「チリワイン=カジュアル」はひと昔前の話。チリには、プレミアムワインの造り手が数多く存在する。「ヴィーニャ・タラパカ」もそのひとつ。今年10月、チーフ・ワインメーカーのセバスチャン・ルイス氏が来日、ワイナリーの理想と取り組みについて語ってくれた。

BY KIMIKO ANZAI

「チリのワインがこんなにエレガントだなんて!」と驚かされるのが「ヴィーニャ・タラパカ」のワインだ。シャルドネは果実味豊かでピュア、チリの代表品種カルメネール(赤)は野性味を残しながらもまろやか、ワイナリーが得意とするカベルネ・ソーヴィニヨンは優雅で芳醇、どれもがハイレベルで「チリワイン=カジュアルワイン」のイメージを覆される。

画像: 「タラパカ グラン レゼルバ ブルー ラベル レッド ブレンド 2021」750ml ¥13,200 チリ、マイポヴァレー。カベルネ・ソーヴィニヨン78%、プティ・ヴェルド13%、マルベック4%、メルロ4%、カベルネ・フラン1%をブレンド。深いルビー色で優雅かつフルーティー。カシス。ブラックベリーの香りとハーブ、ココナッツ、チョコレートのラニュアンス。タンニンはしなやかで、美しい酸が溶け込んでいる。

「タラパカ グラン レゼルバ ブルー ラベル レッド ブレンド 2021」750ml ¥13,200
チリ、マイポヴァレー。カベルネ・ソーヴィニヨン78%、プティ・ヴェルド13%、マルベック4%、メルロ4%、カベルネ・フラン1%をブレンド。深いルビー色で優雅かつフルーティー。カシス。ブラックベリーの香りとハーブ、ココナッツ、チョコレートのラニュアンス。タンニンはしなやかで、美しい酸が溶け込んでいる。

 ワイナリーの“フラッグシップ”は「タラパカ グラン レゼルバ ブルー ラベル レッド ブレンド 2021」で、果実のふくよかさが際立ち、奥深い味わいだ。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、プティ・ヴェルド、マルベック、メルロ、カベルネ・フランをブレンド、その緻密で複雑な味わいは、美しいタペストリーを思わせる。

 チーフ・ワインメーカーのセバスチャン・ルイス氏は笑顔でこう話す。
「このワインは『ヴィーニャ・タラパカ』のワインの“いいとこ取り”(笑)。5つの品種をブレンドしていますが、ベストの区画の中でも最良のブドウをセレクトしています。それぞれの品種の魅力を引き出し、“エレガントに織りなすこと”に苦心しています」

画像: チーフ・ワインメーカーのセバスチャン・ルイス氏。チリ大学で農業を、チリ・ポンティフィカル・カソリック大学で醸造学とブドウ栽培学を専攻。ボルドーのシャトー・メルル、ナパのベリンジャーで研鑽を積み、1988年に「ヴィーニャ・タラパカ」に参画。2014年から醸造・栽培チームを率いる。朗らかで親しみやすい人柄

チーフ・ワインメーカーのセバスチャン・ルイス氏。チリ大学で農業を、チリ・ポンティフィカル・カソリック大学で醸造学とブドウ栽培学を専攻。ボルドーのシャトー・メルル、ナパのベリンジャーで研鑽を積み、1988年に「ヴィーニャ・タラパカ」に参画。2014年から醸造・栽培チームを率いる。朗らかで親しみやすい人柄

 ルイス氏が理想とするのは“滑らかで美しいワイン”というが、まさにその理想が具現化されている。「ヴィーニャ・タラパカ」は1874年、首都サンティアゴの南に位置するマイポ・ヴァレーに設立、以来、ファイン・ワインを世界に送り出してきた。マイポ・ヴァレーは西に海岸山脈、東にアンデス山脈に囲まれた銘醸地で、高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンやブレンドタイプの赤を生み出すことから“南アメリカのボルドー”と評する専門家も多い。「ヴィーニャ・タラパカ」は今年、この地で設立から150周年を迎え、老舗としての存在感を放っている。

画像: ワイナリーはとてもスタイリッシュ。地元で著名な醸造家だったドン・フランシスコ・デ・ロハスがフランスから苗木を輸入、マイポ・ヴァレーにブドウの畑を開墾したことに始まる

ワイナリーはとてもスタイリッシュ。地元で著名な醸造家だったドン・フランシスコ・デ・ロハスがフランスから苗木を輸入、マイポ・ヴァレーにブドウの畑を開墾したことに始まる

 また、“よりよい未来”のためにワイナリーが力を入れているのが気候温暖化に対応するサステイナブルな試みだ。畑にはブドウを直射日光から守るカバークロップ(被覆作物)を植えている。畝の下草はそのままに、土中に微生物を増やすことでブドウがより栄養素を取り入れることができるよう、配慮している。また、ここには鳥やテントウムシなどの小さな虫も生息、生物多様性を実現している。それだけではなく、ワイナリーは、カンティリャーナ山脈の裾野に広大に広がる畑の中に、マイポ川まで続く“バイオロジカル・コリドー”と彼らが呼ぶ長い道(回廊)を作っている。これは、山に棲む野生動物たちが里におりてきて、川の水を飲みに来るための道だ。
 ルイス氏は言う。
「動物や植物、自然との共存は、私たちが考えなくてはいけない大きな課題です。ワイン造り、ブドウ栽培は農業です。ですが、これは、時に私たち人間の都合で自然の多様性を壊してしまうこともある。私たちは、常に自然と向き合い、共存していきたいと考えています」。

画像: 現在、ワイナリーがマイポ・ヴァレーに所有する土地は2600ha(東京ドーム約556個分)で、「ロザリオ・エステイト」と呼ばれる。1500万年以上前に地殻変動によって生まれた土地。この広大な土地の中に野生動物のための“バイオロジカル・コリドー”を作った。 PHOTOGRAPHS: COURTESY OF VIÑA TARAPACA

現在、ワイナリーがマイポ・ヴァレーに所有する土地は2600ha(東京ドーム約556個分)で、「ロザリオ・エステイト」と呼ばれる。1500万年以上前に地殻変動によって生まれた土地。この広大な土地の中に野生動物のための“バイオロジカル・コリドー”を作った。

PHOTOGRAPHS: COURTESY OF VIÑA TARAPACA

 最後に、来日して感動した”自社ワインとのマリアージュ”について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「もちろん和牛です! チリは牛肉を中心とした食文化で、よい牛肉もありますが、日本のブランド牛は身質がやわらかく、脂も繊細。『2021タラパカ グラン レゼルバ ブルー ラベル レッド ブレンド』との相性の素晴らしさに驚きました。日本に来る楽しみが増えました(笑)」

問合せ先
ピーロート・ジャパン
TEL.03-3458-4455

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