黄 3個分(60g)
砂糖 40g
生クリーム(35%) 200g
*ゼラチンは硬度200ブルームのものを使用
*バニラビーンズがない場合は、バニラエッセンスで代用可
Vol.2 シャルロット いちごのバヴァロアを使って
なめらかでクリーミーなバヴァロア。牛乳、卵黄、砂糖で作る「アングレーズソース」に、泡立てた生クリームとゼラチンを加え、冷やし固めたお菓子。第1回は基本のバヴァロアとしてバヴァロア・ヴァニーユを習った。第2回は、いちごを加えた「いちごのバヴァロア」のレシピを。バヴァロア・ヴァニーユのヴァニラのかわりにいちごを加えるだけ。作り方はほぼ同じだ。いちごの甘酸っぱい風味がギュンと詰まって、つるん、とろんで、ミルキー。今回は冷凍いちごと市販のビスキュイ(フィンガービスケット)&スポンジ生地を使い、簡単にシャルロットに仕立てる方法をご紹介する。
■材料(直径16cmのセルクル1台分)
〈いちごのバヴァロア〉
牛乳 100g
卵黄 60g(約3個分)
砂糖 40g
ゼラチン(板ゼラチンでも) * 6g
いちご(冷凍)**200g
生クリーム(35%) 200g
*ゼラチンは硬度200ブルームのものを使用
**冷凍ではなく、フレッシュないちごもOK。いちごのほかに、同量のフランボワーズを使ってもおいしい。
〈生地や飾り〉
スポンジケーキ*(市販・直径16cm 厚さ約1cm)1枚
ビスキュイ(市販)1袋
いちご 1〜2パック
*カステラや砕いたクッキーにバターを合わせて敷いてもよい。
Vol.3 バヴァロア・ショコラ
なめらかでクリーミーなバヴァロア。牛乳、卵黄、砂糖で作る「アングレーズソース」に、泡立てた生クリームとゼラチンを加え、冷やし固めたお菓子。第1回は基本のバヴァロアとして「バヴァロア・ヴァニーユ」を、第2回はいちごを加えた「いちごのバヴァロア」を使った華やかなケーキ「シャルロット」の作り方を習った。第3回は、いちごの代わりにチョコレートを加えた、バヴァロア・ショコラをご紹介。チョコレート好きにはたまらない、濃厚で魅惑の味わい。砂糖を加えず、チョコレートの甘みを利用するので、甘さ控えめな大人の味。加えるチョコレートのカカオ成分の割合で、味わいも変わってくるので、好みの味のチョコレートで作ってみましょう。
■材料(作りやすい分量)
牛乳 200g
卵黄40g(約2個分)
チョコレート*100g
ゼラチン(200ブルーム)**2g
生クリーム 35% 200g
*チョコレートは好みのもので。今回はカカオ成分70%のダークチョコレートを使用。カカオ成分の少ないものを使用する場合、量を少し増やしてもよい。
**ゼラチンは200ブルームを使用
Vol.4 ジェノワーズ
洋菓子といえば頭に浮かぶ、ショートケーキ。私たちに馴染みのある、ふんわり、しっとりのスポンジ生地を使ったお菓子ですね。実はこれらは日本特有のお菓子ということ、ご存知ですか? フランスでは、軽い食感のスポンジ生地は「ジェノワーズ」と呼ばれています。
「フランスでは、いちごと合わせて『フレジェ』というお菓子を作ったり、ガストロノミーレストランでは、ジェノワーズにシロップをたっぷり打ち、クリームやナッツ、アイスクリームなどを添えたデザートに仕立てたりします」。
ジェノワーズとは「ジェノバ風」という意味です。フランス料理が洗練されていったのは、1533年にアンリ2世とカトリーヌ・ド・メディチが結婚したのがきっかけといわれています。フィレンツェのメディチ家からカトリーヌが嫁いだ際、お抱えの料理人や給仕人をはじめ、多彩なレシピと調理道具、フォークなどのカトラリーやグラスなどの食器類、さらには食事作法までもが持ち込まれ、当時手づかみで食事をしていたフランス宮廷に、イタリアの食文化が花開きました。
ですから、フランス料理のベースになる技術はイタリア経由のものも多く、名前にイタリア名が付いていることがあります。
