BY MASANOBU MATSUMOTO
生きている東京展|ワタリウム美術館
東京が世界から注目を集めたのは、じつはアートにとって優しい都市だったからかもしれない。都市とアートの開かれた関係づくり―― 過去30年にわたって、特にその役割を独自に担ってきたのが、青山・外苑前にあるワタリウム美術館だった。『生きている東京』展は、ワタリウム美術館のコレクションを中心に、美術館を拠点に行われたパフォーマンスやプロジェクトのドキュメントなどを交え、アーティストが見た“東京”、またアートが東京にもたらしてきたものを再考しようとする企画展だ。
寺山修二やナムジュン・パイクなどレジェンダリーな作家の作品も並ぶ。ちなみに、1974年、ワタリウム美術館の全身であるギャルリー・ワタリでは、寺山修二の初の写真展が開かれており、作家との馴染みも深い。本展では、杉並区の住宅地域で実施された《30時間市街劇 ノック》、渋谷駅や新宿一帯で行われた《人力飛行機ソロモン》など、劇場の外側、都市空間を舞台にした作品のドキュメントなどを見せる。

寺山修司《30時間市街劇 ノック》1975年 撮影:渡辺克巳
PHOTOGRAPH BY KATSUMI WATANABE
ちなみに、この美術館は、建築家のマリオ・ボッタによる日本初の建築物としても知られている。ボッタが設計に際してに考えたのは、「まず正面に大きなファサードをおく、街に豊かさを与える都市の新しい顔となるために」ということ。この美術館の物理的な存在感は、じつは作家たちのインスピレーションソースにもなってきた。ナム・ジュン・パイクの《時は三角形》は、この三角形の敷地内に作られた美術館が着想源のひとつだ。また、街中の壁や道に巨大なポートレイトを貼り付け、ストリートをギャラリーに変えるというプロジェクト作品で知られるJR(ジエール)は、個展『世界はアートで変わっていく』の際、美術館のファサードを人間の顔で埋め尽くした。

ナムジュン・パイク《時は三角形》1993年
COURTESY OF THE WATARI MUSEUM OF CONTEMPORARY ART

JR《インサイドアウト》プロジェクト東北/東京 制作ドキュメント 2013年2月7日
COURTESY OF THE WATARI MUSEUM OF CONTEMPORARY ART
また作家たちの想像力に富んだ架空の東京にも出会える。会田誠の《東京城》やナウィン・ワランチャイクンのコミック《マイペンライ東京》など。《マイペンライ東京》は、いわば現代のタイ版「里見八犬伝」。8体の怪物を3人の祈禱師が退治して東京を救うという物語で、渋谷や浅草などの東京観光ガイドにもなっている。

会田誠《東京城》の作品展示風景
PHOTOGRAPH BY MASANOBU MATSUMOTO
生きている東京展 アイラブアート15
会期:〜2021年1月31日(日)
会場:ワタリウム美術館
住所:東京都渋谷区神宮前3-7-6
開館時間:11:00~19:00(水曜は 〜21:00)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜(11月23日、1月11日は開館)、12月31日〜2021年1月4日
入場料:大人 ¥1,200、学生(25歳以下)¥1,000、中・小学生 ¥500、70歳以上 ¥900
電話:03(3402)3001
公式サイト