TEXT & PHOTOGRAPHS BY WALTER GRIAO, TRANSLATED BY MICHIKO TOYAMA
私のバリへの旅は約10年前に始まった。バリは私が若い頃に訪れた最初のパラダイスだった。当時は、楽園としてのバリ・ブームの萌芽期で、冒険を求める旅行者がようやく行き始めた頃だ。島はまだ開発途中で今日のようにインフラは整っていなかったが、ホテルなども格安で、若者やサーファー、そしてバックパッカーといった連中が、美しい景色や静けさを求めて訪れていた。
2020年初頭、私はバリを再び訪れた。10年前と比べ、神の島バリは大きく発展していた。火山、美しい谷にある稲田、楽園のような海岸といった自然に恵まれ、ユニークな文化やスピリチュアルな体験にも触れられるーーそんなバリの魅力はもちろん健在だ。ただひとつ言えるのは、バリは新しいバリになったということ。それも本格的に。今や、さまざまな種類のホテルやレストラン、ビーチクラブやバーがあり、自然のアドベンチャーや神秘的な体験もできる。国際的なアイランドとなった新しいバリには、2019年だけで世界中から630万人もの旅行者が訪れたという。今回、私は、ウブド、スミニャック、ヌサ ドゥア、その他のエリアにまで足を運んだ。
UBUD(ウブド)
緑が生い茂る熱帯林、神々しい寺、絵葉書のような景色、段々になった稲田、滝、ゆったりした雰囲気―― バリの玄関口デンパサール空港から37km、車で約1時間のところに位置するウブドは、バリのアートと文化の中心地で、歴史や伝統に富んだ街だ。トップ・レストランも何軒かあるバリの食のホットスポットでもある。ジュリア・ロバーツ主演の映画『食べて、祈って、恋をして』(2010年)がここウブドで撮影され、この地を訪れてみたいという旅行者が増えたそうだ。ヘルシーな食べ物、ヨガ、瞑想、スピリチュアル・ヒーラー、クラフトアート、そして、新鮮な空気の中に漂うバリ的なムード。それらを全身で楽しみたい旅行者に最適なエリアだ。
<STAY>
CAPELLA UBUD(カペラ ウブド)
「カペラ ウブド」は緑生い茂る熱帯林の中に潜む、自然と調和したキャンプサイトのようなホテル。1800年代初期、ヨーロッパからこの島へ移民してきた人たちのアドベンチャー精神をインスピレーションソースに、建築家ビル・ベンズレーが設計を施した。

トロピカル・ガーデンに囲まれたインフィニティプール

さまざまなテイストをミックスしたベッドルームのインテリア
ゲストルームは、森林に極力手を加えないように配慮しながら配置された23のテント。オーナーのプライベートコレクションであるアートとアンティークが随所に使われたインテリアもゲストの目を楽しませる。
私にとって、ここは五つ星以上の価値が感じられるホテルだ。現地の伝統や歴史を学びながら、魅力的な体験ができる。バリの祈りの儀式やヨガで一日をスタートしたり、ホテル内のスパ「オーリガウェルネス」でバリの伝統に基づいたトリートメントを受けたり。夕方になると、テントのかたわらにキャンプファイヤーが用意され、伝統料理やカクテルも堪能できる。
www.capellahotels.com
<EAT>
LOCAVORE(ロカフォーレ)
オランダ出身のシェフ、エルケ・プラスメイジャーのレストラン。彼は、ジャカルタ生まれのヘッドシェフであるレイ・アドリアンシア、マネージャーのアディ・カルマヤサとともに、現地の食材を使ったエキサイティングなメニューを提供しようと、この「ロカフォーレ」をオープンした。

ロカフォーレのラボでチームメンバーと料理の創作するシェフ、レイ・アドリアンシア(右)
サービス、インテリアデザイン、メニュー、すべてが完璧。シェフたちのカリスマ的でありながら温かい人柄が、提供する美味しい料理に表れている。実際、このロカフォーレは、アジアのサステナブル・レストランアワードや、インドネシアのベスト・レストランに贈られる2019年度「アジアのベストレストラン50」にも選ばれている。

「ロブスター・タルタル」
ロブスターの上にはハート・オブ・パーム(椰子の芯)が添えられている
店名は、LOCAL(ローカル)とラテン語のVORARE(食べる)の造語。バリ産の生のアワビからスンバワ島の牡蠣まで、すべてインドネシアの全土から運ばれてきた食材を使い、食事も近くの工房で作られた器やカトラリーでサーブする。ここでは「ロカフォーレ」かベジタリアン向けの「ハービフォーレ」というテイスティング・メニューを選ぶといい。どちらも、ヨーロッパとインドネシア料理の影響を受けた5〜7皿のコースだ。
www.locavore.co.id
<SPOT>
CELUK VILLAGE(チュルク村)
チュルク村は金細工と銀細工職人の本拠地だ。それらを取り扱うショップが立ち並び、展示ギャラリーや工房も見つけることができる。ここで作られたジュエリーは、民族性豊かなユニークな装飾で世界的に知られている。
JALAN RAYA UBUD(ラヤ・ウブド通り)
ラヤ・ウブド通りはウブドの中心地に約2キロメートルにわたって広がるストリート。ジュエリー、洋服、化粧品などのブティックが立ち並ぶ。トレンディなサロン(腰布)、ジャワやバリの伝統的な衣装、そしてデザイナーズブランドもあり、ウブドで一番のショッピングエリアだ。