さて、「ジェノワーズは、パティシエにとって、基本の基本の生地」と長江さんは言います。全卵を泡立てて作る「共立て」と呼ばれる方法で作ります。ちなみに、白身と黄身を分けて泡立てる方法を「別立て」と呼び、ビスキュイ・ア・ラ・キュイエールというさっくりと軽い生地になります。
ふっくら、しっとり、卵の風味を感じられるジェノワーズが焼ければ、お菓子作りの腕はかなりのものと言われています。「コツは、全卵と砂糖をきめ細かく泡立てること。ハンドミキサーを使うとよいでしょう。クリーム状に泡立てた卵に気泡がたくさん入り、しっかり泡立てられれば、気泡は簡単にはつぶれないので、粉をしっかり混ぜることができます。きめの細かい気泡のおかげで生地全体が持ち上がり、ふんわりと口溶けのよい食感になります」
■材料(作りやすい分量)
(直径15㎝のケーキ型もしくは12cm角の正方形の型1台分)
卵 2個
グラニュー糖 75g
薄力粉 65g
無塩バター 15g
牛乳 25g
Vol.5 絶品カスタードクリーム
前回は、ふんわり、しっとりのスポンジ生地・ジェノワーズを教わった。この生地はさまざまなお菓子やデザートの土台となるが、生地をよりおいしく味わうために、クリームをはさんだり、添えたりする。
パティシエにとってクリームといえば、まずカスタードクリーム。フランスでは「クレーム・パティシエール(菓子職人のクリーム)」と呼ばれているように、フランス菓子の世界では基本中の基本、大切なクリームだ。「菓子職人は、カスタードクリームを上手に炊けるようになったら一人前」といわれるほど。今回はまず「クレーム・パティシエール」こと、カスタードクリームの炊き方をしっかり教えてもらう。
基本のカスタードクリームに、生クリームやバター、メレンゲなどをプラスすることで、さまざまなお菓子への展開が可能だ。例えば、カスタードクリームに泡立てた生クリームを加えたものを「クレーム・ディプロマット」もしくは「クレーム・レジェール」と呼ぶ。“レジェール”は“軽い”という意味で、まさにふんわりとなめらかな口あたり。(ちなみになぜ“ディプロマ”(外交官)なのかは諸説あれども根拠は不明)。
長江さんは、“カスタードクリーム+泡立てた生クリーム”にゼラチンも加えて保持力を高めた「クレーム・シャンティ・ヴァニーユ」もおすすめという。「軽やかで風味豊かなクリームです。卵と牛乳のやさしい風味に、ヴァニラの香り、なめらかな口当たり。出来立てのおいしさは格別なので、ぜひ作ってみてください」
■材料(作りやすい分量)
牛乳 200g
ヴァニラビーンズ 1/5本
グラニュー糖 40g
卵黄 40g
薄力粉 10g
コーンスターチ 10g
Vol.6 フレジェ
今回は4回目で習ったスポンジ生地「ジェノワーズ」と、5回目の「クレーム・シャンティ・ヴァニーユ」を使って、いちごのケーキ「フレジェ」に挑戦してみよう。今回、教えてもらうケーキは、正確には”フレジェ風”。フレジェは本来、カスタードクリームとバターを合わせたクリームを使うが、長江さんは軽めに仕上げたいと、カスタードクリームと泡立てた生クリーム、ゼラチンを合わせたクレーム・シャンティ・ヴァニーユを使う。「クリームがだれずに美しく仕上がりますので、トライしてみてください。泡立てた生クリームだけを使う日本のショートケーキより、コクと風味がプラスされます。フランスと日本のいいとこどりをしたケーキです」
長江さんがシェフ・パティシエとして働いていた三つ星レストラン「ピエール・ガニエール」でも、いちごの季節になると「フレジェ」をレストランデザートに仕立て、お出ししていたそうだ。「フレジェの表現は毎年変えていました。たとえば、薄く焼いたジェノワーズを小さなロールケーキにし、中にアーモンドのペースト、飴がけしてカリカリにしたナッツを詰めて、温かいバルサミコ風味のいちごのコンポートを添えたり、ジェノワーズにカンパリを加えたシロップを打ち、フルーツのコンポートやアイスクリーム、飴細工を添えて、いちごのクリアなソースをかけたり」
