BY KIMIKO ANZAI
イタリアを代表するワインのひとつが、イタリア北西部ピエモンテ州で造られる「バローロ」だ。華やかなアロマとみずみずしい果実味、シルキーなタンニンが高貴さを感じさせ、長期熟成がもたらす優美さと、芳醇で力強い味わいから「イタリアワインの王」と呼ばれている。
バローロはクーネオ県ランゲ地方のバローロ村やラ・モッラ村を中心にした11地区で産出されるが、バローロと名乗るには厳しい規定をクリアしなくてはならない。使用するブドウ品種はネッビオーロのみ、熟成は3年(うち、木樽熟成2年)、リゼルヴァで5年以上熟成させなくてはならない。特別なワインとしてお祝いの席で開けられることも多いという理由から、“高級ワイン”というイメージが強いが、それだけではなく、さまざまな料理に寄り添い、人が集まった時のテーブルを楽しくしてくれるワインでもあるのだ。
数あるバローロの中でも覚えておきたいブランドのひとつが「ボルゴーニョ」だ。1761年、バルトロメオ・ボルゴーニョ氏により創設された老舗ワイナリーで、1861年のイタリア統一の祝賀会では、初代国王のヴィットリオ・エマヌエーレ2世やイタリア統一の立役者となったジュゼッペ・ガリバルディなどが「ボルゴーニョ」のバローロで祝杯をあげたという記録が残されている。ワイナリーの規模は大きくはないが、その品質の良さに高い信頼が寄せられている。ワイナリーは、長らくボルゴーニョ家によって運営されてきたが、2008年にはファリネッティ家が新たなオーナーとなり、以後、アンドレア・ファリネッティ氏がオーナー兼醸造責任者として「ボルゴーニョ」の伝統を大切にしつつ、新たなプロジェクトにも挑戦している。その一例がオーガニック栽培への完全転換だ。「ボルゴーニョ」では以前から自然に即した栽培が行われてきたが、ファリネッティ氏はさらにそれを強化し、2015年にオーガニック認証の「エコセール」を取得した。現在は自生酵母のみを使用し、自然発酵を行っている。
また、興味深いのが「バローロ・リゼルヴァ」の長期保存だ。1920年代、当時の当主チェーザレ・ボルゴーニョが「バローロ」の長期熟成の可能性を見出し、20年後の販売を見越して、生産本数の約半分をライブラリーで保管するという試みを行った。カンティーナでは現在もそれを伝統として踏襲しているのだ。本数は年によって違うが、現在でも「バローロ・リゼルヴァ」は1960年代のヴィンテージまで遡れるという。
「『ボルゴーニョ』は、バローロの中でも歴史ある“アイコン的存在”だと私は思っています。その魅力をより多くの方々に知っていただくために、今、私たちにできることをしなくてはと考えています」とファリネッティ氏。
その言葉をストレートに感じることができるのが「バローロ 2019」だ。チェリーのような赤い果実とスパイスの香り。果実味と酸味の調和が美しく、みずみずしい味わいだ。どこかブルゴーニュ的なたおやかさも感じられる。また、特筆すべきは“より料理をおいしくしてくれるワイン”であるということだろう。ローストした肉料理だけでなく、鴨の治部煮や根菜の煮物など、和食とも素晴らしい相性を見せてくれそうだ。“ガストロノミックにバローロ”は、特別な日はもちろんながら、親しい人が集まるテーブルを華やかに彩ってくれる。「ポルゴーニョ」のバローロを、“楽しい時間のための一本”として覚えておきたい。
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