今回、長江さんが提案する「フレジェ」は、風味は豊かで口あたりもなめらかだが、食べ心地はふわりと軽やか。「本来はバタークリームを使いますが、少々重いので、クレーム・シャンティ・ヴァニーユを私は使います」。クレーム・シャンティ・ヴァニーユとは、カスタードクリームと泡立てた生クリーム、そしてゼラチンを合わせた、口当たりのよい風味豊かなクリームのこと。
ちなみに、いちごを使ったものを「フレジェ」と呼ぶが、同じレシピで、いちごを季節のフルーツに置き換えてもOK。桃やぶどう、洋梨、ベリー類などがおすすめだという。「生のパイナップルやキウイは酵素が含まれ、生クリームから水分が出てしまうので避けたほうがよいですね。でも、加熱したもの、缶詰(加熱加工して酵素を不活性化のもの)などであれば大丈夫です」
■材料
<フレジェ>
ジェノワーズ 1台
いちご 1〜2パック
いちごジャム(市販)適量
シロップ* 90g
クレーム・シャンティ・ヴァニラ 200g
生クリーム 200g*
グラニュー糖10〜15g*
*生クリームはグラニュー糖を加え、深めのボウルまたは軽量カップに入れ、ハンドミキサーで7分立てに泡立てる
Vol.7 グラニテ
夏のおやつに、デザートに、シャリシャリの冷たいグラニテはいかが。
「フランスのレストランで、料理の合間にお口直しとしてお出しするのがグラニテです。最近の傾向として、お口直し的な存在が必要とされなくなり、登場頻度は減りましたね。でもこのグラニテ、実は家庭でも簡単に作ることができるうえ、シャリッとした食感が暑い季節にぴったりです」と長江さん。
グラニテ(Granité)とは、フランス語で、‟花崗岩のようにザラザラした”という意味だが、ルーツはイタリア・シチリアの氷菓「グラニータ(granita)」だと言われている。シチリアでは夏の朝食に、ブリオッシュと呼ばれるふわふわのパンにグラニータを挟んだり、溶けかけたグラニータにブリオッシュを浸したりして食べるのだとか。
シロップにレモンやライムなどの果汁、バニラビーンズのサヤやハーブを加え、冷凍庫で凍らせるだけ。長江さんのおすすめはライム風味。ライムはレモンほど酸味が強くないので、皮も果汁もたっぷり使って、口の中に広がるキリリとした爽やかな酸っぱさを楽しめる。もちろん、レモンやゆず、かぼすなどの柑橘類で作ることもできる。
固めたものをフォークで削るだけなので、氷の粒々感も楽しめる。暑さ疲れの脳をシャキッとリフレッシュしてくれるグラニテ。冷凍庫にぜひ常備してほしい。
■材料
水 400g
グラニュー糖 100g
ライム* 1個
タネを取り出した後のバニラビーンズのサヤ** 1本
飾り ミント、ライム
*レモン、柚子などの柑橘類でもOK
**バニラビーンズのタネを取り出した後のサヤを洗って乾かして保存しておく。なくてもよい
Vol.8 バニラアイスクリーム
冷菓といえば、バニラアイスクリーム。なめらかな口当たり、上品なバニラの香りは飽きのこない定番の味。
アイスクリームの歴史は古い。もっとも古い記述は旧約聖書の『創世記』に、イサクがアブラハムに「雪と山羊の乳を混ぜたもの」を飲ませたとある。古代ローマの英雄、ジュリアス・シーザーがアペニン山脈から氷や雪を運ばせ、乳や蜜、ワインなどを混ぜて飲んで楽しんだことはよく知られている。フランス菓子として登場するのは、16世紀から。フィレンツェの大富豪・メディチ家のカトリーヌ・ド・メディチがオルレアン公(後のフランス王アンリ2世)との結婚に際し、菓子職人を伴って輿入れをしたときが始まりといわれている。
「バニラアイスクリームのレシピはいろいろあり、私は季節やデザートの内容によって使い分けています。今回は夏向きに、口溶けがよく、すっきりと軽やかな味わいのアイスクリームをご紹介します。私自身、重すぎる味をあまり好まないので、このレシピはとても気に入っています」と長江さん。
アイスクリームメーカーを持っていなければ家でアイスクリームを作るのは大変と一般に思われているが、長江さんのおすすめレシピは、アングレーズソースを凍らせてミキサーで攪拌するだけ。専用器具がなくても、添加物ゼロ、糖分も脂肪分もぐっと控えめなのに風味豊かなアイスクリームを、自分で作れるのだ。もしもアイスクリームメーカーがあるなら、アングレーズソースを器具に入れるだけでOK。キッチンに長時間立ちたくない暑い季節でも、トライしやすいレシピだ。
「アングレーズソースに生クリームをプラスしたり、卵黄の量を増やしたり、よりリッチな仕上がりのレシピも多いのですが、これはとてもシンプル。基本のレシピとして覚えてほしいですね」。
冷たくて甘いものは、古来、夏の健康食品として貴重だった。今はスイーツとして愛されているが、夏バテ防止に、手作りのアイスクリームなんて洒落てみてはいかが。
■材料
牛乳 250g
バニラビーンズ 1/2本
グラニュー糖 40g
卵黄 50g
Vol.9 パルフェ・グラッセ・ア・ラ・ヴァニーユ
お菓子を作るにもオーブンを使いたくない日が続くこの頃。夏の冷菓として、グラニテ、バニラアイスクリームとご紹介してきたが、今回は生クリームを使った贅沢な味わいの「パルフェ・グラッセ・ア・ラ・ヴァニーユ」の作り方を習う。
「本来は、シロップを沸かして卵黄と合わせたパータ・ボンブを使いますが、砂糖の量をぎりぎりまで減らしているので、湯煎しながら卵黄と砂糖、牛乳に火を通すことができます」と長江さん。
湯煎にかけたアパレイユ(卵液)を、熱いうちに高速のハンドミキサーで一気に空気を含ませ、キメを整えながら常温にして、泡立てた生クリームを加えるのがコツ。
「パルフェ(parfait)」はフランス語で「完璧な」という意味。16世紀にカトリーヌ・ド・メディチによってフランスにもたらされた冷菓が、17〜18世紀に宮廷の貴婦人たちのお気に入りとなり、宮廷料理人が卵黄や生クリームなどを加えるレシピを編み出した。
冷たくてミルキー、味わいも口溶けもエレガントなデザート。そんな華麗なデザートが「parfait」と呼ばれたのは当然のことだろう。作り方は意外に簡単なので、ぜひトライしてほしい。
■材料
生クリーム 200g
バニラビーンズ 1/2本
牛乳 30g
卵黄 50g
グラニュー糖 30g
Vol.10 シュークリーム
日本人が大好きな洋菓子のひとつ、シュークリーム。日本には幕末から明治にかけて、フランスから伝わった。「シュー」とは、フランス語で「キャベツ」の意味。焼き上がりのふっくらした形がキャベツに似ていることから命名されたと言われる。
フランスには、イタリアのメディチ家からアンリ2世に輿入れしたカトリーヌ・ド・メディシスが連れてきた菓子職人によって16世紀中頃、伝えられた。その後、シューの揚げ菓子となり、19世紀に名パティシエのジャン・アヴィスが現在のシュー生地を完成させた。後に、その弟子の偉大な料理人アントナン・カレームが、現在のエクレアなどのスタイルを考案したとされる。
シュー生地を使ったお菓子も時代を経て進化させてきたフランス。だが、いまのフランスでは、日本のシュークリームのようなお菓子はみかけないと長江さんは言う。「シュー生地を使ったものでは、エクレアが主流です」。
まず、シュー生地を作ってみよう。失敗しないコツを細かく説明しているので、それぞれのプロセスを丁寧に、数回は作ってみて。工程はシンプルなので初心者でも大丈夫。
今回は、シュー菓子の基本形として、日本スタイルのシュークリームをご紹介する。「中に詰めるのはカスタードクリームだけでもよいのですが、『クレーム・レジェール』*がおすすめです。カスタードクリームに、クレーム・シャンティ(泡立てた生クリーム)を加えているので、ふんわりとなめらかな口当たりに。カスタードクリームだけのものより、軽い仕上がりになります」。
*「クレーム・ディプロマット」とも呼ばれる。「レジェール」とは「軽い」と言う意味。
■材料(8~10個分)
■シュー生地
水 50g
牛乳 50g
無塩バター 45g
塩 2g
グラニュー糖 2g
薄力粉 60g
卵 100g(2個)
■クレーム・レジェール
カスタードクリーム 200g
生クリーム 50g
■下準備
・薄力粉は振るう。
・卵はボウルに入れて溶きほぐす。
・天板にベーキングシートを敷く。
・カスタードクリームを作り、冷蔵庫に。
Vol.11 エクレア
「フランスでポピュラーなお菓子といえばエクレアです。エクレアは、どのお菓子屋さんにも必ず並んでいます。日本のショートケーキやシュークリームのような存在ですね」。
前回作り方をご紹介したシュー生地の形を変えれば、エクレアになる。「作り方は単純ですが、実はとても奥の深い生地です。外側はカリッと、中はしっとりさせるためには、しっかりと焼き上げるのがコツです。しているのが理想ですが、そのように仕上げるのは案外難しいですね」。ポイントを細かく説明しているので、前回のシュー生地の作り方を参照しながら作ってみよう。
エクレアは、コーティングと中に詰めるクリームによってさまざまなバリーションが生まれるので、パティシエの個性が表現されるお菓子でもある。「通常はフォンダンと呼ばれる糖衣にフレーバーをつけたもので表面を覆いますが、家庭で作るのはなかなか難しいですね」。クリームはクレーム・レジェールをはじめ、カスタードクリームや生クリーム、風味付けにコーヒーやリキュールを加えたり、フルーツをはさんだり。
今回は、チョコレートコーティングの方法と、コーヒークリームを詰めたエクレアの2種類をご紹介。「チョコレートとコーヒーのエクレアはフランスでは定番の味。チョコレートコーティングには繊細な技術が必要なので、市販のお菓子のようにきれいに仕上げるのは難しいのですが、おうちでいただくお菓子ですから、おいしさ優先で楽しんでください」。
エクレア生地
■材料(約6~8個分)
水 50g
牛乳 50g
無塩バター 45g
塩 2g
グラニュー糖 2g
薄力粉 60g
卵 100g(2個)
4 3を持ち上げ、静かに上下に動かして余分なチョコレートを落とし、最後は下の部分のチョコレートを指先で落とす。
Vol.12 フルーツのエクレア
フランスで愛されているお菓子の代表格といえば、エクレア。「éclair」は、フランス語で「雷」や「稲妻」の意味で、 “細長い生地が割れた姿が稲妻をイメージしている”、“表面のコーティングが稲妻のように光って見える”、‟中のクリームが飛び出さないよう、表面のチョコレートのコーティングが溶けないうちに稲妻のように素早く食べる”等々、ネーミングの由来は諸説ある。
エクレアはまた、その起源も定かではないが、一説には16世紀、イタリアからアンリ2世に嫁いできたカトリーヌ・ド・メディシスのお抱え料理人が作ったシュー生地をもとに、19世紀のお菓子界の巨匠、アントナン・カレームが原型を作ったと伝えられている。
前回は定番のエクレア2種類をお伝えしたが、今回はクレーム・レジェール*にフルーツをのせたエクレアの作り方をご紹介。仕上げに粉糖を振るだけと手間は少ないのに、見た目華やか。「フルーツを切って詰めるだけ。季節のフルーツを使って作ってみてください」と長江さん。
*カスタードクリームに、クレーム・シャンティ(泡立てた生クリーム)を加えたクリーム。「クレーム・ディプロマット」とも呼ばれる。「レジェール」は「軽い」という意味。
材料(約6~8個分)
■エクレア生地
水 50g
牛乳 50g
無塩バター 45g
塩 2g
グラニュー糖 2g
薄力粉 60g
卵 100g(2個)
■クレーム・レジェール
カスタードクリーム 200g
生クリーム 50g
好みのフルーツ 適量
粉糖 適量
Vol.13 グージェール
グージェールとは、チーズの入った塩味の小ぶりなシューのこと。ブルゴーニュ地方のアペリティフは、「キール(地元の白ワインと、カシスのリキュールのカクテル)とグージェール」に決まっている。
「レストランではアペリティフにグージェールがよく供されます。ご紹介するレシピは、生地自体にすりおろしたナツメグを加えて作りましたが、シュークリームを作るときに生地を取り分けておき、チーズを加えればイチから作るより簡単です」。
味のバリエーションは広く、ナツメグの代わりに、ガーリックパウダーやクミンパウダー、セロリ塩などを加えてもいいし、小麦粉の量を減らしてカカオを加えればチョコレート生地のグージェールに。生地に最後に加えるチーズは好みのものを。コンテやゴーダ、パルミジャーノ・レッジャーノなどがおすすめ。今回は、角切りのコンテを加え、ゴーダをすりおろして上にのせている。最後に振るのは、パプリカパウダーや黒胡椒、唐辛子粉、胡麻、山椒粉などのスパイス類をお好みで。焼き上がったらカットして、サワークリームやサーモン、野菜などを詰めてアミューズ・グール(突き出し)にしてもいい。
「きれいな円形に焼き上げなくていいんです。ごつごつしているほうが、カリッ、しっとりと両方の食感が楽しめておいしいです。焼き立てをおつまみにしてください」。
材料(10~15個分 ※大きさによる)
水 50g
牛乳 50g
無塩バター 45g
塩 2g
グラニュー糖 2g
薄力粉 60g
卵 100g(2個)
ナツメグ 適量
好みのチーズ(約5㎜角) 40~50g
好みのチーズ(すりおろし) 適量
パプリカパウダー、黒胡椒など好みのスパイス 適量
■下準備
・薄力粉は振るう。
・卵はボウルに入れて溶きほぐす。
・天板にベーキングシートを敷く。
Vol.14 サブレ・ディアマン
フランスではクッキー類全般を「サブレ」という。日本ではクッキー、ビスケットなどと呼ばれ、バターたっぷりのクッキーをサブレということが多い。名前の由来は諸説ある。「sablé」は「砂」という意味で、サクサクした食感が砂に似ているからだとか、サブレ侯爵夫人が主催したサロンのレシピが社交界で広まったからとか、生まれたところの地名がサブレだったなど、真偽は不明だ。
「レストランではミニャルディーズ(食後の小菓子)用にサブレをよく作ります。個人的には手土産にするためによく焼きます。薄力粉、バター、卵、砂糖ーーキッチンにいつもある材料で、思い立ったらすぐ作れるところがいいですね」。
まず、プレーンなサブレをマスターしよう。生地を棒状にまとめたら、冷蔵庫でひと晩冷やして休ませた後、周りにグラニュー糖をまぶして焼き上げる。こちらはフランス語でダイヤモンドの意味の「サブレ・ディアマン(diamant)」と呼ばれるもの。サブレにまぶしたグラニュー糖がキラキラ光り、ダイヤモンドのようだからと名付けられた。
「サブレ・ディアマン」でサブレの基本をしっかり押さえたら、次回はナッツやチョコレート、紅茶や煎茶などの茶葉、スパイスなどを加えたバリエーションに挑戦!
材料(約30個分)
薄力粉 150g
無塩バター 100g
グラニュー糖 40g
塩 1g
卵黄 10g
卵白 適量
■下準備
・薄力粉をふるう。
・バターは室温に戻す。
・卵は卵黄と卵白に分ける。
▶作り方はこちら>
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